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VTuberインタビュー企画「インタビュー・ウィズ・渚乃奏」

トップ画像は渚乃奏のnoteよりお借りしました。


「渚乃奏」というVTuberをご存じだろうか?
初期から活動している音楽系VTuberの一人だ。
ミソシタの提唱する音楽ジャンル"ポエムコア"をリスペクトしながら自身のオリジナリティを追求していく姿はまさしくクリエイターと言うべきだろう。
そんな彼女へ先日インタビューを申し込んだところ「是非とも」と快諾してくれた。
今回は彼女のVTuberとしての活動を振り返りながら、彼女の持つ音楽性に迫っていく。


ーそれでは「インタビューウィズ渚乃奏」ということでインタビューを始めさせていきたいと思います。
渚乃奏「はい、お願いします。」
ーまず自己紹介の方からお願いしてもよろしいでしょうか?
渚乃奏「音楽系Vtuber兼ポエムコアラッパーの渚乃奏です。普段はMVの制作を中心に毎月1~6本ほほど動画を投稿している他、iTunesなどでのアルバム配信もしており、現在はアルバムはベスト盤含め5枚リリース中です。
運営はボカロPのk.TAMAYANが個人で行っています。」
ーありがとうございます。肩書はラッパーということでよろしいんでしょうか?
渚乃奏「運営元がかなりオールジャンルな音楽家なので手を出す範囲は広いですが、現在の基本はラッパーとしています。ラップの方がボイチェンとの相性も良いので、オリジナルはラップ中心です。」
ーなるほど、ありがとうございます。もう少ししたら活動3年目ぐらいでしたよね?そう考えると結構古参じゃないですか。
渚乃奏「古参と言われれば古参ですけど、今年で2年目くらい(2018年5月デビュー)なので、ガチ古参ってほどでもないかと。界隈の流れが速いので古参に見えますが、ボカロ界が11年目を迎えて現役の人がいるのを考えるとまだまだです。」
ー運営のTAMAYANさんはボカロP歴どれくらいでしたっけ?
渚乃奏「10年ちょっとですね、2009年1月デビューでした。まだ残ってる同期の方も少数ですがいらっしゃるみたいです。」
ーそう考えると作曲家としての経歴がかなり長いですね、素晴らしいと思います。
渚乃奏「ありがとうございます。逆にそのくらいバックがあるから私の音楽がすんなり支持されたのかなとも思います。」
ープロフィール的なことで公開されていないこととかありますか?"渚乃奏は永遠の17歳"的なものがあれば。
渚乃奏「公開してないわけではないですが”年齢は20代で可変”っていうのがありますね。あと”k.TAMAYANの中に住む別人格”っていう(笑) でも、表現としてしっくりくるかなとは思ってます。」
ー”別人格”は私としても結構しっくりくる印象ですね、自己の代弁者的なニュアンスな楽曲が多いイメージなので。
渚乃奏「そうですね。TAMAYANが出せないものを仮託している人格が私であるというイメージです。」
ーなるほど、そういう意味ではVTuberらしいとも思えますね、ありがとうございます。


”本当にその曲が好きなら、メッセージとか音楽性も込みで分析して、それを自分なりに汲み取らないといけないと思うんで”

ー初期は音楽語り系の動画でしたよね、ご自身でも振り返られていましたけど初めはVTuberで音楽をされる気はなかったんですか?
渚乃奏「そうですね。やはりボイチェンの声質っていうのが気になっていて。ただ途中から設備投資で歌えるようになったり、あとはポエムコアを見て「ラップなら声大丈夫じゃん」と思ったのも大きいですね。当時はニコ動もまだ勢いが残ってたので、ボカロから完全にシフトしてくる気もなかったですし。」
ーきっかけとなったのはやっぱりミソシタさんの影響が強いですか?

音楽ジャンル「ポエムコア」を提唱しているVTuber、奇抜なビジュアルと活動に目を引かれがちだがポエムコアに込められたメッセージ性や”ダサ坊”を惹きつけるカリスマ性が特徴。
運営は元祖ポエムコア提唱者のBOOL氏。

渚乃奏「やはりミソシタさんですね。もともとポエムコア古参としては「ラップはどうかな?」という気持ちもあって乗り気じゃなかったんですが、聴いてるうちに「ありだな」と思うようになりました。あとは「webnokusoyaro」さんとか、今レーベル同期の「咲乃木ロク」さんを見て「ラップいいなぁ」と思ったことも大きいです。」

未来からやってきたAIのVTuber。
ラップをメインの活動としながら、リミックスや作曲も行う音楽系。
渚乃奏が参加しているVTuber音楽レーベル。
ラッパー、DTMer含めて8名が参加しており、現在3rdアルバムが販売中。

ーwebkusoyaroさんの紹介と弾き語りでちょくちょく曲っぽいのはしてましたけど、一番最初にVとして出した楽曲は「ミッドナイトファイティングブリーフ」のカバーでしたね。

渚乃奏「あれはタイトル詐欺でして、中身はほぼオリジナルなんですよね。「ミッドナイト・ファインディング・ミー」という非常に紛らわしいやつです。今思えばだいぶ初々しい作品でした。」
ーかなり謙遜した始まり方が初々しいですね。そこを吹っ切りに楽曲動画が続いていますね、完全に作曲にシフトしたのは「ファイティング・ミー」の辺りからですか?
渚乃奏「そう言われればそうですね、ただ個人的には「ウォーキング・イン・ザ・ダークネス」の力が大きいです。当時はやっぱり必死だったので、いかに導線を増やすかってことを強く考えていました。」

ー今こそ創作の方が忙しいと思われますが、また音楽語りをやろうとかはありませんか?
渚乃奏「ポエムコア解説が意外と受けたので、またアーティスト解説とかはやってみたいですね。”名前は知ってるけど・・・”みたいな人のやつを。」

ーポエムコア解説は最近出されたものですね、アレは私も「なるほど」と思わされる部分が多くて大変有意義な動画でした。仮に出すとしたら例えばどんな方になりそうですか?
渚乃奏「細野晴臣さんとかですかね。昨年活動50年を迎えたりして注目されてる割に、詳しい人が少なそうなので。ただ、あの人の活動はかなり手広いので苦戦しそうです。」

過去「はっぴぃえんど」や「YMO」などのロック、テクノ両面で邦楽史に残るグループのメンバーを務めた作曲家。
解散後もソロで多数のアルバムを制作している。

ー自身が影響されている方として挙げている方の一人ですね。また機会があれば是非ともお願いします。
渚乃奏「わかりました。」
ー私自身が奏さんをチェックするようになったのはPelliculeのカバーからでした、あの辺りの奏さんはどんな感じでしたか?

渚乃奏「あの頃は本当に「盛り上げよう」という意識が強くて、年末に向けてラストスパートをかけている時期でした。3D化して出来ることも増えたので、リスナーを揺さぶろうという気持ちが強かったですね。」
ーあれに限らず奏さんのカバーはただカバーするのではなくて、元の楽曲の中に奏さんのテイストをしっかり練り込んだ上で出すのでそこがスゴいと思います。
渚乃奏「ありがとうございます。ただやると「歌ってみた」と大差ないので、そこは意識的に自分のカラーとか意義を出せるようにしたいと心がけている部分です。」
ー過去にコーサカさんから頂いたコメントにもあった通り、カバーするにしてもしっかりと楽曲を理解した上でオリジナルな部分を出してるのはスゴいんですよね、尊敬します。

コーサカから

渚乃奏は過去MonsterZ MATEの「love letter.」をカバーした際にラップ担当のコーサカ本人からコメントを頂いたことがある。

渚乃奏「いやはや、そこまでのことでは・・・。個人的に”流行ってるからよく分からんけど歌いました”ってスタンスが好きじゃないんですよ。本当にその曲が好きなら、メッセージとか音楽性も込みで分析して、それを自分なりに汲み取らないといけないと思うんで。」
ー謙遜なさらずとも。そのスタンスは普通かもしれないかもしれませんが、とても重要な事なので是非大切にされてください。
渚乃奏「ありがとうございます。これからもちょくちょくカバーもしていきます。」
ーコラボ楽曲とか見る限りやっぱりVラッパーの方と交流が深いのですか?
渚乃奏「確かに、結果としてそうなってますね。ただ、ボカロPの方とかのつながりも多いです。Vラッパーの方々はお互いにリスペクトしてると思ってますが、自分はヒップホップではないアイデンティティを持ってるので、やや特殊な扱いを受ける印象です。」
ーV-olume UP!はどういう経緯で参加をされたのですか?
渚乃奏「トラックメイカーで参加してるアイニウムさんからお誘いを受けて、YOSHIさんやせぃがさんのことも知っていたので入ることにしました。
当時はまだ人が少なくて「誰呼ぼう?」みたいな話をしてたみたいなので、個人的に仲間は増えた方が楽しいと思って参加しましたね。」

ーYOSHIさんは日辻シラムさんと一緒に奏さんの動画に出演されていましたね。アレは発案者は奏さんですか?
渚乃奏「そうですね。Vラッパーの集まりがあって、前から構想だけあったものを提案したら二人が乗ってくれた形です。」

ーなるほど、ありがとうございます。楽曲以外の活動ですと、3Dの創作関係で遊んでる感じですね。車バイクに鉄道、摩天楼に飛行機とこれまた幅広い・・・。
渚乃奏「元々鉄道模型とかミリタリー雑誌とかが好きで、Unityでそういうのが作れそうだったのでその延長でやってみた感じですね。」
ーモデリング自体は完全な初心者だったのですか?
渚乃奏「そうですね。過去に簡単なビルを作っただけで、赤い金田のバイクが実質初モデリングに近いです。フルスクラッチじゃないものであれば、私のモデルも素体から改造なので、そこで操作を覚えました。」

ーそこからここまで上達するのは自分じゃ想像もつかない努力があってこそでしょうね・・・。
渚乃奏「一日当たりの作業時間は最長で12時間近かったと思います。自分の初期モデルを用意するときは、毎日6~8時間は作業と勉強をして7日くらいかかりましたし。」
ー12時間ずっとモデリングソフトとunityとにらめっこですか?いやはやそれは大変ですね・・・。
渚乃奏「もちろん食事やトイレ休憩はありますが、ほとんど張り付いてましたね。この前新造した街も21時から翌朝の10時くらいまでほとんど休みなくやってましたし、気付いたらそうなっちゃうんです。」
ー大変というよりは夢中になってそうなる感じなんですか?
渚乃奏「そうですそうです。「早く完成形が見たい!」という気持ちだけで延々と張り付いてしまうんですね。」
ー奏さん自身が想像している物を自分の手で具現化できるから故でしょうね、スキルとイメージが噛み合っているような。
渚乃奏「頭の中に漠然とイメージがあって、それをどんどん形にしていく感じです。スキルはその都度ついてくるので、気が付いたらマルチになっていました。」
ー創作されたものは配布等行っていますか?VRChatで乗れたりとか。
渚乃奏「車と大型飛行機はBOOTHで販売しています。」

ーなるほど、ありがとうございます。バーチャルマーケットで出品されたりとかはされないんでしょうか?
渚乃奏「やってみたいですけど、なにぶんチェックする時間がないというか……。気付いたら応募締めきってることが多数あります。ただみみんくさんの「VRC技術市」には自動車の作り方を書いた同人誌で参加予定です。」

VTuberみみんく氏が主催するVRChat上の同人誌イベント。
既製品を販売するバーチャルマーケットとは違い3Dモデリングやワールド建造の技術本がメインとなる。

ーこうして見ると音楽以外にも手広く活動されていますね。
渚乃奏「ついでに手を出してみた、くらいの感覚です。Clusterライブなんかも今研究していますが、音楽と鉄道模型の延長的な感覚ですね。」
ーそれは今後にも期待ですね、ありがとうございます。それ以外だと稀にゲームしてたりぐらいでしょうか、普段はゲームされてますか?
渚乃奏「Kerbal Space Programっていうのは最近よくやりますね。
宇宙船の外に宇宙飛行士を括りつけて、太陽の軌道に乗せて笑ってます。」

ー真面目にプレイしてる動画が少ない宇宙開発ゲームでしたっけ?
渚乃奏「そうです。普通にちゃんとやれば月面着陸とかできるんですけど難しいし、ゲーム側もふざけた要素が結構ありますからね。」
ープレイされるジャンル的にはシミュレーション系が多いイメージがあるんですけど、実際はどうでしょうか?
渚乃奏「その通りですね。シミュレーターは遊びが多いので、開発者の意図から外れたことをして笑いたいんですよ。」
ーなるほど、ありがとうございます。少し顔をしかめてしまう話ですけど、自身の"お気持ち表明”として「拝啓、VTuber様」という楽曲を出すのはクリエイターとしてカッコいいと思います。もちろん褒められたことではないんですけど。

渚乃奏「複雑ですけど、ありがとうございますと言っておきます。やっぱり、クリエイターとして”物申すなら作品で”という気持ちが昔からありますね。」
ー自分の好きなクリエイターの一人に「Franz K Endo」って方がいらっしゃるんですけど、彼が過去のインタビューの中で「ツイッターで長文書くのはダサい」ってコメントがあって、それに通じるものを感じました。
渚乃奏「まあ、私はツイッターに長文を書いてしまいますが。あんまり創作に負の感情をぶつけ過ぎたくないんで、ちょくちょく吐き出すようにしています。」
ー確かになんやかんやツイッターの方でぶちまけてらっしゃいますね。

注:Frant K Endoのコメントのくだりはインタビュアーヴェンデッタ氏の記憶違い、本来のコメントは「俺は普通の文字のツイートが嫌いで。有名人とかが普通にツイートしてるのも、「俺、有名人」みたいな承認欲求が気持ち悪くて」というもの。
ソースはこちらからhttps://fnmnl.tv/2019/07/05/75986


”TAMAYANは結構「幻想狂気」系とかラブソングが多かったので、私は私で確立された作風がある気がします”

ーそれじゃあご自身の音楽についていくつかお聞きしたいと思います。ご自身のルーツになる、もしくは影響が強い方はいらっしゃいますか?
渚乃奏「細野晴臣、上田現、忌野清志郎、この三人は音的にも歌詞的にも影響は強いですね。プラスでミソシタさんみたいな感じです。」
ー個人的には和製テクノポップがルーツにあるような印象があったのですけど、ジャンル的な部分だとそっちの方は弱いんでしょうか?
渚乃奏「YMOとかP-MODELは押さえてます。ドイツのクラフトワークも好きですし、アングラボカロ界のテクノ代表でもあるsansuiPさんの影響もあります。」
ーなるほど、サウンド的な部分にそっちの香りがしたので納得です。ゴリゴリの打ち込み音というよりは弦楽器を多用してる感じですけど、この辺りの音作りなんかもそちらからの影響でしょうか?
渚乃奏「弦楽器はSteve Reichという現代音楽の人と、Maison book girlという、前述の音楽家の影響を受けたアイドルユニットからの影響です。細かいフレーズを繰り返す手法も同じくですね。」
ーアイドルユニット・・・結構意外ですね。音楽家繋がりで聴かれたのですか?
渚乃奏「サクライケンタという人がプロデュースしてて、彼が「現代音楽×ポップス」を提唱してて目を付けました。Maison book girlの一時期の曲を聴けば、完全にさのかなサウンドの元ネタだと分かるくらいには近いです。」

元BiSのコショージメグミを中心に立ち上がったアイドルユニット、現代音楽にアイドルポップスを融合させた楽曲が特徴。
木琴を使ったメロディなど渚乃奏サウンドのベースになった部分が多数見受けられる。

ーなるほど。ラップ、ポエムコアの部分はやはりミソシタさん、若しくはBOOLさんの影響が強いのでしょうか?
渚乃奏「そうですね、普通のヒップホップはあまり聞かないんですが、強いて言えば呂布カルマさんを少し聴きます。あとTHA BLUE HERBは大好きですね。」
ーTHA BLUE HERBはBOOLさんも影響受けたと語っていたグループでしたよね。
渚乃奏「そうです。日本語ラップの中でも、物語性を取り入れたりとか、メッセージも他のラッパーが切り込まない切り口だったりして良いですね。」

札幌で結成されたヒップホップグループ。
ストーリー性のあるリリックや言葉回しなど、BOOL氏のポエムコアのルーツとなってる点がいくつかある。

ーご自身の楽曲のリリックはそこからも参考にされてらっしゃいますか?
渚乃奏「結構参考にしてますね。あそこまでうまくできないけど。」
ーリリック自体はご自身というかTAMAYANさんの身の上話や身の回りの話が印象として強いですね。
渚乃奏「そうですね。渚乃奏そのものにはほとんど何も歌うことがないし、もともとTAMAYANはそういう作風がメインだったので。」
ーボカロP時代からその作風だったのですか?
渚乃奏「そうです。さとうささらが”25歳に病院で元カノを見た”とか歌ってました。」

ー過去に自身のスタイルを「闇、スケベ心、ナイフのような自意識に感情を加えたポエムコア」と表現していたと思いますが、そのスタイルの確立自体は結構最近ということでしょうか?
渚乃奏「どうなんでしょう、2015~2017年くらいの間にはそれを少しは意識してたんじゃないかなぁと思います。丁度その時期にTAMAYANもポエムコアを作ってたので。」
ーなるほど、もともと何と無しにあった自身のスタイルがポエムコアを通して形として言い表せるようになったイメージでしたが、案外違うのかもしれないんですね。
渚乃奏「あー、その解釈が近いかもしれないですね。とはいえ、TAMAYANは結構”幻想狂気”系とかラブソングが多かったので、私は私で確立された作風がある気がします。」
ーリリックの方向性としてはそんな感じで、実際に書かれる時はどんな感じですか?机に向かって唸り続けたりとか、普段から思いついたフレーズとかを書き留めたのを繋げたりとか。
渚乃奏「机に向かってぶつぶつ言うタイプです。トラックをリピートしながら、最初の言葉が出てくるまであーでもないこーでもないとやってます。」
ー大分絞り出すタイプですね、産みの苦しみが凄まじそうです。
渚乃奏「リリックは時間がかかりますね。それこそ1行に30分~1時間なんてのも普通です。」
ー身の上話以外だと直球のdisだったりストーリー仕立てだったり、あとオマージュがあったりもしますね。
渚乃奏「そうですね。直球のdisはあんまりやりたいわけでもないけど、その時の感情でガッとやっちゃうんですよね。ストーリー系はそれこそTHE BLUE HERBとか上田現の影響で、歌詞のオマージュは大抵ミソシタです。」
ー個人的に好きな曲が「風を待つ旅人」で、あのトリップ感が刺さってますね。

渚乃奏「あー、なるほど。またアシッドなのもやってみたいですね。あれそんなに人気ないのかと思ってましたけど。」
ーボイスチェンジャーのボーカルとサビの高速トラックがいい感じのトリップ感があって個人的には好きですよ、奏さんの普段の楽曲とはテイストが違いますけど。それに限らず何か挑戦してみたいジャンルとかありますか?
渚乃奏「うーん、やっぱりTAMAYANが得意だったガレージロック的なエッセンスはまた欲しいとこですが、私らしさとの兼ね合いが難しくて・・・。「errand city.rattle police」みたいな感じなら何とかなりそうなんですけどね。あの感じをまたやってみたいかな。あとはアコギをもう少し使ってみたいですね。」

ーご自身の影響された人に忌野清志郎を挙げたり楽曲語りにThe Birthdayについてがあったりとロックにも通じてると思いますが、それを”渚乃奏”で出すのはイメージ的に難しそうですね、是非見て見たいですが。
渚乃奏「ロックは好きなんですけどね。なかなかもうエレキギターの音が自分の中で古くなってきちゃった感じがして、聴かせ方が悩ましいです。」
ーそうなると中々難しいですね。ガレージロック自体はテクノとはあまり結び付かないですけどどういう経緯で知り合ったのですか?The BirthdayはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT経由でしょうか。

The Birthdayは元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケとクハラカズキが結成したバンド。
どっしり太いロックサウンドに仕上がっているが、その音楽性はアルバムを出すたびに変化している。

渚乃奏「TAMAYANが軽音部に居て、先輩や同期がいろいろ教えてくれたんですよね。ミッシェルよりは先にThe Birthdayから入りました。」
ーなるほど軽音部経由でしたか。ガレージの男くさい感じのテイストはVの楽曲ではあまりないイメージなので個人的にはやってもらいたいと思いますけど、これはTAMAYANさんから出した方がいいですね。
渚乃奏「私がやると男くささはなくなりそうですよね。でも、逆に新鮮に映るかも?ちょっと面白そうですね。」
ーまた機会があれば是非とも。テクノ的なジャンルでは手を出してみたいのはありますか?
渚乃奏「テクノ系だと90年代的なミニマリスティックなやつとか、80年代細野晴臣の神経質でファンキーな感じをやりたいですね。コード進行させないって、自分はあまりやってないので。」
ー最近MVを出した「I'm not hero」みたいな変調ラップなんかもインスピレーション的には細野晴臣からですか?
渚乃奏「ですね。「Body Snatchers」という曲を意識してます。
不穏な音の感じや、間奏の過激な連打とか。」

ーこれに限らずオリジナルの曲の中に「これ実は〇〇のオマージュで」みたいな曲がありますね。たまたま聴いた曲に「これやりたいな」みたな要素があれば盛り込む感じですか?
渚乃奏「その通りです。時代やアーティスト問わず、自分がピンときたサウンドはすぐに取り入れて真似しますね。」
ーいいですね。様々な要素にチャレンジしていって練り上げた先がどんな形になっているのか、そういう意味でも目を離せないアーティストとして昇華してもらいたいです。
渚乃奏「ありがとうございます、がんばります。今5拍子でヒップホップ的なビートを作ろうとしてますが、なかなかラップが乗らなくて悩んだりしてるので、別の曲に手を付けようかと思ってたりします。多作なので、皆様もぼちぼちと追ってもらえれば。」


ー今後の活動についての話をいくつか、先にもありましたが、clusterライブを構想しているということでよろしいでしょうか?
渚乃奏「そうですね。実はある方とclusterでコラボの話が上がっていて、ついでに使い勝手が良ければソロでもやろうかと思ってます。」
ーなるほどコラボのご予定もあると。ベストアルバムを最近出されて、引き続き作曲の方もされる感じでしょうか。
渚乃奏「そうですね。4枚目を出して、もう次に向けてどうしようかなという段階です。4枚目収録曲のMVも、出せるものは出していきたいですし。」
ーコラボを予定されている方や過去コラボした方とは別にコラボしたい方はいらっしゃいますか?Vに関わらずにいらっしゃれば。
渚乃奏「今のところはあまり考えてないんですけど、柚子花さんにポエムコアやらせたいなぁと思って「ポエムコアリレー」みたいな企画をやりたいと思ってます。何人か集めて、それぞれのリリックを合体させて一つにまとめていくようなイメージです。ラップも朗読もありで。」

「オーディションに受かって3Dモデルのバーチャルアイドルとしてデビューするはずが途中でプロジェクトが潰れて2Dのまま放り出された女」というフレーズで有名なVTuber。
歌、ゲーム実況、朗読と声を武器したコンテンツをメインに多岐に活動する。

ー結構大きい企画ですね、実現できた際は是非ともチェックしたいと思います。
渚乃奏「頑張りたいところです。当面はコラボの消化と自分の制作で手一杯かと思いますが、ポエムコアコンピレーションとかもやって行きたいですし。ディスコードコミュニティ「シン・地下二階部」も地道に運営してますからね、やることが多いです。」
ーこれだけ手広いとマネージャー的な人欲しくなりますね。
渚乃奏「確かに、でもしばらくは独りで頑張ってみます。YOSHIさんとかもっと色々抱えてらっしゃいますし。」

ラップをメインに活動している”バーチャルラッパーYoutuber”
配信プラットフォーム「17Live」にて毎日配信も行い、過去17LIive内でのラップイベントにも参加した。

ーYOSHIさんは17の方でもかなり頑張っていらっしゃいますね。これに限らず個人で音楽されているVの方はみんな努力家なイメージがあります。
渚乃奏「そうですね。実際みなさん活動頻度やクオリティがえげつない人が多いです。「負けないぞ~」と思いつつ、頭は上がらない気持ちですね。」
ーライバル的に見つつリスペクトもしている、いいですね。最後読者の方に何かあれば一言お願いしてもよろしいでしょうか?
渚乃奏「これからも地道に進化していきますので渚乃奏をよろしくお願いいたします。収益化もそろそろ審査ラインに入ってくるので映像にもっと力を入れていけるよう、応援お願いします。それといつも見てくれてる方々は本当にありがとうございます、頑張ります。」
ーではこれにてインタビューを終わりたいと思います。いいお話が聴けた貴重な機会となりました。長時間に渡りありがとうございました。
渚乃奏「こちらこそ、ありがとうございます。お疲れ様でした。」


3時間ほどのロングインタビューの中で、渚乃奏のその深い部分に触れることが出来た。
等身大のようで、それでも理想を追い変質し拡張しようとするその姿はまさにクリエイターと呼ぶにふさわしいものを感じられた。
その活動の先にある姿はどんなものに行きつくのか、まだ見えないゴールのある”明後日”を彼女はこれからも歌い、語り続けていくことだろう。

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