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【ベガスの物語】初話:田舎"なんか"に配属されました

『私はベガスと申します。本日から、こんな”ど田舎の工場なんか”に配属されて、社会人生活をスタートするのが大変楽しみにです。このような田舎に来るのは新鮮ですし、私自身の大きな決意があってこその新生活の一歩だと気持ちを新たにしています。どうか皆さんよろしくお願いします。』

ベガス、この物語の主人公は、新入社員として配属された、湖畔の小さな工場にて、工場の全従業員が集まる最初の会でこんな挨拶をした。無論、彼自身には何にも悪気がないのであろうが、工場が新設されてから数十年たち、主に地元の方々、ましてやつい最近ベガスが入社した外資系の会社に買収されたところときたものなので、なんて新人が入ってきたのだ!という人も少なからずいた。

彼自身は彼の一つの決意の表れとして、東京で特にパットもしていない学生人生を過ごした後、学生時代の出来事を踏まえて、決意をしっかりと持っていたのだった。家を探す際に、東京での家賃相場の感覚で不動産屋さんに足を運ぶと、10万円で立派な一軒家借りれること。駅前よりも国道沿いが栄えていること。物価、特にカフェ等での値段の安価なこと。などなど、社会人生活を始めるにあたって”田舎暮らし”を大いに満喫し、満喫具合を持ってこれから始まる赴任地での生活、特に仕事の面で気合入りまくり!といったところが、完全に空回りした結果であった。

ベガス自身はこの時のスピーチはただ緊張した!という類のものであったが、後々に彼にとっての大きな学びとなるスピーチでもあった。

この物語をもう少し書き進めていく前に、主人公「ベガス」に関して、少しここで綴ってみたいと思う。

彼は、東京で生まれたごく普通のサラリーマン一家に育った。一つだけ特徴があるとすると、父親が航空会社に勤務していることであった。そのため、幼少期ではアラスカで過ごしたものの、年少さんになる頃にはすでに日本にいて、だいぶ中途半端な形で”帰国子女”ということであった。理系の科目はそこそこ得意であったため、なんとなく父親の影響からから、航空系エンジニアを目指しつつパイロットを受けていた、1時試験であっさりと落ちたため、大学院に進学することなく、外資系メーカーの門を叩いたのであった。

航空宇宙にかなり偏った経歴であるため、理系の中ではだいぶ中途半端に学卒。さらには生産管理の知識はもとより、サプライチェーンという言葉すら聞いたことある程度。そんなベガスが様々な同僚や、経験を経てサプライチェーンを専門領域として成長する姿を綴ったものである。