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第19回書き出し祭り 作者予想

 書き出し祭りとは、小説家になろうにて開催されているユーザー企画です。以下、企画趣旨および概要を書き出し祭り事務局様のポストから抜粋します。

【企画主旨】
 小説の書き出しは、とても大切なものです。 物語の掴みでもあり、読者を引き込む最初の一手でもある書き出しの重要性を学び、今後の創作に活かすことを目的としているのが当企画です。 多くの方に企画が広まり、読まれ、多角的な評価が生じることが企画の助けになります。
【企画概要】
 プロ・アマ混合、匿名状態、新規作品を条件に掲載された100作品から、読者投票により最も魅力のある書き出しを決定する企画です。 同じ条件の中で、どのように読者を引き込むかを考え、また読み手としてどのような所に魅力を感じるかを知ることは、創作の手助けになるはずです。

 第19回を迎える今回、参加作品のタイトルあらすじは既に公開され、本日9月9日(土)18時~本文が公開される予定です。これから各作品の感想・分析等で盛り上がることが予想されますが、企画盛り上げの一助として、「タイトルあらすじだけでの書き手予想」に挑戦してみたいと思います。本文公開後だと文体等でヒントが出てしまうため、現段階ならではの楽しみということになりますね。

https://note.com/veilchenfeld/n/nb360c56b039e

 前回・第18回も同様の企画をやっていましたが、タイトルあらすじのみでの正解率は5/7でした。なかなかの勝率ではないでしょうか。今回は自信を持って挙げられるほど文体・作風を知っている方が前回よりも少なかったのですが、何とか推理してみたいと思います。


なお、タイトルあらすじの一覧は下記のポストからご覧いただけます。

 では行ってみましょう。

第1会場
1-5.マンドラゴラと楽師なき楽団
 音楽の神に祝福された西の島国ナスィルテは、言葉を語る生きた楽器を作る職人や、優れた手腕を持つ楽師によって栄えている。
 かの島の放浪の楽団は職人とその見習いを連れて故郷から大都市へと旅をしていた。しかし一行は旅の最中に襲われ、楽師たちと職人が殺されてしまう。残された見習いと楽器たちが瀕死の敵の一人を捕え尋問すると、《言葉なき響き》なる教団が魔法を持つ声を集めておぞましい武器を作っているという。
 見習いは誓いにより敵を縛って下僕とし、各地に散らばる仲間の手を借りながら、忌まわしき教団の目論見を阻止すべく茨の道を進む。
 声を禁じられた見習いに代わって、楽器たちの視点から語られる冒険譚。

作者予想:fさん
 会場は明言されていないですが、恒例通りなら第1会場にいらっしゃることでしょう(少なくとも第4ではないのはご発言から推定可)。
 お付き合いが長いこともあり、前回も当てられた作者さんですし、今回も「固い」と思ってbetしております。
 練られた世界観の独自ファンタジー、意志を持って語る器物の設定は好んで描かれるものですし、前回の「奇天烈卿のヴンダーカンマー」とも通じるものがあります。用語を《》で括る記法も同じく。
 さらに付け加えるならば、fさんは創作言語を嗜まれるので、ナスィルテなる慣れない響きは既存の言語にはない、造ったものなのではないかな、と。
 あらすじを読むと、逆境にあるはずの見習い氏、瀕死の敵を尋問する冷静さや残酷さ、というか強かさがあって面白そうだな、と思っています。どんなキャラクターなのか、楽器たちとのやりとりも含めて楽しみです。

第2会場
2-14.地域の広報キャラクターをデザインした、ある一介の公務員 ~彼の功罪とは~
 地方某市の市役所職員は、趣味の同人活動が職場に発覚した事で、副業禁止違反を問われ窮地に立たされる。
 彼を救ったのは、市の広報キャラクターのデザインを任せたいという、市長の一声だった。
 広報キャラクターとなると、地域の特徴を体現させるのが望ましいが、高度成長期にベッドタウンとして開発された某市には、これといった特徴がない。そこで彼が思いついたのは、昭和の末頃から増え続けている、ブラジル系労働者の存在だった。
 ブラジル系の女性をモチーフとした広報キャラクターの好評を受け、外国人労働者の受け入れ拡大を図る政府により、その手法は全国へと広がっていく。
 主人公はパイオニアとして多くの人の支持を集め、国内外のマスメディアへ登場する事で一躍、時の人となる。
 一方、反発する移民反対派からは〝国賊〟として誹謗され、さらにはテロの脅迫にまでさらされる様になり……

作者予想:トファナ水さん
 トファナさんも作風が一貫されている作者さんなので、自信をもって回答できます。時事ネタ・社会問題を絡めたifものが書き出し祭りに出たら、それはトファナさんの作品です。
 移民問題に触れる今回。前回の「銃を教鞭に持ち替えたアマゾネス達」も、軍人出身の外国人教師が日本にやってくるという設定でした。いずれも、日本の文化や社会をある意味「浸食」する異文化にどう対処するか、というテーマと捉えることもできるかと思います。とてもトファナさん的なテーマです。
 また、前回の記事でもおねしょた・女性優位のご趣味を指摘させていただきましたが、さらに補足するなら地母神的な大柄な女性像がお好みな方だとも(勝手に)思っています。前回もご紹介した和風&時代風ディストピア小説「龍と人が催す、終わらぬ贄食の宴」でも、大きくて怖い美女が沢山出てきますしね(これは異種姦嗜好でもあるかも……)! ステレオタイプな発想をあえて述べると、豊満なブラジル女性 のイメージもとても「らしい」気がしています。


2-24.買われた聖女~後宮であなたと白黒ショー!
世界随一の規模を持つ帝国、唯一無二の皇帝。
次代の皇帝を生み、国の政治さえも揺るがす後宮に、買われた聖女が送られる。
故郷を守ることを引き替えに後宮での陰謀に身を投じる聖女。
その聖女を利用して、権力を握ろうとする猛々しい皇妹。

聖女はしだいに一人の女を愛し始める。皇帝の寵をめぐりながらも、聖女の気高い愛が後宮を革命する。

作者予想:はに丸さん

 書き出し祭りには初参加の作者さんです。古代中国、春秋戦国時代の人々の生きざまや国の興亡を描いた「父の仇に許された」、その少し後の時代で怪力乱神に絡まれる俺様霊感青年と美少年後輩の活躍を描いた「青春怪異譚」、どちらもとても面白いです! ので祭りのご参加嬉しかったし当てるぞ! と意気込んでおりました。そして作者予想をお許しいただきありがとうございました!

 推理の根拠としては、タイトル、あらすじの形式から絞りました。
・あらすじに段落下げなし
・あらすじの情報量として、物語の大枠の紹介になっていることが多い。
(例えば、プロローグの詳細な説明やキャラクター紹介にはあまり字数を割かない)
・「あなた」はひらがな
・メインタイトルとサブタイトルの間に~を置き、かつ末尾には記号を置かない。

 推理の参考にカクヨムの過去作品を眺めさせてもらっていたところ、特に最後の点が目につきました。どちらかというと、「メインタイトル ~サブタイトル~」という感じで記号で挟む人が多いと思うので、特徴になるのでは、と。ちなみに、この観点でタイトル一覧を眺めていて気付いたのですが、記号の前にスペースを置くかどうかでも個性が出るみたいですね。ほかの方の場合でも作者当てが捗りますね。
 「~が前半だけにある」という特徴、「3-4. 近衛騎士の剣星様は求婚されたくない~24歳と365日目の出来事」も合致してはいるのですが、上述の通りあらすじに記載された情報が詳細な点から除外しました。

 さらなる材料として、「白黒ショー」という単語に注目しました。古代中国を舞台にした「青春怪異譚」でも、さらりと現代的な・カタカナの単語を混ぜた記述を多用されていて、それが面白さや分かりやすさに繋がっていると思うので、書き出し祭りにおいても同様のスタイルを採用されたのでは、という推理です。

 また、「白黒ショー」とはストリップ用語とのことなのですが、タイあら感想を見る限り、意味を知らない方が多そうだと感じました。ので、知ってる方はどういう方だろう……? とも考えてみました。
 このワード、私も恥ずかしながら今回初めて知ったのですが、検索するうちに三島由紀夫の作品に白黒ショーに出演するカップルを描いた作品があることを発見しました。

 はに丸さんは近代文学もすごく読まれている方! のイメージなので、その辺りから語彙や発想を得られているのかなあ、と考えました。三島由紀夫に限らず、文豪はアングラな世界に出入りしてそうな偏見があります。
 カクヨムには百合ものも公開されているし女の子を書くのも好きだと発言されていた気がするし……も併せて、こちらの作品ではないかと思います!


第3会場
3-22
学園から追放されそうでしたが、今度は男装して王子の従者として通うことになりました
公爵令嬢ヴィオラの従者であるリズはある日彼女の怒りをかってしまい、寮と学園から追放されることになってしまう。
そんな絶望の最中、ヴィオラの婚約者であるオルトワーズ第二王子に声をかけられる。
彼に相談しようか悩んでいるところにヴィオラが現れ言い争いを始めてしまう。

とっさにリズはある魔法を使ってオルトとともにこの場から逃げることに成功する。
リズの秘密を知ったオルトは彼女に学園に残り続けられる提案を持ちかけるのであった。

作者予想:DEEDさん
 完全に消去法なのであんまり自信はないのですが、根拠を持って推理したのでその過程を開示してみましょう。

 

 コミカライズ作品の「僕は何人殺しましたか?」のイメージおよび、書き出し祭りの過去作品から現代もの、かつ謎解きやサスペンス的要素のある作品を書かれるイメージのある方です。が、今回に関してはジャンルはいったん考慮しないことにします。

 こちらの発言を見る限り、人気ジャンルを狙い撃ちする/趣味に走って、いずれかの理由によって、これまでにないジャンルで臨まれているかもしれないと考えられるからです。となれば、上位を狙う意図で追放もの要素と女性向け要素を組み合わせてこちらの作品で挑む、ということもあるのではないでしょうか。

 タイトル・あらすじの形式的にもこちらの作品はDEEDさんの特徴に合致しています。
・あらすじは段落下げなし、改行の頻度は高め、空行も適度にあり
 過去の祭り参加作およびなろうで公開中の作品すべてが段落下げなしだったので、これは信じて良い気がします。改行多めだと、逆にガタついて見えてしまうから、なのかもしれません。

・これは~~なお話 という構文は使っていない
ジャンルやプロローグ以降の方向性、目的等々の紹介に相当する煽り的な文章、あらすじの〆としては割とよく見ると思いますが、DEEDさん作品ではほとんど使われていません。煽りがない訳ではないのですが、「これは~~」構文ではないのは特徴と思って良いかな、と。
 なお、書き出しコロシアムではDEEDさんもこの構文を使っていたのですが、(https://ncode.syosetu.com/n7682hw/6/ 「これは(中略)二人が失ったものを取り返す物語。」)あの時は擬態の意図もあったかもしれないので例外と考えることにします。

・ダッシュはあまり使わないが、使う時は「――」。
 上の構文の指摘とも通じますが、「~~することに──」「~~なのだが──」みたいなぼやかすことでヒキにするパターンもあらすじには多いですが、DEEDさん作品では使われていません。あえて言うなら第十八回作品が「~真実とは……?」で終わっていますが、──ではないんですよね。
 使う時は「――」とは何ぞ、と思われるかもしれないですが、ダッシュの表記、第3会場のあらすじだけでも3種類くらいあるんですよね……。DEEDさんが過去作品で使われているのは「――」。私も使っているものは「──」。これがそれぞれ数作品ずつあります。あと3-9だけ「——」を使ってますね。環境によっては区別できないかもしれないですが、何か違うらしいんですよね。
 DEEDさんの過去作品において表記揺れはなさそうだったので、登録されているのでしょう。なので、ダッシュの表記が異なる作品は除外できると考えました。

・あらすじはおおむね主人公視点での記述、かつ第1話の内容を簡単に開示しつつ、その先を匂わせるもの
 匙加減の判定が難しいところではありますが……例えば世界観の説明に字数を割いている3-8、3-16は違うんじゃないかな、3-10、3-18は簡潔過ぎるんじゃないかな、みたいな感覚です。

 上記を勘案した結果、残るのが3-2. /The_Master_Protocol3-22学園から追放されそうでしたが、今度は男装して王子の従者として通うことになりましたでした。

 DEEDさんの普段の作風からは3-2のほうが近そうな気もするのですが。また、過去は第2会場でのご参加が多かったところ、今回は第3会場なのはタイミングを見計らっていたらちょっと遅れちゃった、なのでは!? という推理も成り立つのですが。上述の通り、──で終わるヒキにしているのが気になります。
 また、DEEDさんの過去の作品は文章タイトルが多いところ、今回に限って英単語にするかなあ、という点も疑問でした。

 いっぽう3-22に注目すると、あらすじの最後が「~のであった。」という構文で終わっています。そして、DEEDさんの第十三回作品のあらすじも、同じ文末であることに気付きました。これを手癖が出たものとみなして良いものかどうか……これもまた悩ましいのですが、総合的に「違うポイント」がより少ないほう、ということで3-22にbetしてみます。

(なお、とてもストーカー的な傍証として、3-22は感想依頼を出している形跡がある、いっぽう3-2はゼロっぽい、というものもあります……祭り常連者なら積極的に感想依頼するはず、という推理……)

第4会場
4-5.イリヤの遺言
 三十歳を迎えた私の結婚願望は、止まるところを知らなかった。変な男ばかりに引っ掛かっていた私だが、ついに免許センターでイリヤという素敵な男性を見つけ、付き合うことに成功する。

 私はどうしても結婚したかった。結婚して、子供が欲しかった。なぜなら私は結婚願望がもりもりで、たった一人の弟は結婚したがっていなくて、食道癌の父の余命は限られていて、両親は孫を見たがっていたから。

 イリヤは完全無欠の男だ。顔と性格が良く、収入と身長が高い。彼と結婚して子供が生まれれば、私は幸せになれるだろうし、両親もきっと喜ぶだろう。

 だが、可愛い可愛い私の弟は、私を半笑いでバカにしながら言う。
「そいつ、結婚詐欺師じゃね?」

作者予想:本庄照さん

 前回の覇者にして、第4会場のトリ(すなわち、ラスト1分切った段階とかで提出したと思われる)を取ったことで作者予想を惑わせてくれた御方です。あんなギリギリで提出しているとは思わなかったです……。今回はリザーバーでのご参加なので、提出順は考慮する必要がないので良かったです!(?)

 推理に当たって、前回開示していただいた「本庄流あらすじの書き方」が参考になるのでもう一度貼ってみましょう。

 「結婚して幸せになりたい!」という主人公の願望(=目標)を前面に出しつつ、1話で描かれるであろう彼女(たぶん)の状況とイリヤとの出会いを描き、弟氏の指摘でヒキにする、という構成、まさに上記のメソッドに合致していると思うのですがいかがでしょうか。

 また、弟氏の台詞で「イリヤは結婚詐欺師なのか否か?」という問題を提示したと見せかけてタイトルの戻ってみると「えっイリヤ死ぬの?」という謎が生まれるところが上記のポストの「ギミック」になるのかなあ、と思います。

 さらに、「今回はリザーバーなので手癖が出ている」旨の発言を捕捉しているのですが、本庄さんってしっかりした弟さんがいらっしゃいますよね……も傍証です。文体・構成のみならず、設定部分にも作者さんがにじみ出ていたりするのかもしれません。

 さらなるストーカー傍証としては、「4-5.イリヤの遺言」の作者さんは南雲皐さんの「タイあらからの本文妄想」に応募されていますね。

 マシュマロ等経由でのタイあらや、本文感想依頼はもう書き出し祭りの文化ですが、「妄想」とつくと歴が浅い方は戸惑われるのでは? と勝手に思うのですが、そこを即座に応募している辺り、やはり手慣れた方なのでは……!? とこれまた勝手に確信を深めるところです。


 今回のタイあら段階での予想はこんなところで! 余裕があれば、本文公開後に検証記事を書くかもしれません。
 ちなみに私は第4会場のどこかにいるので、「これかな?」というものがありましたら伝えていただけると嬉しいです。参考になりそうな過去作品も掲示しておきますので、挑戦お待ちしてます。



 なお、本記事中にて「違う」「除外」等と記述しているのは、対象の作者さんを探し当てるにあたってどうか、という観点のみによるものです。タイトルあらすじの手法の善し悪しを断じる意図はまったくありません。各作者さんに意図や戦略があると思いますし、すべてのアプローチは尊重されるべきだと考えていることを、念のため明言しておきます。


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