漫画原作「俺に(溺)愛される覚悟はいい?」第2話
◇第2話◇
○一軒家・芽郁の部屋(朝)
芽郁(ほとんど眠れなかった)
芽郁の目はギンギン、うっすらとくまがある。
コンコン。
芽郁「は、はい!」
慌ててベッドから起き上がる芽郁。
磯山「芽郁ちゃん、おはよう」
芽郁「磯山さん、おはようございます!」
磯山「顔色良くないね。もしかして、体調悪い?」
芽郁「いえ全く!ただちょっと寝不足なだけで」
磯山「昨日頑張ってたもんね」
芽郁「違和感とかありませんでしたか?その……」
磯山「最初はちょっと表情が硬かったけど、途中から切り替えられてたから大丈夫よ。誰も芽郁ちゃんと十和が付き合ってたなんて思わないわ」
芽郁「ちょ、磯山さん……!」
磯山「あら、ごめんなさい。この場では禁句だったわね」
芽郁(磯山さんは私の期間限定マネージャー。彼女がなぜ私と十和の交際について知っているのか。それは私が子役として活動していた頃の担当マネージャーが磯山さんだったからだ。現在は十和の所属している事務所に移ったらしい)
週恋では男性芸能人が所属している事務所のマネージャーを一人貸し出す形で、ヒロイン役のマネージメントにあたる。
週恋が始まる前に食事に行った芽郁と磯山。
磯山は子役時代、芽郁に彼氏がいた事をしっている。そこで芽郁は磯山に昔付き合っていた彼氏が十和だと話した。
磯山「今日の撮影も頑張ろう!終ったら2人で打ち上げもする?」
芽郁「やったぁ!それを楽しみに頑張ります」
磯山「じゃあ、早速今日の課題を確認しようか」
苦笑いを浮かべる磯山。
芽郁「?」
○1階と2階を繋ぐ階段(朝)
ハンディカメラを持って、1階へと下りる芽郁。
○(回想開始) 数分前
磯山「課題:3は芽郁ちゃんが十和を起こすこと。だから、撮影は芽郁ちゃんが十和を起こしに行くシーンからね。十和には事前に説明してあるから」
○(回想終了)
芽郁(磯山さんはああ言ってたけど、本当に大丈夫なのかな。私に起こされて機嫌悪くならない?)
○十和の部屋の前
芽郁「えっと、おはようございます。私は今、十和くんの部屋の前にいます。課題:3に従って今から十和くんを起こしたいと思います!」
ドアを開けて寝ている十和を発見した芽郁。
後ろにはカメラマンもついてきている。
田村が芽郁にカンペを出す。そこには《可愛く起こす》と書かれていた。
芽郁(可愛く起こすって何……!?)
芽郁「ぐ、ぐっすり寝てますね。でも課題には従わないといけないので起こしちゃいます。ごめんね、十和くん」
芽郁なりの可愛さアピール。
芽郁「十和くーん、朝だよ」
芽郁「十和くーん」
十和「んんっ」
田村《彼女目線になるように、しゃがんで!》
しゃがむ芽郁。
十和「んっ、もう朝か」
十和は寝ぼけた様子で芽郁の頭をなでると、顔を近づけてきた。
芽郁「と、十和くん?寝ぼけてるの!?ストップ」
十和「あれ?芽郁ちゃん?」
うっすらと開いた目で芽郁のことを見つめる十和。
十和「やっべ、寝ぼけて愛犬と勘違いしちゃってた」
十和(こういうお決まりのが受けいいんだよな)
芽郁「び、びっくりしたよ〜」
芽郁(勘違い?嘘っぽいんですけど)
十和「ごめん、朝はいつも愛犬が起こしにきてくれるから」
芽郁「そうなんだ、賢いんだね」
十和「てか、なんで芽郁ちゃんが俺の部屋に?」
芽郁「今日の課題でーす」
十和「え、そうだったんだ」
芽郁が起こしに来ることを知っていたのに驚く十和。
芽郁「驚いた?」
十和「めちゃくちゃ驚いた!」
芽郁(さすが俳優。演技がお上手なことで)
芽郁「あとね、課題ノート持ってきたから一緒に見よう?」
十和「うん。隣、座りなよ」
芽郁「し、失礼します」
隣に腰を下ろした芽郁は課題ノートをめくった。
十和「えーっと課題:4はデートへ出かけましょう。行き先は来週オープン予定のあの場所だって」
芽郁「あの場所?」
十和「ここにヒントっぽい絵が描いてある」
十和が指差す先には観覧車とジェットコースターらしきイラスト。
芽郁「もしかして遊園地のことかな?」
十「ああ、なるほど。そういえば話題になってたな。じゃあ、準備しよっか。着替え終わったらリビングに集合で」
芽郁「わかった」
先に部屋から出ようとした十和がドアを開けて振り向く。
十和「あ、言い忘れてたことあった」
芽郁「ん、なぁに?」
十和「おはよー」
芽郁「そういえば言ってなかったね、おはよう」
十和「あともう一つ」
芽郁(まだ何かあるの?)
十和「芽郁ちゃんすっぴん“も”可愛いね」
その言葉を残して洗面所へと消えた十和。
ベッドから立ち上がろうとしていた芽郁は顔を赤らめながら、よろよろとベッドに座り込む。
芽郁(もしかして、十和の言う甘やかし同棲ってもう始まってる!?)
○遊園地・売店の前 (昼過ぎ)
オープン前なので一般客はいない。
先に軽い打ち合わせ。
曽根「カメラマンは少し離れた場所から撮影するから、2人はテレビだってことを忘れてデートを楽しんで。十和くんがリードしてあげてね」
十和「任せてください」
曽根「芽郁ちゃんは純粋に楽しむ感じで。十和くんに任せてたら安心だから」
芽郁「……はい」
芽郁(不安しかない)
○遊園地・入口
撮影開始。
芽郁「貸し切りなんて初めてだからドキドキする。十和くんは何が好き?」
マップを見せながら十和に問う。
十和「芽郁ちゃんが好き」
突然の告白にキョトンとした顔する芽郁。
数秒後、何が好き?の問いに対しての答えだとわかり顔を赤くする芽郁。
芽郁「も、もう、乗り物の話!」
芽郁(演技ってわかってても心臓に悪い)
十和「乗り物もいいけど、遊園地に来たらまずはあれでしょ」
芽郁「あれ?」
○お土産売り場
芽郁「かわい〜!さすが十和くん、何でも似合うね」
猫耳を着けた十和を見ながら拍手する芽郁。
十和「いやいや、俺じゃなくて芽郁ちゃんの可愛い姿が見たいんだけど?」
十和「ほら、これなんて芽郁ちゃんに似合いそう」
十和は別の猫耳を芽郁に着ける。
芽郁「私は似合わないよ」
十和「どこが?めちゃくちゃ似合ってるけど?」
近くにあった鏡に芽郁の姿が映るよう、芽郁の肩を引き寄せる十和。
十和「ね?可愛いでしょ」
芽郁「ね、猫耳がね!可愛いね」
可愛いという動揺する芽郁。
十和「そういうところも可愛いよ」
芽郁「十和くん、可愛いの安売りし過ぎ」
十和「芽郁ちゃんが可愛いから仕方ないじゃん」
芽郁(と、止まんないね!?甘い言葉が。これが甘やかしという名の嫌がらせか……)
○遊園地・売店
芽郁(疲れた)
十和の甘々攻撃に疲れ切った顔をする芽郁。
そこへ磯山がやってくる。
磯山「芽郁ちゃん疲れたでしょ。これでも飲んで元気出して」
テーブルの上に『ナタデココア』を置く磯山。
ナタデココアはココアにナタデココが入ったもの。
芽郁「これ、私の好きなやつ!最近はあまり見かけないんですよ。磯山さんも好きなんですか?」
磯山「ううん、私は初めて見た。実はこれ十和が選んだの」
芽郁「……そうなんですか」
芽郁(もしかして私が好きなの覚えてて?)
磯山「ところでそれ美味しいの?」
芽郁「私は好きです」
磯山「私“は”ね」
芽郁の言葉であまり美味しいものではないんだろうなと思う磯山。
休憩が終わり、撮影再開。
○観覧車の前 (夜)
曽根「最後はやっぱり観覧車だよね!撮影はこのハンディカメラでお願い」
十和はスタッフと話していたため、芽郁にハンディカメラが渡される。
芽郁「わかりました」
向かい合わせで座る芽郁と十和。
芽郁は十和と夜景をカメラで撮るが突然カメラが真っ暗になる。
芽郁「あれっ?」
十和「どうかした?」
芽郁「カメラが動かなくなって」
カメラを確認する十和。
十和「バッテリー切れだな」
カメラが動いてないと知り素に戻る十和。
芽郁「どうしよう」
十和「俺らじゃどうしようもできねぇよ。下についたらカメラ交換してもらって、もう一周すればいいんじゃねーの」
芽郁「そっか」
十和の言葉にホッとした芽郁だが、撮影への不安がなくなった瞬間、今度は十和と2人きりの空間に不安を覚える。
その時、十和が芽郁の隣に座る。
芽郁「な、何」
十和「隣に並んで座る絵もほしいって言われてただろ」
芽郁「そうだけど、カメラが動いてないんだから意味ないでしょ」
十和「後ろのゴンドラに乗ってるカメラマンのカメラは動いてるから、一応言われた通りにしといた方がいいんじゃねぇの」
十和(そっちも後で撮り直すだろうけど)
芽郁「わかった」
数秒の沈黙が続き、芽郁の方から話し始める。
芽郁「ナタデココア」
十和「は?」
芽郁「私が好きだってよく覚えてたね」
十和「忘れるわけねぇだろ」
十和の言葉にドキッとする芽郁。
十和「あんな変わったもん飲んでたのお前くらいだわ」
芽郁(一瞬でもドキッとした私がバカだった)
十和「Newって書いてあったけど、なんか変わってたのか?」
芽郁「あ、ごめん。まだ飲んでない」
十和「なんで?あ、もしかしてもったいなくて飲めなかったとか?」
芽郁「うん」
十和(それって俺が買ったやつだから……)
芽郁「最近、全然見かけないから」
十和(もったいないってそっちの話かよ)
芽郁「その……だから、ありがと。大事に飲む」
十和「ん」
なんだかむず痒い空気に耐えられなくなった芽郁は立ち上がる。
芽郁「隣に座る絵はもう撮れたよね」
芽郁の手を十和が掴もうとした時、カメラが足元に落ちる。
ガシャン。
十和「やべっ」
カメラを拾おうとしてかがむ芽郁と十和。
芽郁「カメラ大丈夫かな」
十和「なぁ、」
十和が何かを言いかける。
芽郁「あっ!てか、今思い出したんだけど私達ってスマホ持ってたじゃん。これで磯山さんに連絡すれば良かったんだ。なんで今頃気づくかな」
観覧車は1周を終え、芽郁が先に降りる。
芽郁「そういえば、さっき何か言いかけた?」
十和「別に大したことじゃねーよ」
十和は何故かムスッとしてる。
芽郁(え、何で急に不機嫌!?)
2話終了
第3話↓