【大人用の童話】輝き続ける宝物
あるところに、男の子と犬が窓から星をみていました。
「ハヤテ!あれが、ぼくのお気に入りの星なんだ!」
男の子は一番、大きくかがやく星にゆびをさします。
「ワンッ!」
犬のハヤテも、男の子がゆびをさした近くにある星を見つめて吠えます。
「ハヤテはあの星がすきなんだね」
「ワンッ!」
ハヤテはしっぽを、ブンブンとふっていました。犬が、しっぽをふるのは、とてもよろこんでいるあかしです。
男の子と、ハヤテはずっと、ずっときれいな星を一緒に見つめていました。
ある日、男の子が大きくなった時のことです。
「ハヤテ!さんぽいこう!」
男の子は、犬のハヤテにはなしかけます。しかし、ハヤテはねむいのか、おきていることが少なくなってきました。
「ハヤテは眠いみたいだから一人であそんでいなさい!」
おかあさんは大声ではなすと、おとこのこはハヤテの顔をみつめます。
「はーい。ハヤテ、げんきなときに、またさんぽにいこう」
おとこのこはおおきな声で、ハヤテにはなしかけますが、寝たままでした。
夜になると、おとうさんとおかあさんが、ハヤテを連れて病院へと向かいました。おとこのこはおうちの中で、むかしハヤテといっしょにみつけた星をさがします。
「星が無い!どうして!」
男の子はいっしょうけんめいにお気に入りの星を探します。
「帰ってきたらハヤテといっしょに見るんだ!」
お気に入りの星を探していると、お父さんとお母さんが帰ってきました。
「おかえり!ハヤテは?」
おとうさんと、おかあさんは一言もはなしません。
「ハヤテは!置いてきちゃったの??」
男の子はハヤテをさがしまわります。しかし、ハヤテはどこにもいません。一言もはなさないお父さんは、男の子の肩を掴みました。
「ハヤテは星になったんだ」
男の子は、泣き出します。お父さんの胸の中で、たくさん、泣きました。泣きつかれた男の子はベッドの上で寝る事になりました。目をとじてまっくらな世界に光が差し込みます。
「あれ…ここは?」
「ワンッ!ワンッ!」
ハヤテは元気なすがたで走り回っていました。そして、男の子をみつけると飛び出します。
「ハヤテ!良かった!」
「ワンッ!」
男の子はハヤテをぎゅっと優しくだきしめます。
「ハヤテ、帰ってきたらお気に入りの星を見せようとしたけど消えたんだ」
「くぅ~~ん」
ハヤテの尻尾がさがりました。犬が尻尾をさげるのは悲しいあかしです。ですが、ハヤテは男の子の周りを走ります。
「ワンワンッ!」
そして、ハヤテは男の子の胸の中に飛び出します。
「えっ?ボクの胸に何かあるの?」
男の子は自分の胸を見ます。男の子の胸にはキラキラと輝く大きな星が宿っていました。
「あっ!ハヤテの胸にも大きな星がある!」
ハヤテの胸にもお気に入りの大きな星がキラキラと輝いていました。
「ワンワンッ!」
ハヤテは尻尾をブンブンとふります。ハヤテも嬉しいようです。男の子がハヤテを見つめている時でした。
「ハヤテを見ていると星が大きくなる」
男の子は、ハヤテと一緒に見た星、散歩した事、旅行に出かけた事を思い出しました。そうすると、どんどん星は大きくなり宝石のようにキラキラ輝いてきました。
「ハヤテ。ありがとう」
「ワンッ!」
ハヤテを男の子は優しく抱きしめます。
男の子とハヤテの胸の中でキラキラと輝き続ける大きな星は、どの宝石よりも、大切な宝物でした。
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