「経理できる」について考えてみた
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「経理できる」について考えてみた

「経理できる」と一口にいっても幅がある、そこで経理できるとは要するに何ができることなのか、何が幅を生み出す要因となっているのか整理してみることにする。まず「経理できる」を以下の3つのできるに分解してみた。

1. 会計ができる
2.情報の収集ができる
3.資金管理ができる

それぞれについて、具体的に何ができることなのか説明していく。ちなみに発端は、このツイート。

1. 会計ができる

 まず、会計とはなんぞという話で、会計の至上命題については、我らが企業会計原則の最初に記されているこの一文が全てを説明していると思う。

一真実性の原則
 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

 上記によると、会計は、財政状態(BS)と経営成績(PL)を報告するものであるらしい。で、その最も美しい方法が、複式簿記というわけだ。経営成績については収入と支出のみで構成されている家計簿形式でもある程度の説明はできるが、財政状態においては経済的実態を2つ目の面からとらえる複式簿記でなければ、スマートな表現は難しいと思っている。

 よって「会計ができる」の必要最低条件は複式簿記ができることになる。ただし、複式簿記ができる=「会計ができる」とはならない。では他に何が必要か?

 経済的実態の理解会計基準の把握・適用だと思っている。大枠のコンセプトは複式簿記の理解でいいのだが、中身の1つ1つの仕訳については、発生した経済的事象の本質の理解と、それを各基準に従って落とし込んでいく必要がある。この部分は「経理できる」の幅を生み出している大きな要素の1つになっている。

 経済的実態の理解について。ある商品を仕入れて販売することの理解は難しくはないだろう。一方で、種類株を発行することによる資金調達についてはどうだろうか、アーンアウト条項が組まれた複雑なスキームのM&Aはどうだろうか。これらを仕訳に落とし込んでいくには、高いレベルで取引そのものの理解が必要になってくる。

 次に、会計基準の把握・適用について。ざっくりいうと、株主が創業者のみの中小企業は税法が求める必要最低限の会計ルールを理解していればよい(会社法もマストではあるが、株主が1人の場合はあってないようなもの)。一方で、上場企業ともなるとリアルな取引とは別の、複雑な金融商品を扱った金融取引や、税効果や連結といった抽象的な概念を扱った会計処理の理解・適用が必要となる。
 さらにやっかいなことに、事実は間違いなく1つなはずなのだが、各基準により、会計処理が異なる場合がある。しかも、財務諸表以外に準備しなければいけない補足情報も異なってくる。国内だけでも、税法(各種税金の申告書)・会社法(計算書類)・金商法(有価証券報告書)と複数のルールが併存している。

 以上のとおり、会社の環境により求められるものは異なり、中小企業の「会計ができる」と、上場企業(大企業)の「会計ができる」には大きな乖離が存在している。

2. 情報の収集ができる

 これが、経理屋と会計屋の分水嶺になっていると思う。会計基準を網羅的に理解している会計士が、経理ができるかというとYESとは言えないのは、上手く「情報の収集ができる」とは限らないからだ。

 1つ1つの仕訳は現場の情報をもとに作成されるわけだが、その情報を漏れなく、適切に収集することが必要となってくる。会社の全ての経済的事象を把握するのだ。1年間に取引が1万回発生しているのであれば、それすべてだ。さらに、取引だけではなく、現金の残高、遠く離れた工場の在庫の状況、1年以上回収が滞っている債権など、情報は多岐にわたる。

 経理担当者は、複数の媒体(人・紙・データ)を介してそれらの情報を収集していくため、すべての他部署とのコミュニケーションをとらなければならない。さらに、ただ収集すればよいわけではなく、前述した各基準の報告要素や、税法等で定められている証憑の要件を満たすように収集していく必要がある。そのため、最終的なアウトプットの把握、つまりは「会計ができる」ことが前提となる。

 近年、会社のあらゆる情報はシステムに集約されることがほとんどであるため、高いITリテラシーが要求される傾向にある。システム化は開発資金のある企業が行うものだったが、安価なSaaSの普及等により、中小企業の間でも一気にシステム化をあらゆる分野で進められるようになっている。今後、「情報の収集ができる」に含まれる、「データベース化できる」、「フローを設計できる」の能力がより重視されていくのは不可逆のトレンドであろう。

3. 資金管理ができる

 いわゆる金庫番的な役割になる。毎月の支払いや債権債務管理などが含まれる。ここらへんの業務は必ずしも「会計ができる」必要はないが、一般的には経理部に任せられる業務となっている。支払いを漏れなく毎月するのも楽ではないが専門性という意味では、あまり高度なものは求めれらない。

 あえてあげるとすれば、不正を発生させないことが必要なスキルになるだろうか。とあるベンチャーで経理が数十億を自身の口座に移しFXで溶かした、という事例があった。しっかりしている経理であれば、そもそも自分が疑われたくないので、2段階認証を利用するなどして、自分1人だけでは支払いができない状態を構築するはずだ。

4.まとめ

 これまでに説明してきた3つのことができて初めて「経理できる」となると思っている。特に「会計ができる」と「情報収集ができる」は、不可分で両輪の関係にあるといってよい。情報を収集するためには、会計をわかっている必要があり、また、会計を実行するためにはまず情報を収集する必要がある。いくらシステムに強くともそれだけでは「経理できる」にはならず、一方で、会計だけできても、ITリテラシーが低かったり、現場からの情報の吸い上げができなければ、精度の高い報告はできないだろう。

 仕事がら多くの人と経理の仕事をしているが、1人で「経理できる」という人は多くないように感じる。実際に「経理できる」人材の採用に苦戦している会社も多い。だからこそ1人でも多くの「経理できる」人が増えるといいなと思い、まずは要件を整理してみた。

 と言っても僕もまだまだでして。情報の収集の効率化についてはもっとできることあるし、会計についても満足に理解できていない分野がたくさんある。。。ということで、これからもハイレベルフルスタック経理を目指して精進していく所存です。


おまけ

 僕が思う「経理できる」への道のひとつに、外部から資金調達していて上場を目指している、またはマザーズかジャスダックに上場している比較的若い会社に行く、があると思っている。経理部2~4人くらいの規模で、すでに経理部長はいて、もう1人募集してます的なところがよいだろう。自分でゴリゴリ情報の収集はやりつつ(というかやらざるを得ないが)、高度な会計処理等の知識は上司または外部の専門家から吸収していく。会社の全てのイベントが自分事であり、かつ、上場企業レベルの高度な会計処理も避けてはとおれないという環境。数年後には高いレベルで「経理できる」ようになっているはずだ。無論、けっこうなガッツが必要になる場面が多いはずなので、、、そこらへん自信ある方はぜひ。

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ケーリ!
フリーランスケーリマン。上場企業にて税務/開示/財務/管理会計/子会社管理/連結決算/財務DDとフルスタックにやってきました。主にフルリモートでベンチャー企業中心に経理マネージャー的なことしてます。