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第19回書き出し祭り 作者予想検証

 第19回書き出し祭り、本文公開から一週間が経過しましたね。
 すでに小説家になろうの感想欄やX(twitter)上では様々な感想が寄せられています。特に今回は小説家になろうの感想欄に投稿された件数が非常に多く、これまでとは違う層にも届いて盛り上がっている感覚がありますね。参加作者も読者も、幅が広がっていくのはとても良いことではないかと思います。

 さて、企画の盛り上がりの一助として、本文公開前にタイトルあらすじだけで作者予想を行っておりました。この辺りで、本文を読んだ所感を踏まえて推理が当たっているか否かの検証をしてみたいと思います。
 検証にあたって、必然的に予想した作品以外にも言及することになります。通常の感想とは違った切り口での触れ方によって、企画作品をすでにひと通り読んだ方、次はどれを読もうかと考え中の方のご参考になれば、とも思っております。私と同じ予想の方、「分かってないなあ」と思われる方、色々いらっしゃるでしょうが、お楽しみいただけると幸いです。

 なお、書き出し祭りは「完全匿名企画」を謳っております。書籍化・受賞歴の有無や交友関係の多寡によってアクセス数や投票数に有利不利が出ないように、との企画趣旨のためです。
 ですので、参加作者は企画終了までどれが自分の作品かを公表することはできません。このような予想記事の正解/不正解、また、その内容について言及されたいこともあるかもしれませんが、どうか堪えてくださいますようお願いいたします。作者予想を許してくださった方々には、そのご寛容に心からお礼申し上げます。
 また、本記事はあくまでも私の個人的な見解です。もっともらしく推理っぽいものを連ねてはおりますが、まったくの的外れである可能性も十分にあります。真に受けずに余興として消費してくださいますよう、念のためお願い申し上げます。

 それでは検証スタートします。


正解だと思うなあ、の方々

第1会場
1-5.マンドラゴラと楽師なき楽団

https://ncode.syosetu.com/n0139ik/6/

予想:fさん

第2会場
2-14.地域の広報キャラクターをデザインした、ある一介の公務員 ~彼の功罪とは~

https://ncode.syosetu.com/n0141ik/15/

予想:トファナ水さん
検証結果
 だって……よく知ってる方々だし……濃い作風の方々でもあるし……。私としては説明不要で正解でしょう! と思っています(再度念のため・個人の感想です)。
 詳細は予想記事や、前回18回の検証記事を見てくださいませ!

2-24.買われた聖女~後宮であなたと白黒ショー!

https://ncode.syosetu.com/n0141ik/25/

予想:はに丸さん
検証結果
 文章の密度や硬さ、幾つかの特徴から正解……だと思います。特徴というのは例えば、

・台詞や心内語が「」や()で括られずに地の文に登場する
例:種牛ではなく胎のほうだ、とシャムスは力強く言った。
・台詞中、意味的には文章が終わっている箇所で句点を打たず、読点で並べる
例:興味がわいた、聞こう。

などですね。後者の点、発言者の勢いというか迷いなさ、圧を感じる表現で好き! と思っております。ほかにも、「この世界はこういう理論で動いている」というのをきっちりと提示する・生まれ育ちや文化による感覚の違いに触れる……辺りの作風もそうだろうなあ、と。
 なので予想は動かず、です。

 なお、本作、近親相姦願望のヤバそげな皇帝がすごく好みな予感がするので連載されたらとても嬉しいのですが、お忙しそう&ほかにも連載があるから無理でしょうか、どうでしょうか……。


DEEDさんを炙り出せ

 DEEDさんの検証は長くなるので節を分けました。
 長編を拝読したことのない作者さんを、書き出し祭りで何度かご一緒した&TLで日ごろの呟きを拝見しているご縁と情報で特定できないか!? という企画です。
 まず、前回記事で仮にbetした予想はこちら。

3-22 学園から追放されそうでしたが、今度は男装して王子の従者として通うことになりました
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/23/

検証結果
 
なんだかんだでやっぱりこれじゃないかな……!?

推理理由
 ……という結果だけでは検証にならないので、その結論に至った理由も書いていきましょうね。

 まずは、タイトルあらすじ段階での検証で、最後まで候補に残っていた作品を見てみましょう。

3-02 /The_Master_Protocol
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/3/

 あらすじの記述の形式での絞り込みと、本文を読んでの主人公の強い・悲壮な動機の描き方はDEEDさんであってもおかしくない、と感じました。が、以下の点がDEEDさんの特徴に一致しないと思いました。

・条文《プロトコル》など、漢字+カタカナルビの形式の多用
・会話と地の文の間に必ず空行がある

 DEEDさん作品だと、段落等で適宜空行を入れつつも必ずではないので、一致しないなあ、と。
・時系列を入れ替えての描写
 本作、「ゲーム」に参加することになった経緯の回想と、「ゲーム」真っ最中の「現在」を交互に描く形式でした。緊迫感を出せる手法ですが、過去のDEEDさん作品では見られなかった形式です。

 いずれも、これまでに書かれたことのないジャンルだから・挑戦的に試してみた、という可能性は残りますが、ひとまずDEEDさんではないと考えて良いかと思いました。

 さて、ほかにもDEEDさんの作風的にありそうな作品を検証してみましょう。あらすじの形式で除外した作品群ですが、「今回に限ってあらすじの段落字下げをやってみたよ」等の可能性も検討したほうが良いでしょうからね。

3-07 re:ゲロから始まる高校生活
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/8/

 DEEDさんと同じダッシュ「――」を使っている作品でした。また、第13回書き出し祭りのDEEDさん作品「悪魔は恋と言う名の秘密を語る」と、現代学園もの・恋愛要素あり・ヤンデレ要素あり、という点が共通しています。もう一度書くくらい好きな要素、ということもあるでしょうか……? ということで検討してみましょう。

・会話と地の文の間に必ず空行がある
・一か所「?!」という表記がある
→過去のDEEDさん作品には見つけられませんでした
・DEEDさんならラストの展開もあらすじで触れるはず
→前回の予想記事で言及した通り、DEEDさんのあらすじスタイルは「おおむね主人公視点での記述、かつ第1話の内容を簡単に開示しつつ、その先を匂わせるもの」です。
 1話の内容は「すべて」記載するのがDEEDさんのスタイルです。本作はラストにとあるサプライズ要素がありますが、DEEDさんならそれが何かのネタばらしはしないまでも、「意外な要素がありますよ」という言及はしているのではないかと思いました。「悪魔は恋と~」がまさにその形式でしたしね。
・本文ラストに煽り/キャッチコピー的な文章がある。
→>
これはゲロで始まり、『愛』で終わる物語。そして、永遠の愛を証明する彼女と否定する僕の戦いでもある。
 という部分ですね。これも予想記事で言及しましたが、DEEDさんはあらすじと同じく本文でも「ジャンルやプロローグ以降の方向性、目的等々の紹介に相当する煽り的な文章」は記載されません。あくまでも長編作品の第1話、という体裁で臨まれています。(キャッチコピー的なものがあったほうが良いか否かは各作者の戦略次第なのでここでは是非は語りません)

 ……以上の相違点により、3-07 re:ゲロから始まる高校生活はDEEDさん作品ではないと思います。
 では、次。

3-12 海抜ゼロメートルの悪魔
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/13/

 X(twitter)にてDEEDさんでは? と挙げておられる方がいらっしゃいました。作風的にも、現代舞台で謎と少し不思議要素があり「っぽい」ので検討してみましょう。

・会話と地の文の間に必ず空行がある
・本文ラストに煽り/キャッチコピー的な文章がある。
 
……既に挙げた上記の相違により「違う」のではないかなあ、と思います。あと、DEEDさんは場面転換を示すのに記号(*、〇、◇など)を使っていません。いっぽう、海抜ゼロメートルの悪魔では場面転換を「――――――」で表現しています。動画の引用を示す表現なので例外かもしれませんが、DEEDさんらしくないとは言えるでしょう。

 ですので、この作品も除外します。長くなってきたので残りの検討は簡潔にいきましょう。

3-21 君がかわいかった百の理由
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/22/

・会話と地の文の間に必ず空行がある
・場面転換に記号を使っている

3-23 遠ざかっていく花言葉が僕を呼ぶ
https://ncode.syosetu.com/n0144ik/24/

・ダッシュの表記が違う
・会話と地の文の間に必ず空行がある
・場面転換に記号を使っている

 作風的にあり得るかも、と思っていた作品群ですが、上記の相違点を理由にDEEDさんではないと判断できそうです。

 ではここで、当初の予想である3-22 学園から追放されそうでしたが、今度は男装して王子の従者として通うことになりましたを見てみましょう。
 ……既に検討したあらすじの記法、空行の入れ方、場面転換、1話ラストのヒキ方。いずれも、DEEDさんの特徴と矛盾はないように思います。イメージとは違うジャンルなのも、前回の予想記事で言及した通り、書き出し祭り向けに投票者に好まれそうなジャンルを狙ったということかもしれません。

 また、前回の記事でもDEEDさんの過去作品のあらすじと今回のあらすじに共通していると指摘した、「(~するの)であった。」という構文について。DEEDさんの過去作品の本文を検討したところ、5作品中約4作品で使われていることに気付きました(第15回「ソラは全てを知りたい」では文末ではなかったので「約」をつけました)。そして、「であった」構文は3-22の本文中にも登場します。これは……文章の癖と認識しても良いかもしれません。

 なお、第三会場で「であった」という文末を使っているのはほかには以下の作品でした。
3-08 勇者のメイド
→地の文での文末ではないので同列に考えて良いかは微妙。また、" "、[ ]で単語を括る表記が独特なので、DEEDさんではなさそう……?
3-14 後宮のお茶汲み係
→こちらは文体・作風的に大澤伝兵衛さんではないかと思っています。少なくとも、空行を入れないスタイルはDEEDさんとは一致しません。

 ……という訳で除外するとして。作風・表記の両面から候補を絞っていった結果、DEEDさんの作品は 3-22 学園から追放されそうでしたが、今度は男装して王子の従者として通うことになりました だと思います!

本庄さんが三人……?

 最後に、本庄照さんです。なお、第四会場には私の作品もあるので、以下のすべての発言にはフェイクが含まれる可能性があります、と宣言させていただきます。
 という訳で前回の予想はこちら。

4-05 イリヤの遺言
https://ncode.syosetu.com/n0146ik/6/

検証結果
 
なんだかんだでやっぱりこれじゃないかな……!?

推理理由
 本文公開早々に作者当てで言及した作品を読みに行きまして、読みやすさ、改行・空行のバランス、「あらすじに書いていないギミックがある」点から「よしよし本庄さんはこれだな!」と確信していたのですが。ご本人からこのような発言がありました。

 えっマジで……。と思っていたら一週間後にはこうなっていました。

 ふ え た( ゚д゚)

 とはいえ、私も全会場全作品を読破していますので、どれのことを言っているかは想像がつくので検証してみましょう。

4-04 死者が見える男は探偵役を望まない
https://ncode.syosetu.com/n0146ik/5/

 二人目(?)の本庄さんはこちら。確かに、「あらすじに書いていないギミックがある」点、ラストのヒキの強さ、とても本庄さんっぽくはあります。ダッシュも「――」で本庄さんが過去に使われていたものと一致します(そもそも本庄さんはあんまりダッシュを使用しないので、決め手にはならないんですが)。

 とはいえ、DEEDさんと同じく、本庄さんは「会話文と地の文の間に必ずしも空行を入れない」という特徴をお持ちです。会話文と地の文、だけでなく、会話文が連続した箇所でも空行を入れている点も、本作は本庄さんの特徴と一致しません。
 実はこの作品、ダッシュの一致と、文体の硬さと密度、成人男性と未成年女性のバディのミステリという作風から、しのあおさんではないかなあ、と思っています。第18回でも「1-10 メスガキ探偵と監獄女学院」を書じゃれていますし。書き出しコロシアムでは、「絶対本庄さん!」と多くの人に思わせた作品の作者さんでもありますし、文章の雰囲気に通じるものがおありなのではないかな、と……。
 いやしかしこの2作品が並ぶのは書き出し祭りの恐ろしいところですね。

4-09 書き出し祭りの魔物、かく語りき
https://ncode.syosetu.com/n0146ik/10/

 三人目(?)の本庄さんはこちら、ですかね。
 何しろ、本庄さんは第15回書出し祭りにて発生した、「無題」というタイトルの作品がふたつある! という事件の当事者(作者)のおひとりです。自虐的にネタにするということはあり得るかもしれません。この4-09の作者も書き慣れた巧みな方だという感触はひしひしとありますしね……。

 ダッシュの表記も一応一致してはいます。……が、上述のように、本庄さんはダッシュをほとんど使用しないいっぽうで、本作は(区切り代わりに使っているのは度外視するとしても)多用しているので、癖としては違うのではないか、と思います。

 また、上述の「無題」事件は確かに祭り参加者に強いインパクトを残してはいますが、実際にはふたつの作品の内容はまったく違ったので、厳密には「ネタ被り」ではないのではないかなあ、と思います。当事者であればこそ、その辺りを誤認することはないのではないか、と。

 さらに言うなら、こうしたメタ作品に対する主催者様の見解は下記のとおりです。

 肥前先生は「無題」事件の時も同様の懸念を示されていたと思うので(蓋を開けてみれば、2作品はいずれもそのタイトルになる必然性がある内容だったので、書き出し祭り狙い特化という訳ではなかったのですが)、本庄さんがあえて書かれることはないと思うのです。

 あと、常識的に考えてこのネタは「練りに練ってここぞとばかりに出した」ものだと思うんですよね……。本庄さんは今回はリザーバーなので、予備原稿が必要かも、という段になってこのネタを思いつく瞬発力は……いや、本庄さんのことだからあるかもしれないですが、ないと思いたいですね。ということで、これも本庄さんではないと思います。

 では、4-05 イリヤの遺言の検証に戻りましょう。

 まず有力な傍証として上がるのは傍点の振り方ですね。本文の該当箇所をスクショさせていただきますね。

第十九回 書き出し祭り 第四会場 4-05 イリヤの遺言(https://ncode.syosetu.com/n0146ik/6/)より

 なろうにおいては、という感じで表現する方が多いと思うのですが、これは読点を使っているのでしょうかね。よりくっきり強調されて良い方法かもしれません。やや特徴的なこの表記、本庄さんの過去作品とも共通するので、これを決め手としても良いのではないかと思います。

 さらにもう一点、個人的に本庄さんポイントでは? と思ったのが下記の記述でした。
>ほらなんて言うの、ゲイとかアセクシャルとか。そういうのでも全然平気だから
 結婚する気配の見えない主人公たちに、ご両親がかけた言葉です。
 我が子が同性愛者である可能性を考える親は、昨今ならそれなりにいそうですが、アセクシャルが出てくる方はそんなにいないんじゃないかな? と個人的な感覚では思います。ご両親、めちゃくちゃ心配でめちゃくちゃ調べたのかな……。それに、この箇所の直後でも「性的指向」と正しく表記できている(嗜好や志向ではなく)あたり、作者さんはいわゆる性的マイノリティに一定の理解と配慮がある方だろう、と考えられます(性的「指向」、本来は間違えてはいけないところですが)。

 私が思い出したのは、上記でも触れた第15回の「無題」に感想を寄せた時のことです。本文中でトランスジェンダーに触れた箇所があったのですが、作者がその方たちの実情を誤解している可能性があるのではないか、と指摘させていただいきました。そして、作者公開後のご返信で、その点は承知の上で、物語上さらりと流した旨をお知らせいただいた、という経緯がありました(っていう感じだったと思います!)。
 今回と同様に、性的マイノリティへの理解と配慮が感じられたことがあった……という点も本庄さん特定の根拠とさせていただきます。

 という訳で、第19回書き出し祭りにおける本庄さん作品は4-05 イリヤの遺言です!

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