エクソソームとは?簡単に分かりやすく解説【エクソソームが世界にもたらす大革命】#1
栄養学で今、大革命が起きようとしています。
これまで多くの人が疑問に思い、感覚的に理解していたことが、科学的に証明されるようになりました。例えば、超加工食品が体に悪いことや、土や作物の育て方の重要性が明らかになっています。
このシリーズでは、最新の栄養学情報をお届けします。今回のテーマは「エクソソーム」です。連載1回目として、近年注目されている「エクソソーム」とは何かについて、分かりやすく解説します。
※本記事は、ベジタブルテック(株) 代表取締役 岩崎の動画のリライトです。栄養学の観点からエクソソームについて解説しています。動画はこちら。
エクソソームとは?
エクソソームとは、細胞が他の細胞に情報を伝達するために分泌する物質です。細胞が感じている環境や状況を、他の細胞に伝えるメッセンジャーの役割を持っています。
エクソソームの中には、様々な代謝物・酵素・タンパク質・RNAなどが含まれており、これらは細胞内の状況に応じて変化し、他の細胞に伝達されます。
生体情報を伝達し、細胞を変化させるメッセンジャー
人体には、脳や筋肉・肝臓など、全身に細胞が存在しています。
エクソソームの研究の歴史としては、50年以上前に血液の中に「小胞体」が見つかりました。小胞体とは、細胞が他の細胞に情報を伝達する物質のことで色々なサイズがあり、特に小さいものをエクソソームと呼びます。
エクソソームの中には「積荷」(つみに)が積まれていて、あらゆる伝達物質が入っています。
エクソソームを出す細胞を「ドナー細胞」、それを受けとる細胞を「レシピエント細胞」と呼びます。ドナー細胞が出した積荷が、血液を循環して運ばれてレシピエント細胞に到達し、ドナー細胞の情報を伝達します。
このように、エクソソームは細胞間のコミュニケーションを担っています。
ガンの転移も、エクソソームによる情報伝達で起こる
エクソソームによる情報伝達の一例として、ガン細胞の転移があります。
ガン細胞はエクソソームを分泌し、その中には細胞をガン化する積荷がたくさん積まれています。このガン化する積荷を載せたエクソソームが離れた場所の細胞に到達して細胞内部に取り込まれ、DNAレベルからスイッチを切り替えることで、ガン化を引き起こします。
エクソソームの大きさ
エクソソームは「ナノ粒子」とも呼ばれ、非常に小さいです。サイズ感を知っていただくために、分かりやすく比較してみます。
・サッカーボール: 22cm
・ピンポン玉 : 4cm
・髪の毛 :100μm
・細胞 : 20μm(髪の毛の5分の1)
・エクソソーム : 30~150nm
細胞は20マイクロメートルととても小さく、肉眼で見ることは不可能です。その小さな細胞から放出されるエクソソームは、30~150ナノメートルです。ナノはマイクロの1000分の1、1万分の1ミリほどの大きさなので、ものすごく小さいことがわかります。
エクソソームはどのようにできるの?
細胞は細胞膜に包まれています。細胞内には水・核やミトコンドリア・生成された物質などが存在しています。
そして膜の内側には「エンドソーム」という、イボのような突起があり、それが膜から離れ、小さな泡のようなものがたくさん作られています。
細胞内でエンドソームが作られる
エンドソームには、遺伝子から生成された分子構成や酵素バランス、栄養の内容など、たくさんの情報が入っています。これらの成分は時と場合によって変化し、核から出た遺伝子情報だけでなく、DNAの一部である「マイクロRNA」(※)と呼ばれる小さなDNA断片も無数に詰め込まれています。
※マイクロRNAとは
小さなRNA分子で、細胞の機能や発生、病気の進行において重要な役割を持ちます。DNAから遺伝子の発現を微調整し、遺伝子を元に、細胞が行動するために必要な指示を調整し、反応するように作用します。
エンドソームからエクソソームが放出される
細胞は、内部の状況に応じてマイクロRNA、代謝物、酵素、栄養成分などをエンドソーム内の小胞体に詰め込み、細胞外に放出します。この小胞体を「細胞外小胞体」(エクストラセルラー・ベシクル)と呼び、その中で特に30~150nmの小さなものがエクソソームです。
エクソソームの機能
エクソソームには、細胞を変化させる伝達物質が含まれています。これは非常に重要なポイントです。
エクソソームは他の細胞に届くと、その細胞内に入り込み、マイクロRNAレベルで細胞を変化させます。だからガンの転移なども起こるわけです。
いい情報も悪い情報も伝達するので、積荷が大事
ドナー細胞が置かれている環境によって、エクソソームの質は変化します。健康な細胞から出されたエクソソームは、他の細胞を健康にすることができます。つまり、ストレス状態の細胞と、幸福でリラックスした状態の細胞から放出されエクソソームでは、積荷の内容が異なるのです。
人間にとって良いエクソソームが増えれば健康になり、逆に悪いエクソソームが増えると不健康になります。なので、エクソソームの量だけでなく質問重要なのです。
エクソソームの活用
このような機能を持つエクソソームは、医療分野でも注目されています。様々な材料をもとに培養されたエクソソームを、治療に活かす研究が進められています。
医療分野 ~検査/診断/治療への応用・再生医療など~
例えば、幹細胞(※)や乳歯の歯髄を用いる方法です。乳歯の細胞にも「歯髄」と言う、次の歯が生えてくるように再生する成長因子が含まれています。子どもの乳歯が抜ける前に、歯髄細胞を採取して培養し、上澄みを治療に活かす方法は、既にかなりの結果が報告されています。
※幹細胞
自己複製能力と多分化能力を持つ特別な細胞。体内の様々な種類の細胞に分化する能力を持つ。損傷した組織や臓器を修復する役割を果たす。
美容分野 ~エイジングケア/若返り/美肌など~
胎児の成長時は、エクソソームに成長に関与する積荷が含まれていることが分かっています。そのような幹細胞を培養することで、再生に関わるエクソソームが得られ、点滴や注射することで老化した人でも再生が促進されます。
そのため、病気の治療だけでなく、エイジングケアにおいてもエクソソームの活用や研究が進んでいます。
ある実験によると、老化した動物に若い動物の血液を輸血すると、老化した動物は若返ります。逆に、若い動物に老化した動物の血液を輸血すると、若い動物が老化します。これもエクソソームの働きによるものです。
若い状態の細胞から放出された「若さを維持する情報」を伝達するエクソソームのが、老化動物の細胞を若返らせているのです。
つまりエクソソームは、数だけでなく質も重要です。エクソソームの中に入っている、積荷の内容も非常に重要だということです。
次回は更に掘り下げ、エクソソームの種類やエクソソームの質について解説します。お楽しみに。