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夏目漱石「行人」考察

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夏目漱石「行人」考察です。「行人」はスパイファミリーである?
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2024年6月の記事一覧

夏目漱石「行人」考察(22) 「将棋の駒」岡田

夏目漱石「行人」考察(22) 「将棋の駒」岡田

(「行人」の時系列を書いてる途中ですが、気になったので岡田について論じてみます。)

1、「将棋の駒」・岡田
「行人」で主人公・二郎と最初に出会うのが、「母の遠縁に当る男」岡田である。
(「友達」一)
(※ 著作権切れにより引用自由です。)

岡田につけられたあだ名が、「将棋の駒」である。

さらに、お貞と佐野との縁談をめぐる、二郎とお重との会話で、「将棋の駒」とは単に顔の輪郭だけではないと示され

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夏目漱石「行人」考察(21) 物語開始以前の時系列(概要「友達」)

以前に、夏目漱石「行人」について、二郎が梅田駅に下り立った物語開始からの時系列について、まとめてみた。

https://note.com/vast_murre78/n/n08a1bc36e727

今後は、物語が開始する「以前」の時系列についてまとめたいと思う。

いろいろ出てきそうなので、示されている物語開始以前の過去や、リアルタイムでの進行よりも少し以前に生じていた出来事や背景について、概要

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夏目漱石「行人」考察(20) 「行人」は一年間の物語

夏目漱石「行人」は、「友達」33章、「兄」44章、「帰ってから」38章、「塵労」52章の、計四章で構成されている。

1、夏

物語はこう始まる。

 梅田の停車場を下りるや否や自分は母から云い付けられた通り、すぐ俥を雇って岡田の家に馳けさせた。

(「友達」一)
(※ 著作権切れにより引用自由です。)

この時点で、季節は、
 縁側のない座敷の窓へ日が容赦なく照り返すので、暑さは一通りではなかっ

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夏目漱石「行人」考察(19) 一郎が精神を病んだ決定的な一言

夏目漱石「行人」考察(19) 一郎が精神を病んだ決定的な一言

1、失恋する男にも「格」というものがある
これまで何度も、「行人」において語られる長野一郎の「苦悩」めいた語りが、異様に大袈裟であると、わかるように書かれていることを指摘してきた。

― 霊だ魂だスピリットだ、メレジスだパオロだフランチェスカだ、永久の敗北者だ永久の勝利者だ ― と。
そして、これらの苦悩は一言でいえば

「直にモテてないよ」

これに集約されることも指摘してきた。

かつ、「直に

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