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第322回、新海誠の巫女三部作にみる、欽ドン!理論を論じてみた


新海誠といえば、インディーズ出身の新鋭アニメ監督ながら、情緒的な映像美と洗礼された演出力で、一部のコアなファンに高い人気がある、知る人ぞ知る存在だったのが、メジャーデビューをするなり、大ヒットを連発して、今や知らぬ者のいない、宮崎駿に次ぐ、国民的なアニメ監督になりつつありますが、メジャー化をしてから制作された映画は、災害がらみの物ばかりで「あれ?この人もしかして、やばい系の人なの?」という不安を感じられているのではないかと思うのですが、(そんな事ないですか?) この災害三部作(勝手に命名) は、作品によって好き嫌いが結構分かれる傾向があり、互いに好きな作品の順番を言い合う様子が、ネットでもよく見られます。

この三作品は、各々に異なるタイプの巫女が主役を務めている、巫女三部作
(これも勝手に命名) でもあり、この巫女の役割を、欽ドン!のイモ欽トリオの「良い子、悪い子、普通の子」に当てはめて、考察する事ができるのではないかと、個人的には思っているのです。
(そもそも、イモ欽トリオを知らない若者が、多いようにも思いますが)

まず一作目の「君の名は。」は、代々継承されて来た巫女が自分に課せられた務めをしっかりと行う、良い子な巫女の話であり、それに対して二作目の「天気の子」は、成り行きで巫女になった少女が、巫女の役割を途中で放棄してしまう、悪い子的な巫女だという事がいえるのではないかと思います。

※人間的に悪い子だという訳ではなく、あくまでも、巫女の立場としての、役割的な位置づけの話になります。

「君の名は。」は、模範的な巫女の話なので、優等生的な人間の話として、比較的多くの人達に好まれる傾向があるように思うのですが、それに対して「天気の子」は、そもそも巫女ではない少女が、割と好き勝手をした挙句、巫女の役割も放棄をする事になるので、わがままで嫌いという人がいたり、逆にそこがいいのだという人も、いるのではないかと思うのです。
(そもそも人柱にされてしまうので、放棄をして当然ではあるのですが)

では三作目の「すずめの戸締り」は、どうなのかというと、この子も、巫女ではない少女が、巫女の役割を務めるという点では「天気の子」に近い立場だと思うのですが、自分が人柱になる心配がないとはいえ、かなり積極的に巫女としての責務を務めているので、いい子よりの普通の子という感じなのではないかと思っています。

最も自分が強引に、イモ欽トリオに当てはめて考えているだけなので、やや無理のある分析ではあるかもしれませんが、これらの巫女の異なるタイプの描き方が、三作品に対する観客の好みを分けている要因になっているのではないかと、自分は思っているのです。

ちなみに自分は、映画の面白さの順番で言うと、
「君の名は。」「天気の子」「すずめの戸締り」ですが、作品の好みは、
「天気の子」「君の名は。」「すずめの戸締り」になります。


このままだと考察的な深みがあまりないので、もう少しだけ考察をすると、映画から得られる、現実の災害に対する教訓を論じてみたいと思います。

「君の名は。」は、タイムリープによって災害を防ぐので、教訓になる事は何もなさそうに思うのですが、考えようによっては、精度の高い災害予測と普段の避難訓練が、いざという時の災害に役立つ、という事が学べるのではないかと思います。

「天気の子」は、災害は、人間には完全には制御をできる物ではないので、自然災害を受け入れる覚悟をする事が必要な時もある。という事ではないかと思います。
これは必ずしも後ろ向きな姿勢という訳ではなく、例えば新型コロナでも、ウイルスの存在を完全に撲滅する事だけを目指すのではなく、ある程度は、ウイルスが存在する事を、ウイルスとの共存を受け入れる事で、経済対策
との両立を選んだ、実際の政策とも共通する所があるようにも思います。

では「すずめの戸締り」からは、何を学べるのかというと、実は自分的に、あまり考察ができていません。
災害は、現実的には、呪術の力でも人柱によっても、封じられる物ではないからです。
確かにこうした方法によって、災害を封じる行為がとられていた時代もあり今もその風習は、様々な所に残っているのだと思いますが、現実問題としてそうした風習から現代の災害対策に、何かを学べる事があるのかというと、自分の洞察力が足りないからなのかもしれませんが、今の所、何も思い浮かべられないのです。

必ずしも映画から、現実の災害対策の教訓を、学べなければならない訳ではないのかも知れませんが、この教訓を見出せない所が、自分がこの映画を、今一好きになれない理由にもなっています。

「あの花~」もですが、必要以上に深読み裏読みをして、作品を素直に楽しめないのが、自分の悪い所だと思うのですが、自分の性分なのか、なかなか直せないでいます。

皆様にとって、一番好きな新海誠作品は、どれでしょうか?
自分は、正しい道を外れる所も含めて、「天気の子」が、青春っぽくて一番好きです。
すすめの戸締りは、公開当時「子猫を人柱にするなっ」とキレまくっていたのですが、あまり
作品を感情的に批判をするのはよくないとは思いつつ、なかなか直せないでいます。
インディーズ時代の、新海誠作品の方が好きという人も、結構いるのではないかと思います。

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