とある本を読んだ話

おひさしぶりです。
年末年始は、三島由紀夫の『仮面の告白』を読みました。
今日は少し、その感想を書きます。

この作品はよく、同性愛者について語った話だ、とかなんとか言われていますが、それは、読み手が異性愛者だからこそ出てくる感想なんだと感じます。もしこの話の主人公「私」が異性愛者だったら、「普通の人が性癖を語った本」として注目を浴びるくらいで、そこまでセンセーショナルにはならなかったのではないでしょうか。

ということで(?)「作品の主人公が同性愛者である」ことを抜きにしたとき、この作品の持つテーマは何なのかについて少し考えてみました。

すると、この作品のテーマは、「他人と違うことへの葛藤と苦悩、そしてそれをいかにして自分の一部として受け入れて生きていくかについての問いかけ」であるような気がしました。そして、この作品では主人公のその「他人と違うこと」がたまたま性についての自我だっただけ、のように感じました。

作者は、その問いへの答えを明確には示していません。あるのは最終的に主人公「私」がどんな結論に達したかという描写だけです。 でも、あえて作者はそうしたのだと思います。まるで「主人公はこういう結論を出したが、さあお前ならどうする?」と問われているような、そんな気がしました。

人と違う点を持った自分をどうやって扱うか。
認めるのか、否定するのか、あえて放置するのか。
その答えは、他の人が持っているわけではありません。
答えを導き出す過程で、誰かの意見や、偉い人の言葉を参考にすることはできます。でも、最終的にどうするかを決めるのは、他でもない自分です。

あたりまえかもしれませんが、そのことを改めて気づかせてもらいました。

この作品は、作者が「この告白によって私は自らを死刑に処す」と言ったほど、自分のことについて赤裸々に書いています。
自分が恥ずかしいと感じることは秘めておいたほうが、と思うところをあえて公衆の面前に晒す、まさに自らによる公開処刑。
"仮面の"と、保険はかけてはいるものの、これほどの告白をした気概と勇気には感服するばかりです。


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