死神☆アイドル♪プロジェクト~ディア❤ボリカ~
俺が彼女をスカウトしたのは、彼女に理想のアイドルを見たからだ。
「死神アイドル」天童かりんのライブが始まる。
100人もいない小さなライブ会場。
盛り上がり始めた矢先、観客が次々と倒れていく。
倒れた観客達は弱々しく立ち上がり手を振り上げる。満面の笑みだ。
ステージ上の彼女が微笑み、マイクと一体となったそれを振る。
再び客が倒れる音がした。そしてまた立ち上がる。満面の笑みで。
照明のせいか、盛り上がる客達がうっすら輝いて見える。彼女の笑顔も一層輝いていく。目的を果たせるからだ。
「次は…三曲目。作ってもらいました!」
歓声が沸く。
「聴いて下さい!『デス☆ラブ』!」
黒ずくめの衣装。大鎌のようなマイクスタンド。腰まで伸びた髪。輝く笑顔。そして…鎌を振る!その先の観客がよろめいた。魂を抜かれたかのように。
そしてそれは…魂の欠片は大鎌めいたスタンドに吸い込まれる。
彼女は本物の「死神」なのだ…。
魂を集め新たな命に繋ぐ。それが彼女の本来の役割。
しかし、今の彼女は違う。
人々の興奮、感動、そういった感情の噴出は、魂の力を増幅させるのだと彼女は言った。
それを少しずつ集めれば立派な魂を産み出すのだという。
それに気付いたから、彼女は僕のスカウトを受けたのだ。俺の最期の願いを…。
「全然足らないデス…今月の目標…」
「それでなんとかなるって言ったの、かりんだぞ」
「そうデスけど…1000人分の欠片ならすぐだと思ってたのに…」
曰く、およそ666人分の魂の欠片があれば人間一人分の魂に匹敵するという。しかし彼女の死神としてのノルマは月に10人分の魂。つまり7000人分。
「そのためにはもっと大きな会場でライブ出来るようにならないと」
「デスね…」
「…まあ君なら大丈夫さ」
コン、とドアを叩く音。小太りの中年が青い顔で入ってきた。社長だ。
「柴君…かりんちゃん…」
「どうしたんデスか?」
「すまない…今月一杯で我が社は閉鎖する」
「「え?」」
続く?
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