今後の中国への投資妙味

中国株が安い。コロナ後の伸びを打ち消したばかりか、2018年末に貿易戦争が激化した当時の水準に近づこうとしている。中国共産党中央部の習近平氏が3期目を迎え、周辺人事をイエスマンで固めたことで、株価が暴落したことは記憶に新しい。

香港株6%安、14年ぶり下落率 習新指導部に「NO」

日経電子版

3期目に入った習近平体制の下で、毛沢東的な社会原理主義がさらに進められる懸念、とりわけロックダウン政策の継続とIT企業への制裁的な規制の強化が投資家のリスク回避姿勢を強めている。


CSI300指数はコロナショックの水準を下回った

ここで重要なのは、リスクが価格に十分に織り込まれたならば、そのリスクを取ることのペナルティは小さくなるということである。つまり、中国株は割安か否かを判断する価値があるということだ。

実際、アリババやテンセント、JD.com、美的のようなテクノロジー企業は、中国にリープフロッグとも呼ばれる社会の飛躍的発展をもたらした。中国では日本が直面している社会の既存インフラ(例:オンプレミスのサーバや銀行支店網・ATM網)のジレンマを飛び越え、デジタルで動く社会が実現している。

デジタル経済がGDPに占める割合は、2011年の20%から2020年には38.6%まで拡大した。

福本 智之
中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス 169ページ

この間に中国のGDPが6兆ドルから15兆ドルまで増加していることを考えれば、デジタル経済が生み出した富は驚異的である。
習近平も、IT規制を極端に進めることで中国のIT産業の競争力が失われることは望んでいない。中国語でイノベーションを意味する創新も中国政府が進める重要施策の一つである。上述の福本氏のように、アリババやテンセントへの規制は、米国でGAFAに対して議論されている独占禁止法の適用と同じ文脈でとらえるべきとする意見もある。

つまり、投資家として思考するべきは、中国がこれからどうなるかよりも、「中国の政治リスク、人口動態、それに対するこれまでの経済発展を天秤にかけた場合、いくらでならリスクを取る価値があるか」であろう。
(筆者が務める大企業の経営者は、直ぐに経済安保だの中国リスクだのを持ち出して、あたかも中国の未来がさも暗いかのように話す。中国での事業はいまだに大きいというのに。)
上に対する筆者の回答は、マクロ状況から鑑みて今は少しずつ、例えば予定するエクスポージャーを1%ずつ毎月積み立てるというものである。筆者は、日本企業のような上に行くほどアホばかりのサラリーマン組織よりも、中国といえど創業者に率いられた企業の方が投資妙味があると考えているし、これまで中国企業が成し遂げてきたリープフロッグは、海外にも輸出できると考えているからである。実際、テンセントやアリババは東南アジア・インドの新興企業に多額の出資をしている。

結論として、健康について云々語るよりも体重と食生活を見ればわかるように、投資家なら評論を聞くよりポートフォリオを開示するだけでいい。筆者としては、今の価格で少しずつ買い進め、相場が上がれば利確し、暴落すれば強気になる予定である。


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