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現代ギリシア語を語る。

古典ギリシア語を勉強していた時に、「そもそも今のギリシア語は?」と思って学び始めました。日本では古典語の方が圧倒的に学ばれていて、教材も豊富です。現代語の教材は、本当に初歩的な内容までで頭打ちになります。


1. 文字と発音
おなじみのギリシア文字ですが、発音は多分多くの人のイメージと違います。
θ ×シータ ○スィタ
β ×ベータ ○ヴィタ
π ×パイ  ○ピ(かわいい)
など。古典語発音や英語発音が浸透していることが原因でしょう。

文字一つ一つの発音自体は、日本人にとってはイージーだと思います。多少練習が必要なのはθ、δぐらいで、前者は英語のthinkのth、後者はtheのthなので、わかりやすいでしょう。

ただ、単語を読むのはちょっと難しめ。母音が複数並ぶ場合、多くは結合して一つの音になるからです。
φοιτητής「学生」→フィティティス
ταινία「映画」→テニャ
特に「イ」を表す母音の組み合わせが6種類もあり、発音もそうですが綴りを覚えるのが結構大変です。古典語では母音の長短や二重母音がちゃんと機能していたものの、現代語ではほとんど区別がありません。ハーデースはアジス。よわそう。


2. 名詞•形容詞
名詞は性が男性•女性•中性の3つ、形から判別できる場合が多いです。単数•複数ありますが、複数形の作り方も規則的。古典語の双数は無し。格は主格•属格•対格•呼格の4つですが、メインで使うのは呼格以外の3つ。古典語にあった与格が消滅しており、前置詞で補う傾向にあります。便利。冠詞、形容詞、名詞がこれらに応じて変化します。形が連動するので覚えやすいと思います。
αυτόν τον καιρό「最近」
η γιορτή των Αγίων Πάντων「諸聖人の日」


3. 動詞
メインディッシュ。現代ギリシア語の難しさの6割は動詞のせいだと思っています。命令法や接続法は簡単なので置いておきます。直説法では、現在-継続過去-瞬間過去-継続未来-瞬間未来の区別があり、この「瞬間」が曲者。アオリスト(ギリシア語ではアオリストス)といいますが、これのために語幹を変える必要があります。
αρχίζω「始める」→αρχίσω
καταλαβαίνω「理解する」→καταλάβω←ん?
βλέπω「見る」→δω←は?
λέω「言う」→πω←ぽ???
最後のは極端な例ですが。アオリストス形の作り方が、規則的なようで規則的でないというか、とにかく厄介です。瞬間的な過去や未来の動作を表すことなんて沢山ありますし、避けては通れない。しかもこいつらは、英語等における現在完了や助動詞、不定詞の用法でも区別する必要があるため、逃れられません。ロシア語の完了体•不完了体の区別を、語彙レベルではなく形態レベルで行うんですね。


4. その他
動詞以外の文法事項は、全体的にシンプルめだと思います。前置詞はσεが最強すぎる。英語のin, at, on, toあたりを全て担います。γιαも強い。forやaboutの代わりになります。単独で使う前置詞もありますが、σεの前に副詞的にくっつけるタイプが多いです。関係詞は、フォーマルなものでなければ、πουが関係代名詞•関係副詞全てに代用可能。動詞は救いようがないぐらいに複雑ですが、それ以外は極端にシンプルという印象です。でも動詞マスターしないと言語使えねえんだよなぁ。


5. 教材
古典ギリシア語の参考書はそれなりに充実していますが、現代語は悲惨な状態。本当に初歩の初歩なら『ゼロから話せる現代ギリシャ語』、文法もある程度かっちりやるなら『ニューエクスプレスプラス 現代ギリシア語』。純粋な学習書はこれでほぼ打ち止め。『現代ギリシア語文法ハンドブック』は非常に詳しく例文も豊富ですが、辞書的に使うものであって、単体で勉強するものではないかなと。私はここから日本語の教材を諦め、英語にしました。『Greek Frequency Dictionary』、ひたすら頻出単語と例文が載っています。ここまでやって、一般的な内容ならそれなりに問題なく理解できるようになり、今は生のギリシア語に触れている、という状況です。


6. おわりに
noteで入力している状態だと、ギリシャ文字やキリル文字って横に伸びたブサイクなフォントになっているんですが、投稿したらちゃんと綺麗にまとまることがわかったので、これからはギリシャ語やロシア語についても色々書いていきたい。ギリシャ語吹替の作品は残念ながらなかなか存在しませんが、字幕でも何か学べることはあるでしょう。



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