語学留学 アメリカ その2

前回お話しした米国インディアナ大学ブルーミントン校付属の語学学校ですが、授業以外にも魅力的な点がいくつかありました。

その一つは会話パートナーシステムです。インディアナ大学の学生と語学留学生の交流システムで、語学留学生は英語のネイティブスピーカーと授業以外でコミュニケーションする機会になるし、大学生たちにとっては異文化に触れたり、場合によっては自分の興味のある外国語を習うチャンスにもなる素敵な交流システムです。

最初に簡単なアンケートに答えて、その回答をもとに事務局がマッチングをしてくれます。アンケートは主に趣味や興味のあることなど、「会話」をする時の共通の話題になりそうな内容だったと思います。年齢と母語も書いたかな。語学留学生の年齢もまちまちなので、若目の子は大学1,2年生と組み合わせ、少し年齢が上の人は大学院生と組み合わせるといったこともしていたかと思います。また、自分の興味のある語学や文化に触れたいという要望が大学生側にはあるでしょうから、語学留学生の母語の情報も必要になりますね。もちろん、相手は誰でもOK、語学留学生の力になれたら嬉しいよっていう大学生さんたちもけっこういたと思います。

このプログラムは強制ではなく、興味のある人だけが参加します。私はもちろん参加しました。マッチングの結果は、私と日本人男子タブチ君(仮名)がたしか大学4年生の男子マイク(仮名)とグループになりました。本来はアメリカ人と外国人が1対1のペアになるのですが、参加人数のバランスによって私のように3人のグループになることもありました。本当は女子のほうがよかった(話がはずみそうなので)し、できれば1対1のほうが語学練習にはよさそうだけど贅沢は言えません。マッチング後の初顔合わせは大きなホールで行われました。ホールの中には小さい丸テーブルがたくさん置かれていて、グループごとに分かれて自己紹介をしたり、お互いの生活について話したり、会場はみなのおしゃべりの声でかなり賑やかでした。

ところが…。私のグループといえば盛り下がってしまったのです。おそらくは私とタブチ君の話題が合わなかったせいだと思います。マイクがにこやかに「この大学はどうだい?どんな印象?」と話しを振ってくれたのに、タブチ君は「退屈」って超失礼な返事。さらに「遊ぶところが全然ない」と追い打ちをかける始末。マイクは「そうだねえ。田舎だから何もないね」と肩をすぼめてみせました。すかさず私は「私はすごくいい大学だと思う。とくに図書館が24時間開いてる事にいい意味で驚いている。午前2時とかに行っても本を読んだり、リサーチしたりできるってすごい。きっとみんな勉強熱心なんだね、ここの学生さんたちは」と言ってにっこり。「ああ、便利だよ。特に学期末の追い込みの時はね」とマイク。

ここでネイティブのマイクがタブチ君に「日本では何をして遊んでたの」とか「自分は遊ぶ時こんな所に行くんだけど行ったことある?」と聞くとか、「図書館でどんなリサーチをするの」「どんな本や動画を見るの」とか私に話しを振ってくれたらそれなりに話は広がったのかもしれない。でも、そこまでおしゃべりが得意なタイプじゃなかったみたい。そして、私とタブチ君には会話を広げていくための英語力がそれほどなく…。他のテーブルではマッチングされた二人組がおしゃべりで大盛り上がりしているのに、マイクは早くも時間を持て余し始め、このプログラムのコーディネーターに「自己紹介が済んだら、何をするんだい」と助けを求めました。「連絡先を交換して、次回以降どこで会うとか何をするとか話し合ったら」と言われ、私たちはその指示に従いました。同じことを他のグループにも伝えたようとコーディネーターは、パンパンと手を打って注目を集めようとしたけれど、数回繰り返さないと静かにならないほど皆夢中で話していたんですよ(うらやましい)。「みんな盛り上がってるとこ邪魔して悪いけど、各グループとも解散する前にお互いの連絡先を交換して、次回以降のことを決めておいてね。ここから先はそれぞれのグループに任せるからね」と大声で叫びました。みんな「OK」と言ってすぐにまたおしゃべりに戻っていきます。でも私たちのグループは、おとなしくメールアドレスを交換し、マイクが「じゃ、メールで次回のこと連絡するよ」と言って解散になってしまいました。

寮に戻ってからマイクにお礼のメールを書いたところ、すぐに「僕も楽しかったよ」みたいな返事をくれて「次回も今日の場所で会おう」という提案をしてくれました。マイクはタブチ君にも都合を聞いてみると言いましたが、それっきりでした。結局「次回」は永遠に訪れず…。マイクは楽しくなかったのね。
タブチ君、どうしてるんだろう。あのマッチングで初めて見た顔だったし、英語もそうとうポツポツ話していたから下のほうのクラスだったのかもしれません。それなら遊びのことなんて考えずにもっと勉強したら、と言いたくなってしまいますが、遊びを通じて英語の使い方を学ぶ人もいるしね。きっと田舎の生活に退屈してたんだろうなあ。会話相手がアメリカ人の女の子だったら、もっと積極的に参加したんだろうか…。

ということで、私にはうまく機能しなかった会話パートナーシステムですが、それ自体はとてもいいプログラムだし、気の合う会話相手に巡り合えれば「生きた英語」「若者のため口英語」を学ぶ絶好の機会になると思います。

次回はもう一つの交流用マッチングシステム、週末ホストファミリー制度について書きますね。

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