怪談41「死を呼ぶ?女」
ある日、S先輩を迎えにいきました。
Sの家は、山の上り口にあり、その家の前は狭い道路が山の上り口に続いています。
Sの家に入ってUターンすれば良いのですが、基本的にその入口も狭く、車を縁石でこする人が続出するような感じです。
まあ、私は別に入ってもいいわけですが(というか、普段はSの家の庭でUターンしていた)、その日に限って「入口まで出るから山の入口のUターン場所でまわってから来いよ」と言うんですね。
ただ、私は待ち合わせ時間の30分前にはその場所にいくようにしているので、その日も少し早めにSの家の前に着いたわけです。
Sに電話すると「来るの早え~よ、ちょっと待ってて」と言う。
仕方ないので、一度、そのSが言っていたUターンする場所まで車を進めました。
Sの家の前を進み、山に上がり始めるとすぐ広い場所があり、そこがUターン場所になっている。
・・・・・なっているわけですが、その日はそのUターン場所に喪服っぽい服を着た女性が立っているわけです。
・・邪魔ですよね~。
かといって公共の場所ではありますので「どけ」と言うわけにもいかず、仕方ないから、さらにそこから少し進んだ先にある広場(古いお墓が沢山ある場所の横)で車を停めて、時間をつぶすことに。
携帯をいじりながら、その喪服の女性をチラチラ見るわけですが、その場所から動かないし、ただ立っている感じがします。
(ほどほど距離が近いので、その女性が見えるわけですが、なんだか不気味で気になってしまっていたわけです)。
ちなみに、私のいた場所からすこし上がると、山の中に古い斎場が存在しています。
なので、そこに行く人がなんらかの理由でそこで待ち合わせでもしてるんだろ・・・なんて思ってたんですね。
そうこうしているうちに、Sから電話が入る。
「いま、家の入口の前なんだけど、どこいった?」と言うので「あ~山のところの墓場の広場で待ってます」と答えました。
「ああ、あそこね~じゃまってるよ」といってSが電話を切る。
私は車のエンジンをかけると、発進するわけですが、そのわずかの間にいつの間にか喪服の女性は消えていました。
その時は気にもとめてなかったわけで「あれ?」ぐらいにしか思ってなかったんですよね。
で、Sを家の入口で拾うわけですが、その時に「上の斎場、今日葬式なんですか?」と聞いてみました。
Sが「なんで?」と聞き返したので、先ほど見た喪服の女性の話をしました。
するとSが「あ!お前、その話をここでするな。いいからまず車出せ!」と怒り始めたんですよね。
私はわけがわかりませんが、とりあえずSのいうとおり車を出す。
Sのいる集落を出たあたりでSが「お前、その女の話を集落の中ですんなよ~、とりあえず飯食いに行きたいから、近くのファミレスに入れよ」と言います。
私はSに「はいはい」と返事しながら近くのファミレスに入る。
席を決め、座ったところでSが「あの女、たちが悪いんだよ」とつぶやきました。
私からしたら、わけがわからない。
それを察したのか、Sが話し始めました。
「ん~今から20年ぐらい前かなぁ、黒い服の女が現れるようになったんよ。あれね~なんかやばい奴みたいで、集落の中を転々としてんだよね~」Sはドリンクバーで注いで来たコーヒーを飲み、そうつぶやきました。
「まだ、道ばたとかで見るのはいいんだけど、あれがさぁ、ある日、誰かの家の上に立つんよ・・・そうするとその家の住人の誰かが死ぬんだよね~」
私は「はあ・・・」と気のない返事をしました。
Sは「お前は部外者だからそんな反応なんよ。でも集落の人間からしたらたまらんよ。家の上に立って、その家の病人とかだけが死ぬならまだいいじゃん?でもそうじゃなくて、事故とか自殺でも死ぬんよ」と、舌打ちをしながら続ける。
「しかも、あんまりあいつの噂を集落内ですると、その噂していた奴の家の上に立つんよね・・・そしてそいつが死ぬ。だからあの集落では、あれを見かけても知らんぷり・・・そして噂もしないようにってなってんのよ」と言いました。
「マジっすか」と私が言うと「マジだって。だからもうあいつの話はすんなよ。集落外の家には行かないから、俺の家狙われる可能性があるんだってマジで勘弁しろよ」とSは言って、私に「バツとして余はコーヒーを所望じゃ」と言ってカラになったコーヒーカップを私の前に突き出しました。
「はいはい」と言って、私はコーヒーを注ぎに行ったあと、注文し食べながらある疑問をSにぶつけました。
「てかですね、いつもどおりSさんの自宅の庭でUターンさせてくれれば、別にあの女性を見ることもなかったんですよ?なぜ今日に限って、あのUターン場所でUターンしてこいなんて言ったんですか?」と。
するとSは注文したハンバーグにフォークを突き立ててからこう言いました。
「あ?気分」
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