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2024JFL 第13節 レイラック滋賀戦マッチレポート

全員が勝つためにこの場所にいた、勝点3を求めて闘った、選手もスタッフもサポーターも。しかしそれでも勝利を掴めないのがフットボールの難しさであり面白さである。

あいにくの天候とコンディションだったが、試合の内容は悪くなかった。素晴らしいセットプレーからの先制点、そこから追いつかれるまでの時間はたった5分間、何度も何度もレイラック滋賀の攻撃を跳ね返してきたが、相手がギアを上げた5分間をしのぐことができなかった。前節の大分戦に続き、またしても先制し追いつかれてのドロー。13節を終えて6度目の引き分けで4位から5位に後退した。

試合を終え、ゴール裏サポーターのもとに歩いていくヴィアティン三重の選手たち。降りしきる雨の中、最後まで勝利を求めて闘った選手を迎えるサポーターたち。大人だけでなく、びしょ濡れの子どもたちも最前列に並んでいた。悔しさを隠せないいつもの顔ぶれ、そして雨の中の応援がただただ楽しかった子どもたちには笑顔も見える。その光景が悔しさを増幅させた。


第13節 スターティングメンバー

GK:21 松本
DF:2 谷奥・4 饗庭・19 児玉・30 篠原
MF:7 森主・18 大橋・24 池田・41 梁
FW:10 田村・29 加倉
SUB:1 森・17 野垣内・3 伊従・28 野口・8 瀬尾・9 大竹・11 木戸

スコア

ヴィアティン三重 1-1 レイラック滋賀
(前半:0-0 / 後半:1-1)

・47分 篠原 弘次郎(V三重)

ハイライト

大分戦、85分に追いつかれまたもドロー

第11節・Honda FC戦のレポートの冒頭でアウェイ・ソニー戦での結果に触れた。後半アディショナルタイムに追いつかれてのドロー。その悔しさから立て直してホームでHonda FCを相手に複数得点、クリーンシートで勝利、チームは波に乗っていくかと思われた。その翌週、アウェイでのヴェルスパ大分戦、前半は完全にヴィアティン三重ペースで試合が進み、前半終了間際に児玉のゴールで先制した。

先制ゴールを決めた児玉

しかし後半に入って大分がロングボール主体のサッカーに切り替え流れを掴む。受けに回る時間が長くなっていたがそれでもシュートチャンスは何度かあった。そして85分にミドルシュートを決められ追いつかれてしまう。時間帯こそソニー戦とは数分違ったが、同じように試合終盤に決められ勝点3を逃し、ソニー戦の記憶が蘇った瞬間だった。前後半あわせて18本ものシュートを放ったがわずかに1得点。相手GKのナイスセーブ、クロスバーを叩く惜しいシュート、何度もチャンスがあっただけに「あと1本決めることができれば…」誰もがそう感じた試合だった。

予報通り、雨のホームゲーム

大分から戻り、水曜日のチーム練習。輪になった選手たちに対して間瀬監督はこう言った「恐らく日曜日は雨だ。今週のホームゲームも、もしかするとその先も、良いピッチコンディションで試合ができるとは限らない。それを考慮したプレー、濡れたピッチにも負けない強いシュートを意識しよう。」そして木曜日にはラピスタのピッチに大量の水を撒き、雨を想定した練習もした。また、トレーニングの最後にはFW陣とそれ以外に分け、全員で時間を取ってシュート練習。「強くミートして枠に飛ばすことを意識しろ」「そしてコースとスピードだ」間瀬監督の大きな声が飛ぶ。これは大分戦後の会見で言っていたように「強いシュートを枠に飛ばしたヴェルスパ大分、何度もチャンスはあったのにそれができなかった我々には技術の差があった」に起因するものだろう。

そして迎えたホームゲームは予報通りの雨。前日から長い時間に渡って降り続いてはいたがピッチ上に水たまりはない。ともにJ昇格を目指すライバル、レイラック滋賀との一戦を待つサポーターたちは気合十分、試合前から雨をも乾かす勢いの熱を帯びている。13時には少しのあいだ雨が止み、滋賀ボールでキックオフ。

前半に迎えたチャンスは実らず

試合の入りは悪くない、前から積極的にプレッシャーをかけ闘う姿勢を前面に出す選手たち。お互いに中盤を省いたボール運びで相手ゴールを狙う中、29分に最初のチャンスを迎える。滋賀陣内で相手のパスを引っ掛けた梁が左サイドから相手ともつれながらボールを強引に運ぶ、ボックスに入ったところで体勢を崩しながら中に折り返す、中央に走り込んだフリーの加倉、絶好のチャンスに迷わず左足を振る。しかし相手GKの好セーブに阻まれてしまう。

最初の決定機は相手GKに阻まれる

32分にもピッチ中央付近でボールを持った梁がドリブルで運びそのままミドルシュート。枠に飛んだ強烈なシュートだったがここも相手GKに弾かれてしまう。39分には最終ラインの谷奥から絶妙な縦パスが入り田村がフリックしてスペースに流す。それを受けた加倉がゴール前にドリブルで運び自ら打つかと思われたが左サイドから駆け上がった児玉にパス、流れながら左足で狙った児玉のシュートは大きく枠を逸れた。

左サイドから狙う児玉、惜しくも逸れる

後半早々に先制点、しかし5分後に失点

後半開始早々の47分、相手陣内でフリーキックを獲得。このところプレースキックが好調な梁、前半もコーナーキックから良いコースのボールを放り込んでいただけに期待がかかる。児玉と少し言葉を交わしボールを置き息をつく。そして右脚を振り抜き高いところから落ちてくるボールを入れる。ニアサイドに田村と加倉、中央には長身の谷奥と饗庭、そしてファーサイドに篠原と児玉が走り込んだ。見事な弾道で落ちてくるボールに合わせたのはファーサイドで完全にフリーになった篠原、しっかりとボールを見て頭を合わせゴール左隅に叩き込んだ。ヴィアティン三重が先制。

完璧なボールに完璧に頭で合わせた篠原

ここから滋賀が勢いをもって畳み掛ける。勝負どころを知っているというのか、ゲームの流れを呼び戻すためにも相手の得点直後に押し込んでくる滋賀、それをゴール前で必死に跳ね返すヴィアティン三重の選手たち。そして52分、相手のコーナーキック。ゴール前には森主を除く9人が入りゾーンで守る。蹴り込まれたボールをニアで梁が跳ね返しクリア、そのボールはボックスの外・正面で待ち構える滋賀・小松のところへ。完全にフリーになっていた小松はダイレクトでミドルシュートを放つ。ゴール前に詰めていた9人はシューターにプレッシャーを掛ける間もなく、しっかりと押さえて強くミートしたボールは密集をすり抜け、ゴール右隅に突き刺さった。同点。

先制から5分後の同点ゴール

その場面を見てトレーニングでの間瀬監督の言葉が頭をよぎった。「強くミートして枠に飛ばせ、そしてコースとスピードだ!」滋賀の同点ゴールはまさに間瀬監督の言うそれだった。

その後もチャンスに決めきれない

すぐに追いつかれてしまったが再び積極的なプレーで相手ゴールを目指すヴィアティン三重の選手たち。鬼神のごとくピッチを駆け回る梁賢柱、中盤で相手ボールを絡め取る燃える闘魂・森主麗司らを筆頭に全員が闘争心を弱めることなく滋賀の選手たちに立ち向かう。目まぐるしく攻守が入れ替わる展開が続くが集中を切らすことはない。交代で入ってくる選手らもポジションや持ち味を超え「闘う気持ち」を前面に出してプレーする。勝ち越し点を奪うために全員が一体感を持ってピッチに立っていた。

3バックの左でフル出場が続く饗庭

61分には自陣でボールを奪いワンタッチプレーでつなぎ森主から前方のスペースへ素晴らしい浮き球のパス。スペースへ走るのは児玉、しかしゴール前で切り返すとわずかに脚を滑らせて体勢を崩す。そこへ滋賀のDF陣が追いつきクリア。85分には野口と梁が身体をぶつけながら奪い、繋いだボールを大竹が落としたところへ森主が走り込んでシュート、しかし強くミート出来ない。飛んだコースは良かったが相手GKが触って枠を逸れた。

森主のシュートもGKに阻止される

アディショナルタイムにはカウンターから抜け出した野口がファールを受け相手陣地でフリーキックを獲得、キッカーはもちろん梁。ゴールまでは30mを超える距離。鋭い眼差しでゴールを見る。90分フルで闘い続けた梁が右脚を振り抜く。しっかりとミートして強く押し出されたボールは重いピッチも雨も関係なく鋭い弾道でゴールに向かう。しかしGKの正面、一度弾いてキャッチされてしまう。

後半AT、梁の力強いFK

そして試合終了のホイッスル。ヴィアティン三重の怒涛の攻撃を防ぎ切り揃ってひざまずく滋賀のDF陣。そしてピッチに崩れ落ちる梁。勝利のために力を出し尽くし、立つこともできない。

全てを出し尽くした梁

今季6度目の引き分け・勝点1、そのうち栃木戦(0-0 スコアレスドロー)を除く5試合が先制して追いつかれてのドロー、悔しさが募る。前節の大分戦同様に何度もチャンスを作りながら追加点を奪えなかった。チームとしての連携は良くなってきているだけに「もう1点取れさえすれば…」の思いが強くなる。

勝ち切ることはできなかったが、サポーターからは変わらない声が選手たちに贈られた。むしろこれまで以上にアツく想いの籠もったエールが贈られた。その言葉を受け止めた選手たちが悔しさを噛みしめる。サポーターの前から去る時の梁は悔しさだけではない悲痛な表情を見せていた。悔しさを堪えきれなかった森主は、目頭を押さえながらサポーターの前を去った。

今そこにあるフットボールを楽しもう

悔しい気持ちを書きすぎた。悔しいことには変わりはないが負けたわけでもなければシーズンが終わったわけでもない。雨の中で大はしゃぎしながら目の前のヴィアティン三重のゲームを楽しむ子どもたちの写真を見て気付かされた。試合後の選手お見送りで笑顔で選手にサインを求める子どもたちを見て気付かされた。

今そこにあるフットボールを楽しまなくてどうする。

「優勝・昇格」は揺るぎない今シーズンの目的だ。それはシーズン30試合終えた時に決まることで、1試合1試合を積み重ねた先の話である。目的を達成するための厳しさ、激しさが必要なのは当然のこと。しかし僕たちは目の前のフットボールを楽しみ、全力でパワーを送り選手たちを後押しする。選手たちはそれに応え、僕らを楽しませる。結果はもちろん大切だけれど、それと同じぐらい楽しむことも大切。

JFL最強サポーターであると同時に、JFLで最も楽しんでるサポーターでありたいし、JFLで最も楽しいホームゲームを目指したい(我々メディアスタッフもある意味サポーターのひとりだと思っている)。勝負の世界なのにあまいと言われるかもしれないが、それとこれとは別の話。悲壮感を前面に出してチームが強くなるわけでもない。それは筆者の責任で強く主張したい。(公式noteですがサポーターに近い立ち位置での主張をご容赦ください。)

次節は2位につけるFCティアモ枚方とのアウェイゲーム。負けていい試合がひとつもないのと同様に、楽しまなくていい試合もひとつとしてない。近距離アウェイの枚方へ乗り込んで選手たちを後押ししよう。

田村翔太選手・JFL通算100試合出場

公式記録

試合後コメント・フォトギャラリー


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