読書#10「現代語訳 論語と算盤」著:渋沢栄一, 訳:守谷敦
どんな本?
引用を読んで、意味がわかるだろうか。わからないだろう。私もわからない。
この本を読んで理解できるかは怪しい。少なくとも私はあまりよくわからなかった。私の解釈を述べるのであれば、算盤というところを経済もしくはビジネスと読み替えると意味が通るのではないだろうか。
論語とビジネスはかけ離れているように見えて、実際のところ密接に結びついている。論語の中で儲け話など書かれていないが、良いビジネスをするための作法が、論語に書かれているというかんじ。
この本の原文が書かれたのは1916年。当時の文体では現代人は読めないだろうとのことで、現代風に書き直したものが「現代語訳 論語と算盤」である。
書かれた時代を考えればわかるだろうが、相当厳しい本である。ナンパな現代人にはいささかきついと感じるかもしれない。もちろん現代に通じる考え方も多い。100年前に書いているというのに普遍的な考えに至れる渋沢栄一の聡明さには感嘆せざるをえない。
ただ、武士道というか、旧来日本の厳格さが、如実に表れており、読んでいて、自らのなよなよとした生き方を問答無用で反省させられる。
私も読んでいて、無意識に背筋を伸ばした。
最近たるんでるな、ちょっと誰かに喝入れてほしいな、よし、渋沢先生、ちょっとお願いしやす! という人は読んでみるといいかもしれない。
気づき
向上したくば敵をつくれ
そうね。そうなんだけどね。厳しいよね。
競わなくては発展はない。ここを否定することは難しいだろう。自由競争が活発な分野、たとえば飲食業やゲームや漫画などのエンタメ業界では、顧客を取得するために、サービスの向上や他との差別化が進み、多種多様となっている。一方で、どことは言わないが業界を独占して、競争のないところでは、サービスがわるく、発展性に乏しい。
発達のために競争は必要だ。しかし、一方で、現代では他者との競争が必ずしも幸福をもたらすわけではないという思想もある。他者比較で自分を定義するのではなく、自分で自分を肯定してあげる、いわゆる自己肯定感を高めることが、幸福感を高めるために重要だという考え。この考えには、必ずしも競争は必要ない。
大事なのは、目的をはき違えないことだ。競争は自らの成長のための一つの指標としてとらえ、決してそこに重心を預けないことではないかと私は思う。
天命であるから仕方ない
逆境は誰にでも訪れる。大事なのは、それが、天の作り出した逆境なのか、人の作り出した逆境なのかを見極めること。
天の作り出した逆境ならば、もう諦めよう。人(自分)の作り出した逆境ならば、これまでの行いを反省し正そう。
この精神でいられたら、どれだけよいだろう。逆境に陥ったら、どうしても慌てふためき、頭を悩ませ、嘆き悲しみ、どこぞの誰かを恨み呪って、結局のところ何もしないことだろう。
何でもかんでも自分のせいだと思ったら気が重くてたまらない。一方で、すべて天のせいと思っては、成長は望めない。考え方は正しいが、人のせいか天のせいかを分別することが最も難しいように思える。
何事もバランスだ。私はどちらかといえば何でも自分のせいと考え、何ができたかと悩む方なので、本当に自分に原因があるのかを見極め、なるべく天に責任を転嫁しよう。いささか都合のいいことであるが、天はそのくらい大目に見てくれるだろう。
得意なことを志とせよ
100年前から、得意ことをやれと言っていたのだなと驚いた。
どちらかといえば、日本の教育は短所をなくすような方針で行われていると思うのだが、少なくとも渋沢氏は長所を伸ばすべきと考えていた。
今となっては、多くの人が言っている。得意なことをやれ、と。実際にそうして成功したのだろうし、そちらの方が効率的に思える。だとすると、本当に、今の世の中は、学校教育をまじめに受けていた者ほど損をする。
この本では、長所を伸ばせと言っている。けれども、その前に長所と短所を比較考察せよ、と言っている。まずはいろいろ試し、自分の中で何が長所か短所かを分別することが必要だ。
いろいろやってみる。まずはそれから。
本を読むだけではだめ。実践しなくては!
耳が痛い。
本を読むだけ読んで達成感に襲われることはよくある。あぁ、いい本を読んだ。記事を書こう。それっぽい気付きを書いて。それで終わり。
これでは、意味がない。本を読んで、何かに気づいたのならば、一つでいいので行動に落とし込み、実践するべきだ。
わかっている。
わかっているのだが、これがなかなか難しい。いや、私にとっては、だが。ちゃんと実践している者はいるのだろう。そうしたものは、着実にステップアップしているに違いない。私はそんな人に憧れる。
一つでいいから、やってみよう。まずはそれからだ。
そんな決意を何度したことか……。いや、今度こそ。
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