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便りの先に(短編小説)

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──これは郵便を通じた碁のお話 急逝した祖父に届いていた一通のはがき。 『白 八十二手 12の三』 そこに書かれていたのは、囲碁の着手だった。 十話完結です。
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記事一覧

便りの先に (その一)

「ねえ、優吾。ちょっとあんたに見てほしいんだけど」    母がそう言って一枚のはがきを差し…

島本葉
2週間前
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便りの先に (その二)

 囲碁の対局の楽しみ方は色々ある。  一番オーソドックスなのは、対局者同士が碁盤と碁石を…

島本葉
2週間前
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便りの先に(その三)

 祖父の碁盤と碁石、絵手紙の入った文箱は僕が引き継ぐことになった。  住む人のいなくなっ…

島本葉
2週間前
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便りの先に(その四)

『大学三年生です。普段はネットで打っていて棋力は弱い三段くらいでしょうか(笑)  郵便碁…

島本葉
2週間前
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便りの先に(その五)

 年が明けて気候が和らぎ、大学も無事に四年に進級した。必要な単位も少なくなってきたので、…

島本葉
2週間前
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便りの先に(その六)

 夏を前にして、あれ? と思った。    普段だと僕がはがきを送ってから四、五日程度で返信…

島本葉
2週間前
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便りの先に(その七)

 どうやら美咲さんは僕よりは歳が下のように感じる。  女の子らしいといえばよいのか、少し可愛い文字で色ペンも使われて。なんというか若々しくて気恥ずかしい気持ちがした。中学生か高校生か。その頃のクラスの女の子たちが、何やら手紙などを回していた記憶があるけれどこんな感じだったんだろうか?    対局者が女の子に変わったことを葉月さんに伝えると少しだけ機嫌が悪くなってちょっと嬉しかった。まぁ、会いたいとかそういうのではないので勘弁していただこう。    対局は大分進んで今は中盤戦

便りの先に(その八)

 夏の気候がやっと落ち着いてきたと思ったらもう十月だった。祖父が亡くなってからおよそ一年…

島本葉
2週間前

便りの先に(その九)

「まだ続いてるんだ?」    飲み干したジョッキを店員に渡して、おかわりを注文しながら葉月…

島本葉
2週間前

便りの先に(その十)(最終話)

 脚付きの碁盤を部屋の真ん中に置いて、その前に腰を下ろす。手元には棋譜と今日届いたはがき…

島本葉
2週間前