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真夏の夕暮れの森にて~バッハ無伴奏チェロ組曲第6番

こんにちはおはようございますこんばんは。

笠木颯太です。

早くも第2回更新です。

話したい事がたくさんあるのでしばらく更新が頻繁になるかもです。

今回は、これを書いている今は実技試験前ということで、せっかくなので、試験で弾くバッハの無伴奏チェロ組曲第6番にまつわる話をしたいと思います。


チェロ一年目が旅先でバッハに出会ってみたら

 バッハの無伴奏チェロ組曲が自分にとってかけがえのない作品だと言うチェロ弾きの方は多いかと思いますが、もちろん僕もそのうちの一人です。僕はバッハの無伴奏チェロ組曲を聴くと、どうしても真夏の森を想像してしまいます。それは、この曲たちに出会った時の事が今に大きな影響を与えているのかもしれません。
 まだチェロを始めて一年も経っていなかった頃でしょうか。たまたま母とチェロの話になり、そこで母が差し出してきたのが、バッハの無伴奏チェロ組曲のCDでした。(ちなみにハインリヒ・シフさんの演奏でした。)ちょうどその時軽井沢への家族旅行を控えていたので、そこで全曲聴いてみようということで車でそれを聴きながら旅をしました。その時の景色と音楽の一体感が余程気に入ったのでしょう、それ以来、毎夏自然豊かな場所に旅行に行く時はバッハの無伴奏チェロ組曲をお供にするのが自分の中で恒例となっています。その曲に出会った時と何かのイベントが重なると、自然とリンクされていくのかもしれません。似たような話を初回の投稿でもしましたが。

バッハ6番と夕暮れの森

 その中で、今研究中の第6番は、僕の中では「夕暮れの森」というイメージを勝手に持っています。6番は最後の無伴奏チェロ組曲でCDトラックも最後の方である事が多く、毎夏の旅の時には夕暮れ時に流れる事が多いため、自然とそのようなイメージがこびりついているのかもしれません。それだけではなく、その時の景色と曲が非常にいい感じにマッチしていて、その空間に浸るのがとても好きなのです。
 バッハの6番って、なんかこう、D-durなんだけどどこかに感傷的な何かを秘めている気がするんです個人的に。わかる人いるかなー笑。華やかなんだけど、心の奥底で何かに思いを馳せている感じ。例えばプレリュードの高音部分の見上げる感じや、サラバンドの後半の一歩ずつ足を運んでいく感じなどに、特にそういった印象を受けます。とても感覚的な言葉でわかりにくいと思いますが、こういった感覚的イメージに、感傷に浸りやすい夕暮れ時と重なる部分があり、バッハの音楽の勝手なイメージである真夏の森と合体して、その結果偶然「真夏の夕暮れの森」と「バッハ無伴奏チェロ第6番」とが繋がったのでしょう。

あれから十数年

 今まで聴くのは大好きなバッハ6番ではあっても、バッハ無伴奏チェロの中で唯一5本の弦のために書かれているため演奏するのは難しいという噂ばかりを鵜呑みにし、弾くところまでなかなか踏み出すことができていませんでした。しかし5番まで研究を経験して、残すは6番だけとなった今、実技試験という機会にようやくこの6番に足を踏み入れることができました。十数年前の自分にこれを報告したらきっと彼は喜ぶでしょうね。いつか演奏したいという思いはずっとありましたから。
 実際に弾いてみると、まあ噂通り確かに難しいです。まず最初からやることがたくさん。最初のDの発音の仕方にも工夫が必要だし、押さえるDと開放弦のDとのバランス、fとpのキャラクターに差をつける、等々。更に曲が進むと、いつもと違う指の拡げ方、他の5曲にはない高音の音のとりづらさなど、5弦のための作品だからこそ発生するハンデに度々悩まされます。しかし、意外とそれ以外は他の5曲とやることはほぼ変わらないように感じます。バッハ特有の複雑な和声感を感じること、実際に音に出さないけどその空間の中で鳴っている音を感じること、その作品にしかない個性を発見し、それを全面に出すこと、等々。これらを研究するのは他の5曲でもやっていることなので、割と練習する時はいつも通り、という感じでやっています。
 また、弾いてみて改めて感じたのは、何よりも曲の響きが美しい!おそらく他の5曲に比べると、和声に濁りがなくより洗練されている気がします。まだ全曲触れている訳では無いので何とも言えませんが、他の5曲では印象的にあったきつい非和声音のぶつかりや不協和音も、無いわけではもちろんないけれど6番ではそれよりも響きの純粋さが目立つように思います。曲中に度々現れるゼクエンツ等を弾いてみれば、それが本当によくわかります。ゼクエンツの過程で現れる和声がものすごくシンプルなのです。
 そういった、この曲の持つ洗練さを十分に引き出せるような演奏方法を引き続き探っていき、本番でも前述のようなこの曲の良さを存分に出せるように楽しみたいと思います。


ひゃ〜試験まであと少し、思い浸るのはこの辺にしといて練習しなければっ!!

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