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映画『パリタクシー』いい笑顔に会えます♪

フランスの歴史と今に、凛としたお洒落エッセンスがまぶされた一本。
ちょっと風変わりなロードムービーでもある…
そんな映画『パリタクシー』を観ました。

以下、ネタバレあり です。

パリタクシー ポスター


薄給、無休、免停寸前……と人生詰んでいる無愛想な40代半ばのタクシー運転手・シャルルがある日乗せた客は、一人暮らしの家から介護施設に移るという92歳のマダム・マドレーヌ。彼女は、施設に向かう前に寄り道してほしいと、これまでの人生を辿る思い出の地をリクエストする。当初は渋々応じていたシャルルだったが、マドレーヌが問わず語りに明かす身の上話の驚きのエピソードや、言動から垣間見える彼女の人柄・心意気に、いつしか惹き込まれていく。わずか数時間程の「終活の旅」によって、二人の間にはかけがえのない絆が生まれていた。夜になり、シャルルはマドレーヌを無事介護施設に送り届ける。そして…

予告編を見た感じ、『ドライビング・ミス・デイジー』の様なヒューマン・コメディか、『舞踏会の手帖』風「青春の思い出の振り返り」かなと思っていたので、予想外に壮絶なマドレーヌの人生と、全く知らなかったフランス社会の闇に驚かされました。

ナチス占領下のパリでの蛮行、連合国軍による解放、妻子あるアメリカ兵との恋と別れ、DV夫との確執、女性の人権が蔑ろにされていた1950年代の裁判、ベトナム戦争、女性の人権運動
パリの街並みの美しさと、それとは裏腹な人心の荒廃……

文字にするとかなり重いですが、映画ではマドレーヌの淡々とした語り口とユーモアも時折交えた抑制的な描写によって、過度に煽られることなく見ることができます。
一方で、二人の心がほぐれ友情が育まれていく過程は、表情やちょっとした仕草、エピソードで丁寧に描かれていて、気持ちのいい演出でした。

観終えてみて、パリの街の美しさとマダム・マドレーヌのピンシャンとした立ち居振る舞いの清々しさが、とても強く心に刻まれる作品です。

シャルル役ダニー・ブーンはフランスの国民的コメディアンで、マドレーヌを演じたのは、女優、社会活動家としても知られる94歳の現役シャンソン歌手リーヌ・ルノー。この二人、リーヌがダニーを「私の息子」と公言している程の仲良しだそうで、本作で二人がたびたび見せる「いい笑顔」もむべなるかな!

「ひとつの怒りでひとつ年をとり、ひとつの笑顔でひとつ若返る」

「美しい旅路(映画の原題:Une belle course)だった。
 あなたは旅に出なさい。『みにくいアヒルの子』のままでいいから。」

うろ覚えですが、これらの台詞が印象的でした。
「人生、捨てたもんじゃない」と思える、素敵な一本です。


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