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時代背景を考える

先日放送されたゾンビランドサガR®(リベンジ)の第八話と第九話に対する考証を受けた時、最初に行ったのは年表を作成するということでした。

年表の重要性

調べながら年表を作成するというのは、「明治はこういう時代だ」と自分の知識に左右される○○であるはずだという思い込みから脱するための作業です。この年表に照らし合わして情報を追記していくことで、その時代の時代感を確認できます。

というのも現代に生きる私たちが思いを馳せる明治は、明治に始まり(完成し)、大正・昭和を経て使われてきたモノたちから想像したものです。建物を例にすると、現代のマンションなどでは二十年に一回は大規模修繕にて、外壁などの修繕を行います。そうやって建物を修繕により維持管理していきます。これは明治に建てられた建物でも同じ事がいえます。

建物が建てられた年には、電気が引かれていなかった場合、後から電気配線をしたのでしょう。水道、水洗トイレなどなど。

生活をしている間に追加されたていても、元の建物が明治建築であれば、その建物の完成当初にそれらがついていたのではないかと、勝手な想像をしてましいます。

なので技術の年表が必要となります。

今回ゾンビランドサガR®用に作成した年表の例

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この年表に先の例にあげた電気は佐賀では、明治41年にある水力発電所が最初の発電所であるということから、電気の無い時代です。年表には次のページに記載。

また交通網としての汽車の歴史として、幕末に佐賀の屋敷内での蒸気機関車を走らせた記録がありますが、交通として使われたのは後年になりますためやはりこのページ以降になります。

特に気にして調べたキーワードを赤くしてあります。もちろんゆうぎりさんの死にかかわる重要なところに、疑念を残したくないという理由です。

処刑史を調べる

うっすら斬首が禁止されている時代であることを知っていたので、最初にシナリオを読ませて頂いた時点において「絞首に変えれないのか」と考えてました。

その後重要な設定であることを理解し、斬首を成しえる状況はどこかに無いか。時代の流れの中での可能性を探します。

その中で処刑史を調べました。コロナ渦により図書館の規制もありながら、大量の処刑史に絡む書籍を借りた時には、司書さんに変な、心配げな目で見られた時は少し恥ずかしかったのも吐露しておきます。

各種法令を調べる

明治十五年は、大日本帝国憲法の施行前です。よって基本法令は757年に施行されている養老律令です。これに各時代に付け加えられながら、千年を超えて使われてきました。

明治元年には、仮刑律を制定。これにて刑罰を定めました。その後明治三年に新律綱領により刑法が改められたのち、明治六年に改定律例が発布されています。

ここまでならまだ斬首が可能でした。

しかし現在において旧刑法と呼ばれる刑法典が明治十三年に公布されます。この旧刑法により斬首は禁止されました。公式には明治十二年の斬首が最後となります。

ここで「斬首無理ぃ〜」となりました。

抜け道を探す

ここで無理で終わってしまったら、せっかくの設定をファンタジーに変えてしまいます。アニメだから良いではありません。

目をつけたのが軍でした。
 1881年(明治14年) 陸軍刑法(明治14年太政官布告第69号交付)制定
 1883年(明治16年) 陸軍治罪法

この二つの法令を国立国会図書館デジタルコレクションにて読みあさりました。それで一つの可能性を見つけ出すことができたのです。


 1900年(明治33年) 公安警察法 公布

この公安警察法の制定にかかわる事件も良いヒントとなりました。

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国立国会図書館デジタルコレクション 『陸軍刑法』より抜粋

提案したストーリー

陸軍より反乱罪の可能性がある集団を監視するため派遣された陸軍兵によりサガの運動を反乱と認め「陸軍刑法第二編第一章叛乱ノ罪」を適用し、斬首を実行した。(本来の陸軍法に則ると銃殺刑である)
 同法での死罪は本来であれば銃殺刑であるが、ゆうぎりが民間人であること、元高官の内縁の妻であることを理由に内密に斬首を決行した。
 軍人による一方的な処刑が頻発されたことを受け、軍法会議や陸軍視察・諮問を行う法律である「陸軍治罪法」が翌年明治16年に成立した。
 このような民間人による反乱は、三重などにても行われたことにより、同様の反乱を未然に防ぐための公安警察が明治33年に正式に組織された。

その他の考証

このほか、YASUKE®でも年表を作成して考証を行わせて頂きました。

アニメの基本設定をこわすことなく提案を行えたこと、また提案させていただきました考証を考慮してくださったスタッフの皆様に感謝しております。

とても良い作品でした。

ことほむは時代考証も行っていますが、地域の文化遺産へ言祝ぎを与えたいと考えている会社です。


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