【学び】新規事業開発の本質:収益性と市場創造のバランスを探る
タイトルの議論、新規事業開発を進める上で、避けては通れない問いであると思います。
「新しい市場を創ること」と「収益性を追求すること」、どちらを優先すべきか?
これは、事業開発に携わる多くの人々が抱える悩みではないでしょうか。
私自身、このテーマに何度も向き合い、議論や対立を経て、多くの学びを得てきました。
この記事では、私の経験を基に「収益性」と「市場創造」のバランスについて考え、持続可能な新規事業開発のヒントをお伝えします。
市場創造 vs. 収益性:現場での対立
収益性を巡るチーム内の葛藤がありました。
先日、投資家から「収益性を最優先にした事業開発を進めるべき」という厳しい要望を受けた際、チーム内で意見が割れました。
私たちのプロジェクトは、医療分野における新しいソリューションを模索する段階でした。
一部のマネージャーは、「市場創造」や「医療への貢献」を重視し、事業の収益性には目をつぶってでも実現すべきだと主張しました。その一方で、私はこう考えていました。
「収益性がなければ、事業を維持すること自体ができない。収益性を前提に、社会貢献を実現すべきだ。」
議論は平行線をたどりましたが、最終的には「ビジョン」を基にした共通の言語を見つけることで合意に至りました。
「収益性」と「社会貢献」は決して相反するもの、トレードオフの関係性のモノではなく、両立できるものです。
この議論の中で気づいたのは、感情的な対立ではなく、具体的なデータや目標を軸にした議論の重要性です。
学び:感情を超えた議論の鍵
この経験から学んだのは、対立する意見を解決するためには、次のプロセスが不可欠だということです。
データに基づく議論
感情論を避けるために、売上予測や市場調査結果といった具体的な数字を示す。
共通のゴールを設定
チーム全員が同意できる「最終的なビジョン」を明確化する。
長期的な視点の共有
目先の収益だけでなく、将来的な価値創出も視野に入れる。
収益性を重視するスタンスの背景
私が「収益性」を重視するようになったのは、エムスリーでの経験が大きな影響を与えています。
エムスリーは、ROI(投資対効果)を徹底的に追求する企業文化を持っていました。例えば、新しい事業案を提案する際、最初に求められるのは「どのくらいの収益を上げられるのか?」という具体的な数字でした。優れたアイデアであっても、収益性が証明できなければ採用されることはありませんでした。
実際に、私が新規事業タスクフォースの責任者を任せられた時のエピソードです。
私は新規事業(サービス)案をエムスリーの各部署とも連携したうえで「これはいける!」という事業案にまとめました。後は役員の承認を得るだけという状況で、当時の取締役にプレゼンを行いました。
プレゼンを始める前、アジェンダを見た取締役の第一声は「これを15分も聞く価値があるのか?いくらになるビジネスなんだ?」でした。
私は感動すら覚えました。ここまで徹底的に新規事業・サービスの収益性を重視しているのかと。
この会議では案の定、却下されました。
2カ月後に上長の助けを借り再提案したところ、許可をいただき、ローンチから1年以内に約8000万円という売上を出すことができました。
この経験を通じて、私は次のように考えるようになりました。
「収益性は、事業の持続可能性を支える基盤である。」
収益性を明確に示すことで、投資家やステークホルダーからの信頼を得ることができ、それがさらなる挑戦への原動力となると思います。
収益性と市場創造の理想的なバランス
私が考える理想的なバランスは、「収益性80%:市場創造・社会貢献20%」です。この比率は、以下の理由に基づいています。
持続可能性の確保
収益性が確保されなければ、事業を維持することは困難です。
利益を生み出すことで、新たな投資や市場開拓の余地が生まれます。
市場創造への余力
収益性を軸に据えることで、持続的に市場創造に取り組むリソースを確保できます。
このバランスを担保するために、具体的に、『上場企業の成長可能性に関する説明資料』を日々精読しています。
この成長可能性に関する資料というのは既に収益化が完了している上場企業の更なる飛躍の戦略資料なのです。
この資料を読むことで、収益性を確保できるビジネスモデルの知識、事業展開のパターンを学ぶことが出来ます。
こうして既存の成功企業の事例を見ることで新しい市場機会を探る習慣を持っています。
また、顧客ニーズや社会課題に基づいたアンメットニーズの調査を定期的に行い、具体的な事業案に結びつけています。
意見の違いを乗り越えるために
チーム内で意見が対立した際、私はまず1on1の対話を重ねました。
あるプロジェクトでは、収益性を重視する私と、市場創造を優先するメンバーとの間で溝がありました。
そこで、私はまず相手の意見を傾聴し、その上で自分の考えを共有しました。そして、次のようなアプローチを取りました。
感情的な対立を避ける
意見の違いを攻撃的に捉えず、建設的な議論に切り替える。
データを共有する
市場規模や収益予測を具体的に示し、納得感を高める。
小さな合意を積み重ねる
全体のゴールに向かう中で、ステップごとの合意を得る。
今後の成功のカギ:収益性を描けた事業案
これまでの成功事例を振り返ると、鍵となるのは「市場の指定」であると考えています。
特定の市場を先に指定し、その市場での可能性をデータで裏付けることで、議論はスムーズに進みます。
そうすると、収益性が明確な事業案が生まれる可能性が高くなります。
まとめ
新規事業開発における「収益性」と「市場創造」のバランスは、シンプルではありません。しかし、両者を結びつけるための工夫と努力は、持続可能な成長を実現する鍵です。
「収益性は基盤、そして市場創造は未来を拓く手段である。」
この視点を持つことで、事業開発の可能性は大きく広がります。
皆さんのチームでは、このテーマについてどのように向き合っていますか?ぜひご意見をお聞かせください。
記事が少しでも気に入った場合、いいね、購読など応援お願いいたします。