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借金は返そうと思うな。返そうと思うから具合が悪くなる

 「借金を返して早く楽になりたい」商売をしていれば、誰もが願います。借金を返すために、従業員を安い給料でこき使い、お客には粗悪な商品を高値で売ろうとします。借金が減らないから、この30年従業員の昇給もボーナスもありません。店舗は老朽化し、冷蔵ケースは悲鳴を上げています。そこに度重なるメーカーの値上げによるお客の買い控えと電気代などあらゆるコストの高騰です。このところずっと赤字です。借金は減るどころか増える一方です。もうこれ以上貸せないと銀行からは通告されています。

 借金を解消するには、赤字を解消し、黒字化しなければ原資が出ません。赤字を解消するため、コスト削減を図ります。まずは人件費。欠員が出ても補充しません。補充しないので、残された従業員に負荷がかかり、一人、また一人と人が辞め続けます。行き着く先は指名解雇です。次にチラシコストの削減です。チラシ広告を廃止して、SNSでの販促でその場を凌ごうとします。

 教育や研修もコストと考えられ、コスト削減の対象となります。教育は「心の栄養」です。研修を受けなければ、業界の趨勢や消費者の嗜好の変化に疎くなります。一番大きいのは会社以外の外部との繋がりです。仕事で心が折れそうになった時、同じような悩みを抱えている仲間がいるだけでやる気と勇気が湧いてきます。

 しばらくして、従業員から笑顔がなくなり、空段ボールは放置され、陳列棚には欠品が目立ち、売場は荒れます。さらに業績は悪化し、売価を上げるとともに商品のグレードを落として粗利益率を改善しようと目論見ます。こうして企業は破滅していくのです。

 マスコミに登場する「企業再生のプロ」がするのが、従業員のリストラと不採算部門の売却です。数値は一時的によくなります。実は採算部門を支えていたのは不採算部門だったということが多いのです。「企業再生のプロ」は高額な報酬を得て会社を去っていきますが、残された従業員は、屋根もない、柱だけ残された家屋に残されたのも同然です。

 私は、約30年、地方スーパーの再生を生業(なりわい)としています。弱った企業にコスト削減をしては絶対にいけないのです。これから述べるのは、世間一般の常識とはかけ離れているかもしれません。しかし、たくさんの企業が甦り、今では押しも押されぬ大繁盛店になっているのです。

 まず、経営者の意識改革です。不振の最大の原因は大型店の真似をしていることにあるのです。経営資源に乏しい地方スーパーは、地方スーパーでしかできないことをすればいいのです。大型店が捨てた商品を拾う、大型店が「効率が悪い」といって外注に出している工程を内製化する、大型店が店舗を無人化するならこちらはあえて人を売場に投入する、すべて「逆張り」で行くのです。

 そして、借金は返そうと思わないことです。同時に自分が儲けることよりもお客が儲けることを最優先に考えるのです。

 「店はお客様のためにある(須田泰三先生)」「ナガタ(あなたがたのしいと思って下さることが私の幸せです:秀真伝)」「ナガサキ(あなたが幸せになることが先です。私は何をしてあげましょう:秀真伝)」。商いの原理であり、古代日本人が大切にしてきた生き方です。

 お客の喜びを自分の喜びと思えるように決意すること。ここに一筋の光明が見いだせるのです。

 次に、お金を集めます。銀行など金融機関がお金を貸してくれればいいのですが、たいていの場合、閉店セールをして、在庫を一切売り払って換金し、新生開店の資金とします。そして、新しい商品、新しい売り方に挑戦するのです。

 新しい商品、新しい売り方は新しいお客を引き寄せます。新しい商品、新しい売り方がお客の心を打てば、そのお客は必ずリピーターになります。リピーターを増やすために、更なる新しい商品、新しい売り方に挑戦し続けるのです。古いステージから新しいステージへと、バージョンアップとモデルチェンジを繰り返すのです。そうすると、業績は2年で3倍、5年で7倍になります。

 業績が拡大すると運転資金も必要になります。利益もたくさん出ます。この段階になると、銀行は手のひら返しで、「返済はしなくていいからもっと借りて欲しい」と言ってきます。

 この時、設備投資して新規出店するのです。売場面積は既存店舗の3~5倍、理想は店舗売場面積500坪(店舗面積800坪)・駐車場200台です。そして、既存店を閉め、新規店舗に引っ越すのです。家賃と投資コストは増えますが、運営コストは以前と同じです。驚くほど利益も出ます。利益の一部を今まで苦労をかけてきた従業員に還元するのです。

 支給してから後悔するぐらい思いっきり賞与を奮発すると、翌日から従業員の顔つきと動きが変わってきます。従業員の顔は笑顔で溢れ、お客と同僚に優しく接するようになります。お客から、「この店なんかあったかいわ。従業員は親切だし。ますますファンになったわ」と言われるようになります。

 すると、輪をかけて業績は上昇し続けるのです。リストラも経費削減も粗利益率アップもないのです。従業員が喜びながら、楽しみながら、幸せを感じながら新しいことに挑戦すれば、業績が必ず改善し、店舗は喜びで溢れかえるのです。

 政府の景気対策も同じです。「国の借金が1,000兆円あるから増税だ」とすれば、国民はますます疲弊します。生産性の悪い中小企業は退場せよ、労働の流動性を高めよなど構造改革を推進すれば、企業の屍の山を築きます。巷に失業者が溢れます。退場した企業の代わりには入場してくるのが外資です。国民は奴隷として一生安い賃金でこき使われます。

 このような景気状態のときに増税をしてはいけないのです。構造改革を進めてはいけないのです。

 すべきなのは減税と公共投資です。減税は消費税を0%にすればよいのです。さすれば、国民の購買意欲が増し、企業の投資意欲も出てきます。そういった企業に銀行はどんどん融資すればいいのです。公共投資とは需要の創出と雇用の確保です。お金が回りだし、国民の所得が増えます。

 結果として、国民が未来に希望を見出せば、放っておいても税収は増えるのです。

 外国に流出した資金を国内に回るようにするのです。日本の株式持ち合いはよくないと言って、外国人投資家を招き入れた結果、不採算部門は外国企業にたたき売られ、経営陣には外国人投資家の傀儡が就任するのです。

 環境問題からガソリン自動車が販売禁止になったら、日本は先進国ではなくなります。子供や孫たちが就職する会社がなくなるのです。わけのわからない国際基準に尻尾を振って従うのはやめにしませんか。


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