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#19 親の出番は減っていく

ある雨の日のこと。「いってらっしゃい!」と、玄関で息子を見送ると、すぐに大粒の雨が降りだした。傘を持って出かけていない。学校までこどもの足で25分はかかる。ほとんど走っているようだけど、それでもこの大粒の雨にあたりっぱなしになる。

急いで傘を持って家を出る。ランドセルのポケットにはGPSが入っている。その動きを見ながら追いかけた。あっちも走っているから、全然距離が縮まらない。ぜーぜーはーはー。GPSはどんどん学校に近づいていく。そんなこんなしているうちに、小雨になり、あれ、止んだわ。

GPSが学校に到着した。もう傘は必要じゃないことはわかっている。けれど、頑張った証として、この傘を息子に手渡さないと、気が済まない。

靴箱の前で扉が開くのを待っているこどもたち。そのなかに息子もいた。友達と走ってきたようだった。ようやく着いたー雨に濡れて楽しかったなー、さてさて重たいランドセルでもおろして待ちますか。そんな声が聞こえてきそうな、達成感ある雰囲気を息子は放っていた。もうこどもにはこどもの世界があった。

そんな中、親を見つけた息子は「どうしたの?」と言う。傘がなくて濡れている息子。傘はあるけど壊れて濡れている友達。なんだかな。これから1日がはじまるというのにこんなに雨に濡れて、よく笑っていられるなと感心してしまう。私なら眉間に皺だよ。

頑張って走った証の傘を渡す。じゃあね、と帰る。名残惜しそうな顔で、帰る親の姿を見ているのかなと振り返ると、全くこちらを見ていない。おーい!1年生のときは大泣きしていたんだぞー!

息子は安心した気持ちでそこに立っていた。よかった。任務完了という達成感はないけれど、この姿を見せてもらうために、今日は追いかけてきたのかな。足がガクガクだよ。お家に帰って暖まろう。

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