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夢破れたり

 さて、やはりこの空白の期間ももちろん心情の変化が確かにあったのだけど、なんでだろうか、文字を書く気にならなかった。まとまった感情が二三個出てきたわけなのだけど、すぐに細かく切り刻まれ咀嚼され、気づけば頭の中で消化されてしまった。頭で処理できるようになったといえば大人になったのだろうけど、どこか淋しい気持ちになる。

 失ったものは砂粒のようで、手の中をさらさらと抜けていってゆく。いまだ新鮮な気持ちを感じられるものは空気のようで、目には見えない。以前思い出の再構築という一言を残したけど、そう、小中高の記憶がはるか昔の別人の記憶のように感じられる。そうした断絶した記憶が最近は再びつながってきて、連続のはなしになった。

 一年前の記憶がよみがえってくる。後悔と幸福の繰り返しだった。そうして人間は成長するものかと今になれば思うが、これはある意味天罰のような気もする。もっと良い方法を見つけられたのにと思って、反省もする。しかし、夢破れたり。現実はそううまくはいかないというものらしい。

 大学に金木犀が咲いた。私には高尚すぎる香りだ。

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