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神様はリコウよりバカが好き💛

 経営の神様と言われる松下幸之助翁は、「賢い人は会社を興し、国を興す。しかし同時に、賢い人は会社をつぶし、国をつぶす。だから賢い人は希望が持てるが、一面、非常に危険である。そして両者のあいだには、紙一枚の差もない」と言っています。

 賢い人は2種類あります。リコウとバカです。その違いは「私心」があるかないかです。賢い人で「私心」がある人をリコウ、同じく賢い人でも「私心」がない人はバカと呼ばれます。

 私は、約30年の間に数百人の経営者を見てきましたが、会社をつぶすには、ほとんどがリコウな人です。賢くもないのに賢ぶる人も会社をつぶします。

 一方で、会社を興し、業績を飛躍的に伸ばすのは、バカな人です。全員が反対する案件でも「なんとかなるさ」の一言で恐れもなく前進します。「もっと儲けたほうがいい」「良い時だけでなく悪い時もあるのだから従業員に配分しないで蓄えていた方がいい」というリコウな人のアドバイスを振り切って自分の儲けを減らしても利益をお客に還元し、従業員に還元します。

 リコウな人は、リスクのある案件には手を出しません。石橋を叩いているうちに石橋が割れて機を逸してしまうのです。そして、業績を伸ばすことよりもコスト削減を第一に考えます。当然、本店の移転や新商圏への進出、大型店舗の開発など採算性が不明瞭な投資は回避する傾向にあります。

 本店の移転や新商圏への進出、大型店舗の開発は、リスクはありますが、業績を別次元に引き上げます。と同時に人材が育ちます。さらなる成長発展の条件が揃うのです。

 一方で新しもの好き、横文字好きというのもリコウな人の特徴です。キャッシュレス、ポイントサービス、宅配サービスなどマスコミが喧伝に飛びつき、「世の中の趨勢だから」と独断専行で導入します。これらは小さな投資で済みますが、効果が出るか出ないかはわかりにくいのです。小さな失敗を繰り返し、小さな失敗を失敗でないと取り繕ううちに、時流から取り残されてしまうのです。

 前年5%割れが10年続けば業績は6割まで落ち込みます。誰も失敗に気が付きません。独断専行した本人は、高額の退職金をもらってとうの昔にいなくなっているのです。

 さらに、リコウな人を組織のトップに据えるとバカを見つけてはマウントをとり、徹底的にいじめ、排除しようとします。バカは未来の救世主であると同時に、組織の潤滑油なのです。バカがいなくなると、組織はギスギスしだし、活力を失います。

 リコウな人の特徴をまとめると次の通りです。
①   「私心」がある。自分の地位、権力を維持しようとする
②   お客あっての商売、取引先あっての商売、従業員あっての商売という意識がない
③   衆知を集めることをしない。独断専行、ワンマンである
④   リスクを恐れる。やるよりやらない方が得だと考えている
⑤   新しいおもちゃが大好き。でもそのおもちゃにすぐ飽きる
⑥   周りをイエスマンで固める。バカを排除する
⑦   コンプライアンス重視。マスコミ、政府の言うことが正しいと信じている
⑧   業績向上よりもコストダウンを選ぶ。コストダウンの結果より、業績ダウンの方が激しく、さらなるコストダウンを強いられる
⑨   人を将棋の駒のように動かす。駒にされた人の気持ちがわからない
⑩   猜疑心が強い。嫉妬深い

 一つでも、心当たりのある方は、将来会社をつぶす可能性があります。

 一方、バカには「私心」がありません。「私心」とは、2つの意味があります。一つは自分の利益だけを考える心。もう一つは「衆知」の排除。自分一人の考えで物事を決めることです。

 江戸時代から戦前にかけて「丁稚奉公」という制度がありました。年少者がある一定の期間、商人または職人の家に奉公し、雑役などの仕事をすることです。年少者のことを「丁稚」と言います。「丁稚」は、「丁稚」期間を終えると、独立やのれん分けが許される商店もありました。私心を捨て奉公するうちに、商いの心と基本的な所作、店主としての在り方、お客、取引先との信用の構築の仕方、岐路に立たされた時の決断の仕方などを学ぶのです。

 「丁稚奉公」が、喰うための一面が強いのに対して、「滅私奉公」は、私心を抑えて、国家・地方公共団体・社会・世間などに対して奉仕する精神を意味します。「滅私」は自身の利益や欲求を捨てること。「奉公」は公や立場が上の者に奉仕することです。

 「私心」がないと、大自然の力、大宇宙の力が味方するようです。天地人、天の時、地の利、人の和、すべてが味方してくれるのです。

 「私心」がない人をバカと言います。「私心」がないから、儲けをお客や従業員に惜しみもなく配ってしまいます。「ここ数年、業績も厳しくて賞与が出せなかったけれど、今期は何とか黒字になりそうだから、奮発して賞与をはずみすることにしようと思う」と店主が口を開くと、幹部は口々に反対します。

 「儲けが出たと言ってもわずかです。借金もたくさん残っています。来期まで待ったらどうですか」皆が口を揃えます。「分かった。でも今回だけはワシの意見を聞いてほしい」と言って賞与を振舞うのです。

 すると、不思議なことに翌朝、いつもよりだいぶ早く従業員が出社しています。顔からは笑みがこぼれ、所作もきびきびしています。それからというもの、業績は右肩上がりです。

 バカな人の特徴は次の通りです。
① 「私心」がない。金や権威に関心がない
②  「衆知」を集める。独断専行しない
③    日頃から自分は頭が悪いから知恵もない、決断力もないと宣言している
④    お金はないが、なぜか人が集まってくる
⑤    悪戯好き。相手の気分良くなる悪戯をする
⑥    困ったときにアイデアが天から降ってくる
⑦    浮気はするが、妻を愛している
⑧    自分はモテる。少なくとも自分は信じている
⑨    弱い人の立場を配慮する。心配り、気配りができる
⑩    なんとかなる。根拠のない自信がある

 会社を興し、会社を守り、発展させるのはバカなのです。リコウは、私たちの心の隙間に付け入ります。私たちは、リコウを救世主だと勘違いします。バカはリコウに排除されます。しして、リコウは会社をつぶすのです。

 私たちは、リコウの「私心」を見抜かなければなりません。リコウの「私心」を見抜くには、私たちがバカになるのです。バカになるには修業が必要です。

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