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生業ということ

 以前、静岡の老舗宝石店を取材した際、店主から「うちは生業(なりわい)として商売をしているので、この地で末永く営業していきます」と言われました。それまで、コンサルタントとして「生業から企業へ」を進めることが中小企業の活性化策と考えていた私にとって、目から鱗の一言でした。地域の小売業には「生業であることの誇り」が大切なことを思い知らされました。
 今回ご紹介する一番喜龍さんは、武蔵小杉で50年以上商売している中華料理店です。2年前のコロナ真っ盛りの時に移転改装をしました。改装後は、順調に売り上げを伸ばしていて、店内はお客様でにぎわっています。
 改装前のお店はいわゆる「まち中華」で、中華一番という店名で地元のお客様に普段使いのお店として親しまれていました。改装にあたって、普段使いのお店から「特別な日に使いたいお店」に変身すべく、内外装を一新するとともにメニューも見直しました。
 お店のイメージを一新したことやおすすめメニューを意識的に打ち出したことなど、好調の要因はいくつかあります。でも、一番の要因は「生業の良さを発揮」していることだと私は思います。
 お店のスタッフは、オーナーご夫妻、長女ご夫妻、妹さんといった、いわゆる家族経営のお店です。生業としての強みをいかんなく発揮しています。➀とにかく仲が良い②みんな商売が大好き③厨房スタッフはモノづくりが大好き④生粋の地元っ子なので小杉が大好き などなど、生業の良さをいかんなく発揮しています。このように、仲良く楽しく商売していますが、定期的に会議をして、忌憚のない意見を言い合うといった、商売への厳しさも忘れていません。お互い気心が知れているので、意思決定がとにかく早く、よいと思ったことはすぐに実施する、小回りの良さが生業ならではと思います。
 お店はおしゃれになりましたが、家族経営の良さが、温かみのある雰囲気や接客に表れているので、お客様にとって、とても居心地がよいようです。


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