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人間のすべてが「嵐が丘」にはある~ブログより再録 & 推し活

すっかり秋も深まってきましたね。
空気が澄んで、部屋の窓から富士山を遠くに臨める朝も増えてきました。

10年余り投稿を続けた「ウェブリブログ」が2023年1月に閉鎖されることになったのを機に始めた、このnote。ブログに投稿した記事の中から、投稿から間をおいても、しばしば閲覧されている記事をさかのぼってピックアップし、再録しています。

2021年6月28日付けの投稿 人間のすべてが「嵐が丘」にはある をお届けします。

以下、再録

三浦しをんさんの「きみはポラリス」を読みました。
とても素直に、心にすっと入ってくる短編集です。
恋愛が共通テーマのようですが、恋模様の色合いが様々で、飽きずに読み進められます。

中でも「骨片」が印象に残りました。
現代より暫く前と思われる時代の文学専攻の女子学生が主人公で、文学を愛する恩師とのやりとりや、家族、主に病に伏せる祖母との関係がこまやかに描かれます。
大学を卒業後、家業のあんこ屋を手伝う予定の主人公。
卒業式後、去りがたい思いで恩師の研究室に屯する学生たちの中で、大学を出ても家業を手伝うしかない自分を恥じる心持ちでいるところに、卒業後どうするのだったかと恩師に問われます。

「家業を手伝いますの。(中略)明日からは餡をこねるのです。(中略)文学とも、ましてや国の発展とも関係のない毎日で…」
(中略)
「私も国のためになるようなことはしたことがないな」
と先生は言った。
「(中略)文学は確かに、餡をこねること自体には必要ないものかもしれない。だが、餡をこねる貴女自身には、必要という言葉では足らないほどの豊穣をもたらしてくれるものではないですか。(中略)
私たちは一緒にブロンテ姉妹の作品を読みました。蒔田さんは特に、『嵐が丘』についての熱心な発表をした。(中略)
あの作品の舞台は、荒野とそこに建つ二軒の家しかないと言っていいでしょう。だがその世界を狭いと感じる人がいるでしょうか。
いや誰もいない。そこにはすべてがあります。
愛と憎しみが、策謀と和解が、裏切りと赦しが、その他ありとあらゆる、人間のすべてが嵐が丘にはある。」
先生はそう言って、私たちをゆっくりと見回した。
「君たちはそのことを、よく心に留めておかなければいけません」

私は文学部出身ではありませんが、読書は好きです。
文学の持つ力、というものに改めて思いを馳せる一節でした。

本には、個々人の好みにあうあわないが当然ありますが、ある程度の量を読んでいると(数打ちゃ?)、結構「当たり」を引き当てられるものです。
体を動かす方は嫌いで、運動の習慣は、ほぼありませんが、読書の習慣は今後も大切にしていきたいと思っています。

以上、再録終わり

そんなわけで、読書の習慣は長らく続いています。
最近の「当たり」は…
厳密には本ではないかも?ですが、この秋発行された音楽之友社のムック本「フィギュアスケートと音楽」です。
元フィギュアスケーターで、現在はスポーツ科学研究者、國學院大學助教である町田樹さん監修し、かなりの部分を執筆。
・振付から選曲、実演までどのようなプロセスで作品が生まれるのか、音楽と滑りの調和とは何か、今季のルール改正のポイント、採点基準の考え方などの解説
・演技鑑賞術、音楽ジャンル別の名プログラムの懇切丁寧な紹介
・反田恭平さん、福間洸太朗さん、原田慶太楼さんが、それぞれ町田さんと興味の尽きない話を繰り広げる、3本の豪華対談
と、盛りだくさんの内容が詰め込まれています。
フィギュアスケートと音楽の、深く豊かな関係を多角的に掘り下げた力作で期待以上に楽しめる一冊でした。

シニアのグランプリシリーズ開幕と共に、フィギュアスケートのシーズンが本格的に始まり、ファンにとってはワクワクドキドキの季節です。
推しの選手たちの渾身の演技に、人間性豊かな言動に、リアルタイムで触れられる幸せをかみしめつつ、推し活に邁進したいと思います。


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