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カメ🐢印タクシー🚕創作童話です〜ごゆるりと。

「へい、タクシー!」
大工の源さんは、道路の隅に立って、タクシーを捕まえようとしていました。しかし。



「なんでぇなんでぇ!みんなビュンビュン通り抜けやがって。俺だって普段はタクシーなんて好かんっちゅうの!」



源さんは、バス派です。ぶらりなバス旅番組、大好きです。ただ、今は急いでいるのです。



今日は、孫のかんなさんが、結婚式を挙げる日です。普段の作業着から、スーツを着るまでに、時間がかかりすぎてしまいました。晴屋敷会場での挙式開始まで、あと十分。まずいのです。




「あっ!そこの緑!止まれ!止まってくれ」



ゆるゆる〜っと、緑のタクシーが止まりました。ドアが開いて、早速乗り込みます。
「晴屋敷会場まで、秒速でたのむ!」
「はいはい、晴屋敷ね〜。お客さん、結婚式〜?おめでたいねぇ」



ゆるゆるとしか進まない車にイライラして、源さんは言います。
「ああ、めでてぇ、そりゃあめでてぇが、もう少し早く走れませんか」



運転手さんは、ちらっと後ろを振り返り、だってねぇ〜と、言います。



「こちら、東京に四台しかない、カメ印タクシーなんですよお。人生、ゆっくり、ゆったり、いきましょう〜」



源さんの顔が、すう〜っと、赤くなりました。


「カメ印?じゃあ、ずっとこのスピードなんですか?悪いが、お兄さん、俺、降りますのでドアを・・・えっ!」
外を見ると、空の上でした。小鳥がピチュピチュ話しかけています。



源さんの顔が、すう〜っと青くなりました。



「・・・亀は、空は飛ばんだろう?」



運転手さんは、ワッハッハと大笑い。
「最近のタクシー、進化してましてねぇ。特に、カメ印。驚かれたようですねぇ」
「まさか、運転手も、実は、亀が化けたとか?」



運転手さんは、ミラー越しに、笑顔をおくります。
「大丈夫、もう完全に人間ですよ。若く見えても、カメは万年、ですからねぇ〜」



源さんが、何も言えなくなって黙っている間に、雲をくぐり、雨に降られ、やがて虹の上に着きました。



「お客さん、着きましたよ〜」



「俺は、確かにじいちゃんだが、まだ天国に来るほどじゃあねぇよ・・・アレ?」
「またのご利用、お待ちしてます〜。あ、これ、乗車記念缶バッチ。はい、ではでは〜」



 着いた先は、確かに晴屋敷会場前でした。しかも、ガラーンと人がいない、会場でした。



「まずいな、もう式が終わっちまったとか。係の人に聞いてみるか」


源さんが、会場の人に聞くと、こういう答えでした。
「お早いご到着ですね。本日は、おめでとうございます。新郎新婦様のみ、お部屋にてご準備しております」
「ふ、ふえぇ?」




係が、目ざとく、源さんの乗車記念缶バッチを見つけます。
「おや、カメ印タクシーに乗っていらしたんですね。これはおめでたい」
「は、はぁ」



係は、にっこり微笑みます。



「本日の、新郎様、新婦様、きっと幸せなご家庭をお作りになるでしょう。控え室でお待ち下さい、冷たいお飲み物をお持ちいたします」
「え、ええ。お願いします」




源さんが、他の係の人にエスコートされて、控え室に着くと、確かに、親族控え室には、誰もいませんでした。飲み物が運ばれてきて、ひとりになると、言いました。



「俺は、夢を見たのかなぁ」



でも、手には確かに、乗車記念缶バッチがしっかりと握られています。
「・・・よし、かんなに会ってくるか!会場着いたし、式、まだだし、問題ねぇ」



缶バッチは、いいもののようなので、後であげようと思いました。



「ゆっくり〜ゆったり〜いきましょう〜」
源さんは、鼻歌を歌っている自分に気づきました。そう、今日もいい日、です。




end.



お読みいただきありがとうございますm(_ _)m☕✨
この童話は、わりとあたらしめ…かな?笑😅
(そうだった気がします。)


載せられるような短い童話は(原稿用紙5枚以内🌸)確かあと一つですかね。
そちらは『雨呼ぶ髪飾り』と時期は違いますが、文体は似ています。ただ…まぁちょっとアレかな😱🌸笑
(なんなんだ❢)


カメ🐢印タクシー🚕は、京都の四つ葉のクローバー号という幸せを運ぶタクシーがモデルとなっています。


6月は弟の奥さんの誕生月なのですが、ジューン・ブライドで結婚式も人気なので先走って載せてみました💐😗
(まだ4月だよ?😱🌸)



皆さま、善い休日を🌟
いつも、ありがとう😊🌈
ナッツカナッペでした~♪







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