ビーガン料理の落とし穴!?:お酒がビーガンに対応できない理由とその対策
お酒。それは、飲み物として楽しむだけでなく、料理の風味を引き立てる魔法の一滴として、私たちの日常に溶け込んでいます。しかし、この「お酒」がビーガンにとって予想外の障壁になることをご存知でしょうか?今回は、その理由と、ビーガン対応を目指す方々への具体的な対策について解説していきます。
理由1: アルコールに隠された動物由来の成分
まず驚くべきことに、日本で売られているアルコール製品の殆どには動物性の原料が使われています。しかも、それがラベルに明記されません。
例えば、発酵の過程で使われる砂糖が肉骨粉などの動物由来の原料で精製されていたり、発酵を止める目的や酸化防止剤・防腐剤の目的で動物由来の添加物が使用されている場合があります。まさに、見えないところで動物性の原料が潜んでいるのです。
対策
じゃあ、どうすれば良いのでしょうか?答えは簡単で、酒造メーカーに直接問い合わせることです。原料の詳細を確認し、そのお酒が本当にビーガン対応かどうかを突き止めましょう。
理由2: 清澄剤という名の“透明な罠”
アルコールが容器に詰められる前には、濁りを取り除くための「清澄剤」(澱さげ剤、フィルターとも言われます)が使われます。これに動物由来のものが含まれていることも多くありますが、アルコールに投入された清澄剤は最終的には取り除かれるため、完成したお酒には残らないため表示義務がないのです。
動物由来の清澄剤には以下のものがあります。
動物由来の清澄剤
対策
この場合も、やはりメーカーに確認することが最も確実です。問い合わせる時は「動物由来の清澄剤」と言っても判断できない場合や、動物性と認識されていない可能性があるため、上記のフィルターの名称を細かく伝え確認するのが確実です。
ビーガン対応の清澄剤
上記の清澄剤は植物および鉱物由来のため、これらが使用されたアルコールはビーガン対応として使用することができます。
理由3: 宗教上の問題
日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、宗教的理由でビーガンやベジタリアンを選ぶ人々は、アルコールそのものが禁じられているケースが多くあります。こうした戒律を持つ方々に料理を提供する際、アルコールを使うのは避けるべきなのは言うまでもありません。
じゃあ、どうすればいいの?――具体的な対策
1. アルコールを使用せずに調理しよう
そもそもアルコールを使用せずに調理しても味に影響が出ない可能性が高いというのがあります。
和食のレシピには酒・みりんが調味料に書かれている場合が多くありますが、酒やみりんを入れる目的は魚介類に含まれるイノシン酸の旨味を引き立てる目的や、肉・魚の臭みを取る目的があります。ビーガン料理では肉や魚介類は使用しないため、そもそもイノシン酸や臭みがありません。酒・みりんを入れなくても味に影響が無い可能性があります。
レシピに酒やみりんが原料に書いてあったとしても、入れなくても問題ないか味見をして確かめてみましょう。
2.アルコールに代わる調味料を使おう
調理の目的によって、アルコールを使わなくてもその役割を果たす食材や技法はたくさんあります。
・臭み消しの目的なら、スパイスやハーブを使用。
・特にみりんなど甘味を加える目的なら、てんさい糖などの砂糖を使用。
・油の乳化作用の目的なら、酢やレモン汁を使用。
・香りを引き立てる目的なら、高温に熱した少量の油に香り成分を投入し、低温の水分を流しこんだ時の温度差で香りを引き立てるという調理技術を使用します。
3. ビーガン認証アルコールを選ぼう
それでもアルコールが必要なら、ビーガン認証のあるお酒を選ぶことが肝心です。ドイツなど海外ではビーガン認証を受けたアルコール飲料も多く、ビオワインなどがその代表です。日本国内でも、メーカーに確認してビーガン対応かどうか調べることが重要です。
4. 加熱でアルコールを飛ばそう
そもそもアルコールというものは味付けのために使用するのではなく、香りや風味の引き立てや、臭み消しに使用することが多くあります。
たとえビーガン対応のアルコールを使ったとしても、調理する際はアルコール成分が料理に残らないように加熱して蒸発させるのが基本です。
アルコールの蒸発時に、風味や香りが引き立ち、アルコール分と一緒に臭みが蒸発し、料理の風味と香りが引き出されるという効果があります。
まとめ――ビーガンのより豊かな食文化のために
ビーガンという食生活は食べない物が多くて制限されたように感じる人は、アルコールも使えないと聞いて更に食を制限され自由を奪われたように感じる人もいるかもしれません。しかし、アルコールを使わないという選択肢を知ることにより、今までお酒があったことによって見えなかったものが見えてくるようになります。
お酒がどう食卓を支えていたのかを知り、料理でアルコールを使う意味や目的、更に代表品や他の調理法を知ることになり、逆に想像力が広がりかえって選択肢が広がるというメリットもあるのではないでしょうか。
何かを制限するという行為は敵を作ることではなく、その背景にあるものを理解するきっかけとなり、相手を仲間に取り入れるという差用があると思います。
お酒から遠のいた場所に立つことにより視野も広がり、お酒の世界の奥深さを知ることにもなります。正しい知識を得ればビーガンライフを豊かにすることも可能です。ぜひ、自分の想像力を膨らませ、より大きな可能性を模索してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コラム:法律上の話「お酒は食品じゃない!?」
酒類・アルコールは、農林水産省食料産業局が定める食品ラベルの法律である「JAS法」および「JAS規格」の対象外とされているため、アルコール飲料のラベルへの原料の表示については、JAS法の表記制度ほどは義務化されていません。(ただし、料理酒は食塩が含まれるため飲むためのお酒として利用されないことから、食品として扱われます。)
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