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ブランクスペース - 感想

(ネタバレ注意!)
熊倉献さん作の漫画「ブランクスペース」を読みました。
この作品は、主人公の女子高校生である狛江ショーコと、頭の中で組み立てた目に見えない実体を作り出せる特殊能力持ちの同級生片桐スイの学生生活を描いた日常系SF作品(?)です。

この手の超能力者が出てくる日常系作品は、主人公が超能力でなんでも解決してしまうギャグ漫画になりがちな印象ですが(超主観)、この作品はそうではありません。

作中ほぼ唯一の超能力者であるスイは、お昼ご飯は教室ではなく中庭で食べたり、図書館で黙々と読書するのが好きであったりとても内向的な性格です。そして、この1匹狼な性格が災いし、クラスでいじめに遭ってしまいます。
一方、主人公であるショーコは明るく、他者の感情をよく考え、誰とでも分け隔てなく接することができる天真爛漫な性格です。
つまり、この作品は、超能力者がヒーローなのではなく、むしろ弱者であり、超能力者を普通の高校生が支えていく、そんなお話です。

この作品の面白いところは、対象的な性格の二人が描く、予測不能なヒューマンドラマだと感じました。

いじめに遭っているスイは、性格的に周りに相談することができず、限界に達し、銃や斧を錬成するようになります。しかし、クールに振る舞っているスイの些細な変化を読み取ったショーコが、スイが学校を破壊しようとしていることを知り、なんとかスイの気持ちを変化させ、計画を中止させようとします。
ここで、ショーコは、スイに彼氏を作るよう提案します。すると、意外とあっさり承認され、スイは自分にしか見えない透明な恋人を生み出し、付き合うようになりました。また、彼氏ができたことによりスイには心の拠り所が生まれ、次第にクラスメイトへの憎しみが薄れていきます。

このように、明るくユーモアあふれるショーコだからこその行動が、内気だけどとんでもない力を持つスイに作用し生じる、読者の予想を超えた方向に進んでいくストーリーが面白く、ノンストップで読み切ることができました。

私もどちらかといえば、スイよりの性格なのですが、ショーコのような、気さくに接して、自分にない世界を見せてくれる友人たちに支えられています。私には超能力はないけれども、スイに共感できる部分も多く、また、ショーコの純粋さ、ユーモアに心温まり、喜怒哀楽全ての感情を行き来しながら読むような、非常に感情を揺さぶられる作品でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました!
3巻完結で読みやすいので、気になった方はぜひ!


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