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読書#9-2「21 Lessons」著:ユヴァル・ノア・ハラリ

この記事の位置づけ

「21 Lessons」の読書録。以下の続き。政治面での難題の章での気づきを書く。

気づき(政治面での難題)

オフラインvsオンライン

スイスにいるいとこと話すのは、かつてないほど簡単になったが、朝の食卓で配偶者と話すのは難しくなった。

21 Lessons

 ここ数十年での大きな変化としては、インターネットの台頭、それからSNSの普及だろう。世界中の誰とでも話そうと思えば話すことができる。今となっては別に不思議な話ではないけれど、少し前だったら、夢のような話だ。

 そのおかげでコミュニティは大きくなった。著者の言では、グローバル化した。つまり国という単位でのコミュニティの他に、まったく別の、空間を伴わないコミュニティが発生したのだ。

 私達は、いくつものコミュニティに重複して属している。たとえばGAFAM、もしくはこれから誕生する何か。今はまだ黎明期ではあるが、いずれはこのコミュニティは国のような力を持ち始めるだろう。そのとき、私達はどのコミュニティに属するかを選択しなくてはならない。

 ただ、私達が人である以上は、大前提が存在する。人には身体があるということだ。

 これは、いくら電脳世界が発達したとしても覆ることはない。私達は、どうやってもオフラインのコミュニティを無視することができないのである。

 今、オンラインでのコミュニティを活発にする事業はたくさんある。一方で、先に述べたようにオフラインのコミュニティは人から切り離せないということを鑑みて、オフラインのコミュニティを活発にする事業が流行するのではないかと著者は考えている。そのとき、FaceBookなどはどうするのかと。それは確かにおもしろい仮定の話だ。

ナショナリズム

今日の国民国家は、人間の生態の不変の要素ではないし、人間の心理の避けようのない産物でもない。

21 Lessons

 ユヴァル氏は、アナーキストなのだろうか。この本を読んでいて、ふとそう思わせる部分があった。それは私の理解が浅いだけなのかもしれないが、少なくとも彼は国という単位で完結することを是としていない。

 グローバル化した今の世界では、国の利益だけを追求するようなナショナリズムには問題があると述べている。それは確かにそうだ。ドナルド・トランプがアメリカの大統領になったとき、彼のナショナリズムに不安を覚えた者は多いだろう。

 いき過ぎたナショナリズムの例としては、ドイツのヒトラー政権などが挙げられる。自らが他よりも優越しているとして、他を虐殺する。そんな歴史を繰り返してはならないというのは共通認識としてよいはずだ。

 とは言いつつも、人が肉体を持つ以上、国というコミュニティはなくならないと思われる。そうすれば必然的にナショナリズムは発生する。グローバルとナショナリズム。この二つの背反する考え方は、どう折り合うのか。

 なんとなく、コンピュータアーキテクチャが分散と集中を繰り返しているのに似ている気がする。とすると、グローバリズムとナショナリズムも行ったり来たりを繰り返すのか。

 今の情勢から鑑みると、ナショナリズムに振れている気がする。

イスラエルから見た日本

この「国家神道」を、日本のエリート層がヨーロッパの帝国主義者から学んだ、国民を民族と言う非常に近代的な考え方と融合させた。

21 Lessons

 宗教というコミュニティを語る上で、この本では日本を例としてあげている。宗教をうまく利用した例として。

 著者はユダヤ教を信仰していそうな口ぶりなのだが、どうも宗教をツールとしてとらえているふしがある。学者としては正しい思考なのだと思うが、信者としての自分と自己矛盾は起こさないのだろうか。信仰と縁のない私には理解できない感覚だと思う。

 彼の視点で日本を捉えると、日本という国は、エリート層が、天皇を中心とした神道という宗教を利用して、国民を民族として統合したということらしい。

 この理解の正否については問わない。私はこの手の話に関して別の本も読んでいるので持論もあるが重要でないので述べない。むしろ、ここでおもしろいのは、イスラエルから戦時中の日本を観測するとそういう理解になるということだ。

 この本の優れているところは、しっかりと参照した文献を書いているところである。彼が日本について学んだ教材は「近代日本の誕生」。これは訳されたもので、原題は、イアン・ブルマという作者の「Inventing Japan」。海外から見た日本について興味があるので、いずれ読んでみたい。

  日本の内側で、あの戦争は間違っていただの、正しかっただのうんぬんかんぬんやるのはわるくはないけれど、それではラチがあかないのであれば、一度外から眺めてみるのも一つの手ではなかろうか。

 

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