「あんたがいるから、来てやってるんだよ。」

大学に入学して以来、カフェチェーン店のアルバイトを始めて四年ほどが経つ。四年もいれば、顔見知りが一人や二人できる。4、5人でいるおばあちゃん集団が、私が出勤するといつも挨拶してくれて少し立ち話をしてくれる。「大学はどこなの?」「身長高いね!何センチ?」とスモールトークをする。私にとってはこの時間がすごく大切だった。なぜかというと、私は一年前には母方父方の祖父母全員を亡くしていたからだ。おばあちゃんおじいちゃんが亡くなってから、すごく後悔していた。もっとおばあちゃんたちの昔の思い出話とか聞きたかったなと。おばあちゃんの昔好きだった歌は?本は?服は?なんでじいじと結婚したの?と。今でも後悔している。だからこそ、アルバイト先の常連おばあちゃん集団とのたわいも無い会話を楽しみにしていたのだ。本当の祖父母と話せなくても、同じ時代を生きたおばあちゃんたちと話せるんだ!と。そこで繰り広げられるおばあちゃんたちの会話がまた面白い。宇野昌磨の顔が可愛いだの、芸能人の不倫は許されまいだの、人の悪口だの笑。ところが、私が九月ごろ持病によって入院して一ヶ月ほど出勤できない時期があった。一ヶ月ぶりに出勤すると、おばあちゃん集団が笑顔で私を迎えてくれた。そして、その集団の一人のおばあちゃんが、私に、「どしたの?最近来なかったじゃん。あんたがいるから、来てやってるんだよ。」と言ってくれた。私は、本当に嬉しかった。すこし話が大きくなるが今の時代、情報が多すぎて何を信じていいか誰を信じていいかわからなくなる時がある。そんなときでも、本当に信じられるものは案外近くにあったりするのだ。おばあちゃんたちが、これからも健康で1日でも長く生きてくれればいいなと、そして、私が俳優として舞台に出れるようになったら、おばあちゃんたちを招待したいなと一人、勝手に考えていた。

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