ここから先に光は〜難病からの帰還目指して〜その34

2024.04.24〜04.26.
 逃げ込んだ先は病院である。
 え?
 また病院?
 そう、またなんである。足が浮腫んで思うように動かないんです、これ以上足手まといになりたくありません、退社します、と正直に上司に伝える、その一言が言えなくて、4月の最期の連休使って病院に行こう=逃げようと決めた。折しもその連休前の夕方、立て続けにチェックインしてきたお客様の大きなスーツケース、支配人に無常にも「二個持て」とはっきり告げられたその一言が決定的に決めた。
 調べて紹介状をもらっていた先は丘の上の巨大施設。もうここだけで付近の雇用が満たされるという感じ。駅から巨大施設=病院まで、車で約10分の間にはイオン、郊外型店舗が数件見かけた。歩いていくには距離があるので路線バスを、と思いきや、次のバスは30分後、仕方なくタクシー捕まえた。行き先を言うと、10分でつきますよ、と言われたが、乗車時間は12、3分かかった。
 まず受付でどうすればいいのか迷ってしまう、館内を行き交うのは健康そうな男女ばかりがすたすた歩いている。二階の待ちスペースではスマホでマンガを見ながら隣と笑い合っている、どこも悪くなさそうな中年がいる。
 あなた病院に何しに来たの、暇つぶしかよ!
 と問いたくなる人がちらほら。
 診察室に呼ばれてみれば医師の年齢が若い若い、あなたそこの大学医学部卒業したばかりでしょ、って問いたくなる。診察するのは若者、診られるのは中高齢者、という図式が平然と成り立っている。
 問われて経緯をぼそぼそ答えた。2回転びました、と言ったのは確か。この時どんなシチュエーションで、と言わなかったのが後々響いてしまった。段差のあるところで、とはっきり言っておけばよかった。後悔しても後の祭り、採血して心電図、待ち時間の末に再び呼ばれて入院を言い渡された。個室がいいですかと言われてまた失敗してしまう、特には、4人部屋とかでもいいです、と返事してしまったのが仇になった。
 歩けるのに車椅子に載せられて辿り着いたのはナースステションの隣部屋。看護婦が個室空いてないのよ、と問うてもいないのに言ってのける、絶対嘘だと思った。まあいいや、と思いトイレに立つと、複数の看護婦が遠巻きに監視してる。手は出さないけど監視する、というのが昼となく夜となく続くのには辟易する。その監視が次第にエスカレート、初日は車椅子で買い物連れて行ってもらったのが、次の日はコンビニ行きたいというと何が欲しいのと問われて買ってきてあげるに変わっていた。ず〜〜〜っと監視の目は続く、部屋に戻ればなんと言ったっけ、テレビドラマでよく見るモニターに波動が映し出されるやつ、あれだよあれ、が枕元に、どこでどう繋がっているのかコードが背中で取り外しできるようになっている。四六時中見張られているのがウザい。どこかでプッツン切れるだろう、と思っていた。
 何時が消灯時間なのか分からないが、とにかく夜遅くまで部屋も廊下も電気がついている。味気ない食事、どこの病院も同じだけど。看護婦の対応が悪い、何だったか忘れたが病院のマニュアルそのままですみたいな文句吐き散らしてそれきりのおバカ看護婦がいたかと思うと、鶏の餌付けかと疑う手袋嵌めただけの手で薬を飲ませるバカ女看護婦がいる。
 ついに切れた。
 日付が変わる時刻に。

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