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土台人(トデイン)1

あたしは、狭い四畳半を見渡してタバコをくゆらしていた。
「この中百舌鳥(なかもず)のぼろアパートがこれからあたしの家になるんや」

なぜかというと、あたしが北鮮の工作員に「土台性」を認められ「土台人(トデイン)」に選ばれたからだ。
※土台とは北朝鮮の工作員が日本に潜入しやすいように下地を作る、文字通り日本で「土台」となる在日朝鮮人である。それなりの日本での地位や能力(土台性)がないとなれないのだ。

そして、ここに住むように命じられた。
相方の李鐘吉(イ・ジョンキル)と一緒に。
任務は短波放送で暗号を受信して、工作活動をするわけだ。

工作活動には拉致と諜報と送金がある。

あたしは、ずいぶん前から日本の暴力団構成員の愛人になっていた。
それを北朝鮮工作員に買われたらしい。
あたしの祖父母が本国(北朝鮮)にいるんで、それを人質に取られた寸法で、協力しないわけにはいかない状況に追い込まれてしまった。
土台人に選ばれるなんて名誉でもなんでもない。
命の危険さえ負わされるのだから。

ジョンキルがソニーのラジオで何かをしきりに受信している。
あらかじめ本国から送られてきた乱数表のつづりと諺文(オンモン:ハングルの五十音みたいなものか?)表に照らして復号に一生懸命だ。
モールスで数字ばかりを打ってくる放送があるのは、暗号放送なのである。

「姐さん」
「なに?」
あたしはタバコをアルマイトの灰皿に押し付けて消すと、彼の書き取ったメモを読んだ。
「福井かぁ。たぶん三国海岸で拉致るんや」
「おれ、大将に言うてきます」
乱数暗号を復号して、朝鮮語に直してあった。
彼は、なげしにエナメル銅線を張って、受信用のアンテナにしていた。
「ラジオの製作」とかいう、日本の雑誌を講読してその辺の情報をジョンキルが得てくれているのだった。
ジョンキルが濃いグレーのジャンバーを羽織って、あわただしく出て行った。
大将とは蒲生譲二のことだ。

さっきも書いたように、あたしは蒲生の愛人になっている。
蒲生は指定暴力団「琴平会(ことひらかい)」の会頭で、関西のパチンコ業界に深く入り込んで北鮮の金策に貢献していた。
見返りは「ヤク」だったと言っていた。
彼は今も琴平会との若頭(わかがしら)として、とはしょっちゅう会っていると言っていた。

八重洲無線の短波受信機「FRG-7」の箱をテーブルにして、あたしは手紙を書いた。

「あたしは、無事です」で始まる、横山尚子(なおこ)への手紙。
尚子とは「なおぼん・きんちゃん」と呼び合う親しい仲だった。
突然、彼女の前から消えなければならなかった事情を、どう書いたらよいだろう。
正直に書いたら、工作員に睨まれ消されかねない。
なおぼんは、この「FRG-7」を快く譲ってくれた。
なんの疑いも無く。
彼女は日本のアマチュア無線家だった。
電気のことに詳しい女の子でとても頼りになった。
高校時代はマンガの貸し借りで親しくなって、大人になって飲み友達として、意気投合した。
大学も地元の工学部に進んだ彼女だ、拉致して本国に紹介したらさぞかし、ほめられただろう。

でもそれはできない相談だった。
親友を売るなんて。

蒲生の背に飛龍の刺青が浮かび上がる。
あたしは、彼に抱かれて寝る。
「おまえのフェラは最高やな。そこらの風俗店のねえちゃんとは雲泥の差や」
「お褒めにあずかって光栄やわ。譲二ちゃん」
譲二の男根は、黒々としていて、磨きこまれた漆器のような光を帯びていた。
「ああ、気持ちええ」
「んぐ、ん・・・」
亀頭を舐め、カリを舌先でなぞり、唇で先端を吸い、先走りの汁を絞る。
そして、首を大きく動かしてディープスロートを披露してやった。
「おう、アキ、もうやばいから・・・」
こわもての譲二が早くも白旗を出す。

「ふふふ。じゃあ、あたしにちょうだい」
そう言って、お尻を突き出してやる。後ろから攻めてもらいたいのだ。
「バックか。好きやのう。ワンちゃんスタイルが」
尻の肉が割られ、譲二のカリの出張った亀頭があたしをえぐる。
「うあっ。ひっ。きっつぅ」
「どや。おれのちんぽは」
「たまらんわ。ああー奥まで入ってる」
「長いからな。おれのは」
ゆっくり、ずぶずぶと肉が押し込まれた。その硬さといったら・・・
「よう、締まるわ。アキのおめこは処女みたいや」
「いっつもそんなこと言うて。あたし今年で三十五やで」
「ほうか。もうそないなるか」
引いては返す、波のような攻めにあたしは喘ぐ。
ぐりぐりと譲二の肉の棒がその複雑な表面をあたしに刻み込む。
らせんの様なねじりを加えられ、あたしの胎内まで雌ネジを切られたようにねじれる。
だんだん早く、譲二が突いてきた。
「あん、あん、だめ、だめだめぇ」
「おお、いくで、いくで、いくいくいくぅ」
中に大量に放って、譲二は抜けた。
四十を越えてまだこの硬さ、この量、譲二は半端ない男やった。


あたしは、きんの(昨日)の晩のことを思い出していた。
「あ、そや、手紙書いてたんやった。なおぼんどうしてるやろ?」
いつの間にか外は雨になっていた。
「ジョンキルは傘、持って行ったんかな?」

そのうち、ジョンキルとも寝ることになるんやろな・・・
「同胞のちんぽは、どんなやろ・・・」

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