#218表 岡田斗司夫ゼミ「シャーデンフロイデの謎」と「サイコパスのすすめ!」書き起こし①

2018年2月18日のニコニコ生放送岡田斗司夫ゼミが、あまりに面白かったので、音声入力の実験も兼ねて、書き起こしをしました。GoogleドキュメントとSoundFlowerを使った音声入力です。

ただし、今回はあまり調整が良くなかったみたいで(声質の相性は重要!)、ほとんどが手入力になっています。では、ここから書き起こしです。本題に関係ない話題は削除、冗長になっている部分は、編集を入れています。また、見出しは当方で付け加えています。

ーーーーーー書き起こしここからーーーーーー

シャーデンフロイデについて話します

こんばんは、ニコニコ生放送、岡田斗司夫ゼミです。今日は2月18日です。2月も真ん中すぎちゃいました。

今日はですね、シャーデンフロイデって言うですね、まあ、あのドイツ語でですね、何だろうな「毒のある喜び」、という意味。それについてお話をしようと思います。この2冊の本を語ってみるんですけれども、とりあえずシャーデンフロイデとはなんいぞや?というから説明していこうと思います。

今日のレジュメですね。レジュメねぇ、ものすごい量多いんですよ。

だからパッパッパッパッと話していても、とりあえず頑張って、僕もコメントのほうを読み方ですね、ひょっとしたら時間オーバーしちゃうと思いますが、よろしくお願いします。

(略)

YouTuberとYoutubeに対してケシカラン!と感じるのは、どうしてだろう?

では、シャーデンフロイデとは何なのか、から行きましょう。この人というか、こいつ、ですね。ローガンポール 、YouTuber。世界で一番有名なと言ってもいいでしょうYouTuberです。チャンネル登録者数1670万人ですね。わずか22歳にして年収14億円以上という風に言われてます。有名なのは、あの年末の青木ヶ原の樹海にですね、死体を撮影に行ってそれをさらしたということですね。まあ大炎上してお詫びしたうえに、自殺防止に1億円以上寄付した、募金したということになっているですけど。

その直後に、死んだカエルに電気ショックしたりですね、池からさらってきた仮死状態の鯉に人工呼吸するとかですね。そういう炎上気味の動画を投稿して、全然反省してないので、非難殺到してる、と。 これに対して、YouTube のCEO、責任者は、「まだアカウント削除は出せない」っていう風に言ってます。つまりスリーストライクアウト制を取ってるんで、なんだろうな、まだ悪いことは1個目か2個目ぐらいと言っているですけども。

これに対して、一般人のYoutubeのアカウントは何かちょっとでもまずいことがあったりしたら、すぐにアカウント削除するくせに、なんでローガンポールに対しては削除しないんだということで、まぁ揉めに揉めています

つまり、公平性ですね。

Youtubeのルールがよくわかんない、と。もし、一般人が適用されるような厳しいルールなんだったら、ローガンポールのYoutubeアカウントだって削除しろよって言いたい訳ですよね。それに対してYoutubeの方は、まぁまぁ言えないんだけど、ローガンポールに14億円払っているということは、実はそれ以上にYoutubeが儲けているから削除できないんじゃないかと勘ぐられているというか、という風なことで揉めております。確かに不公平な感じがします。

で、アメリカではローガンポールのアカウントの削除だけでなく、これまでの広告収入を全部没収せよとかですね、とりあえず「許さない!」と言っている人もいて炎上はまだまだ続いています。

こういうですね、YouTuberの炎上というのが最近ニュースにすごく流れるようになったんですよね。何でかって言うと、僕の想像なんですけれども、YouTubeの成功って誰でもできそうな気がしてですね、おまけにこのローガンポールがやっているような非常識なことをやってアクセスを稼ぐ、日本に来てですね、例えばポケモンボールを通りすがりの自動車に投げつけて……、本当に危ないですよね、で「ポケモンボールだ!」って言っている動画をアップしてるわけですね。

(指摘の箇所は5分15秒くらいからです)

そういう非常識な人の迷惑になるような事やって、アクセス稼いでっていうことが、みんなから反感買ってる。みんなが、なんか今回の炎上でも、それでまた稼いだってことで皆が持ってる「けしからん!」という感情を起こしてしまう。

27年前のザ・シンプソンズにシャーデンフロイデは登場していた

そういう感情のことを、シャーデンフロイデと言います。ま、そういう感情というか、そいつが何か罰を受けたときにざまあみろって思う感情ですね。
で、シャーデンフロイデっていうセリフが一般に出たのは意外なことにですね、アニメ作品ザ・シンプソンズ です。

お隣さんが悔しいホーマー・シンプソン

シーズン3の3話にですね、「ホーマーの願い事」っていうエピソードがあるんですね。ホーマーのお隣さんに、ネッド・フランダースっていう人がいるんですね、フランダース家のお父さん。もう何から何まで理想の家族なんですよ。奥さんは優しくて、ホーマーが言うには、「あいつの奥さんはお前と違って、尻がキュッと締まってる」って愚痴る。

で、ホーマーの息子はバカ息子で、学校でも問題ばっか起こしているのに対して、フランダースの息子二人はですね、お父さんの言うことを何でも聞いて大好きでっていう、理想的なファミリーなんですね。仕事も成功してですね、ホントにいいところ。

ガーデンパーティーをやったら人がいっぱい来てくれるわけですね。ホーマーはそれが羨ましてくしょうがない。 で、ホーマー・シンプソンは、招待状をもらったんだけれども、悔しくて行けないわけですね。

そんなネッド・フランダースが庭でバーベキューしているときに、重大発表というのをします。それは何かって言うと、会社を俺は辞めたっていう風に言って、ネクタイをその場でバーベキューのグリルで燃やしちゃうんですね。
で何をするかって言うと、左利きの専門店を作る、と。アメリカ人の10人に1人は俺と同じ左利きだ、と。だから左利きの専門店を作るんだ、独立するぞーって言うんですね。ホーマーはそれを聞いて、もう何か、何故かムカムカして「失敗すればいいのに」って願ってしまうんですね。

ホーマーがついつい願ってしまうネッドの失敗

で、あのー、チキン占いっていうのがあって、バーベキューのときにチキンとか七面鳥を丸々焼いたときに、骨が残るんですね。骨のところの両側を持って、ひっぱり合って、多く残った方の願いが叶うというのがあります。お互いの願いを言う、と。もちろんフランダースは、自分の店が成功しますように、でもシンプソンの方は、ついつい、フランダースの馬鹿げた左利き専門店っていうのが、閉店されてしまう。誰も店に入ってくれなくて、閉店してしまうという悲しいこと。これを願ってしまうんですね。ついついこれを願ってしまう。

実際に店が開店しました。ところがですね、店を見に行ったら、店はガラガラだったんですね。そのガラガラだったということで、なんかホーマーは楽しくなって、ニヤニヤニヤニヤしてですね「ネッドの店がガラガラだったぞ」という風に家族に言います。

リサ・シンプソンは「パパ、その感情がシャーデンフロイデよ」と言った

するとですね、リサ・シンプソン。娘がですね、「パパ、それはシャーデンフロイデよ」という風に言ってくれます、はい。「シャーデンフロイデ、それ何だよ」っていう風にお父さんが訊くと、「ドイツ語で他人の不幸を喜ぶ恥知らずっていう意味よ」という風にリサ・シンプソンは言います。

で、ホーマーはすごいビックリするんですね。「えっ、自分にそんな感情があるなんて思ってもみなかった」。まぁ、アニメ観ている人間はみんなわかるんでけども(笑)。ホーマー自身はかなり単純な性格で、自分が人の不幸を喜んでいるとは思ってなかったんですね。そうじゃなくて、一生懸命リサに言い訳します。いつもチヤホヤされて幸せそうだからパパもついって……いう風に、ま、俺一人がそんな悪い想像をしても、別に構わないだろうっていう、僕らもよく言う言い訳みたいなもんですね。という風なことをするんですけども、まぁ、娘のリサはすごいイヤ~な目でお父さんを見てるんですね

この、え~っと「ネッドの店はガラガラだったぞ」って言って喜ぶ、この感情がですね、シャーデンフロイデです。このエピソードのオンエアは今から27年前の1991年です(笑)。メチャ早いですね、シンプソンズ。こういう概念に飛びつくのは。

2018年に続々出版される「シャーデンフロイデ本」

シャーデンフロイデというのは、最近本が出ました。とにかく、ベストセラーをバンバン出している中野信子さんの「シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感」。これがね、すごく売れてます。で、多分この本の元ネタになったのが、ですね、リチャード・H.スミス のですね、これはもうちょっと難しい本です。タイトルが「シャーデンフロイデ: 人の不幸を喜ぶ私たちの闇」という本ですね。この2冊の本をですね、ベースに今日は話をしています。

中野先生の本はすごく読みやすくて、さっさと読めるんですけども、科学的に「あれこれどうなの?」とか「ちょっと待ってここ検証されてるの?」っていうのがいっぱいあったんで、僕もかなりいろんな所調べて、あと洋書の翻訳本の方の裏を取りながら読んで行きましたので、一応今日話す部分は割とあの、大丈夫な感じだと思います。

読むんだったらどっちの方がいいかなぁ?中野先生の方が、読みやすいので割りとオススメですね。パッと読めちゃうし。で、今日の話もですね、前半の話はこの2冊の本の内容紹介と、あと補足説明の部分から入っていこうと思います。

まずですね、他人の失敗を喜ぶ感情というのを説明する前に、ちょっと面白い実験の話をしたいと思います。

オマキザルは「アイツだけ得をしやがって!」と考えるのか?

ジョージア州エモリー大学で行われたですね、ノーフェア、不公平実験って話です。このエモリー大学はですね、霊長類の研究で有名でですね、オマキザルという猿の仲間で人間にすごく近い社会制、というかグループを作っている生物なんですね。

これの実験自体がすごく壮大です。どんなのかと言うと、猿に貨幣を与えたんですね、猿の社会に、はい。これは銀色の板、人間が手の上に乗っている銀色の板がアルミニウムでできたトークンという貨幣です。真ん中に穴が開いています。

このアルミでできたトークンで、オマキザルが来た時に、いろんな果物と交換してあげたんですね。そうすると、オマキザルはあっという間に貨幣という概念を理解してですね、最初トークン1枚でりんご1切れ、ぶどう1粒という交換率やってたんですけども、時間を決めてバーゲンセールをやったんですね。

貨幣制度・ビジネス・信用創造の悪用

つまり、トークン1枚でリンゴが2切れもらえるということを始めたら、あっという間にオマキザルは、そのりんごを配るところに列をなしてですね、群れをなしてりんごばっかりを欲しがると。トークンの交換率が違うことによって、損得勘定というのがわかってくる。こういう風に、だんだんだんだんレベル上げてきました。

猿は貨幣の意味を理解して、ついにビジネスまで始めました。研究者が驚いたことに、オスの猿がメスの猿に交尾しようとして近づくと、メスの猿はそれを拒否して、オスの猿が持っているトークンを見たんですね。そうすると、オスの猿は、メス猿にトークンを渡してセックスをさせてもらうというですね、やはり人類最古のビジネスは売春であったというですね。もうスッゴイですね、実験をしてたんですよ。で、受け取ると、メス猿はトークンを受け取るとすぐにぶとうを購入しに、ぶどうの列に並んだそうなんですけども。

あとですね、キュウリも出していたんです。スライスしたキュウリが、ちょっとアルミっぽい色に光って見えるんですね。一生懸命噛んで真ん中に穴を開けて偽造貨幣を作ろうとする猿も現れたということですね、贋金づくりまで始まってしまったというですね。

そして野生オマキザルの社会は崩れていく

このオマキザルの実験によって、これまで人類特有だと思われてた行為というのは、オマキザルの社会でもあっという間に流行る。ただし、これをやってしまうとオマキザルの社会はスゴイ勢いで崩壊したそうです。つまり、野生のオマキザルの社会制というものが、貨幣という概念がひとつ入ったことで、崩れていって、オスとメスとが、なんだろうな、お互いに交尾相手を見つけるのもうまく行かなくなって、社会制というのが崩壊していったというですね。なかなか面白いことが言われています。

あの日、ぼくたちは一緒にキュウリを食べて、悪い予感の欠片もなかった

で、今回話すのは、そん中でのノーフェア、不公平実験というやつです。
オマキザルを2匹で1組のペアに組ませるんですね。この2匹で1組のペアの1匹ずつに違う条件を与える、と。

例えば、両方にキュウリを与える、と。トークン1枚を持って来ると、その度にキュウリを与える。そうすると、オマキザルは喜んでキュウリを食べる。
キュウリも、好物というわけではないですけど、おやつとして美味しいからキュウリをパクパクパクパク食べるんですよ。

でも、もっと好きなのがあって、一番好きなのはぶどうなんですね。で、またトークン持ってきた時に、この2匹のカップルのオマキザルにぶどうを一粒ずつあげる。喜んで食べる。

さぁ、ここから実験です。
では、一方にだけぶどうを与えて、もう一方にキュウリを与えるとどうなるのか?オマキザルはですね、ぶどうをもらって方は喜んで食べるんですけれども、キュウリをもらったオマキザルはすごく不思議そうな顔をするんですね。で、もう一回人間の方に手を出して、俺にもぶどうをくれっていう(アピールする)んですよ。でも、もらえない、と。

そうすると、ドンドンドンドン、ストレスがたまってきてですね、何か不思議な行動を始めるんですね。でも、何回も何回も続けるんですよ。1日に何回か、 オマキザルにはトークンが与えられる。そのトークン、貨幣を持って交換に行くと、自分とペアの奴はいつもぶどうがもらえて、自分はいつもキュウリしかもらえない。ついにストレスがたまったオマキザルは、キュウリの受け取りを拒否するんですね。

もうキュウリなんていらねえよ!公平に扱ってくれないんだったらこんなキュウリなんかいらないよぉ!!

不思議なんですよ、両方ともキュウリをもらっていたときは、喜んでキュウリを食べている。だから、キュウリが嫌いなわけじゃないんですよ。そうじゃなくて、自分だけがキュウリがもらえないということに怒って、人間の顔にキュウリを叩きつけたんですね。

そうやって、「もうキュウリなんていらねえよ!俺、公平に扱ってくれないんだったらこんなキュウリなんかいらないよぉ!!」って風に、スゴイ人間っぽいことを始めてしまう。これによって、霊長類、猿にも公平という概念、次に公平が破られたときの怒り、みたいなものがあるっていうのがわかった。これがですね、ノーフェア実験、です。

シャーデンフロイデの概念を説明する前の、すごく大きい実験ですね。

まるで人間みたいなんですけども、猿と人とはやはり違うんですね。何が違うのかっていうと、2つ違います。
1つ、猿は目の前の結果だけで怒るんですよ。
2つ目、猿は自分が損をしたことに怒るんですけれども、得をした者が罰せられても、別に怒らない。これが違うんですね

(続きます)

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