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かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #6

「不安にさせてごめんね、そんな浮気とかするわけないよ!あなた以上の男の人なんていない!」

かつて夫を推していた私は、夫が冗談で浮気を疑ったときに、全力でこう答えていた。

そんな夫も、今や無職歴4年を極め、20キロも増量したリビングの主。

もちろん、私の口から冒頭の少女漫画なセリフは、1ミリも飛び出すことはなかった。

代わりに「私さ、仕事しかしてないのに、なんで浮気とか疑えるんかな?」と半笑いで答えた。

しかし私は言葉とは裏腹に、心で泣いていた。

夫に「優しくできない=推せなくなった」という現実が悲しかった。

こうして毎日心が擦り減っていく中で、とうとう私にも限界が来た。

「このまま働き続けると、心が壊れる」

そう感じた私は、意を決して夫に話をした。

「来月までに仕事を見つけてくれないなら、もうこの家、売って別居しよう」

もちろん例のごとく、夫はふてくされる。

「来月になったら、仕事探すから」

その言葉を聞いて、私は悟った。

「あぁ、私の推し様、今までありがとう」


人生初めての「推し活の卒業」が悲しくて、眠れなかったその日の夜。

私は完全に虚無化した頭で、スマートフォンのリール動画を観ていた。

暗闇の中、空っぽの頭の中を早く情報で埋め尽くしたくて、ひたすら画面をスワイプしていた。

…が、そこで出会ったのである。

いや「出会ってしまった」というほうが正しい。

画面から聞こえる声を聴いた、その瞬間から、私の身体は忙しくなった。

跳ねる鼓動が、ザワザワする耳が、震える瞼が、とにかく忙しい。

これが「新たな推し」と「私」の出会いである。

#7に続く

みなさまの「いいね」が励みになります♡(*‘ω‘ *) ライター:あやはる 





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