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読書#2 「人生の決め方」著:山岸洋一

どんな本?

 数々の制限から自分を解放し、自分の力を取り戻す。そしてその結果生み出された「余力(バッファ)」を使い、影響力を強め、より自由になることを目指す。~人生の決め方~

 あなたは自分のことをどのくらいわかっているだろうか。何を達成したくて、何を大事にしていて、何にどのくらいの時間を使っている? 実際のところ、私達は自分のことをよくわかっていない。物事を自分で決めているように思えて、周囲の影響によって、もしくは制御不可能な無意識によって決めてしまっている。それで自分の人生を生きていると言えるのか。この本では、自分のことを制御し、その上で理想と現実のギャップを埋めるようにしていく思考法「イニシアティブシンキング」を紹介している。

 この本は主に3つのことを述べている。セルフマネジメント、理想の掘り出し方、理想と現実のギャップの埋め方だ。

 セルフマネジメントでは、時間とコミュニケーションと感情の制御の仕方について述べている。それぞれについては、様々な本でマネジメント方法が書かれていると思うが、著者が大事だと思うものを中心にまとめているというかんじだ。

 理想の掘り出し方では、本当の夢、人生の目的をどのように探していくかについて述べている。自分史を書いてみるとか、明日死ぬとしたら何をするかとか、具体的な方法が記載されており、興味深い。

 理想と現実のギャップの埋め方では、そもそもいったい何が理想と現実を乖離させているのかについて言及している。著者は、乖離の原因は無意識領域にあり普通にしていてはそれに気づくことはできないと述べている。ゆえに意識的に探すことが必要だという話である。

誰向け?

 万人向け。専門性はない。よくある啓発本といったかんじ。著者が理系なのかもしれないが、人をシステムとしてとらえているふしがある。情報処理が追い付かずオーバーフローするとか、周囲にブラックボックスが多いとか、脳内プログラムは制御できないとか。この辺りの単語に拒絶反応が出る人には向かないかもしれない。

気づきは?

人間は適切な目標を設定することができない生き物である~人生の決め方~

 著者の考えで、ハッとさせられたのはこのフレーズだ。目標設定がうまくできないことが常々悩みだった。それができない自分はだめな奴だなと思っていた。だが、そもそもこれけっこう難しいんだぜと言われるとちょっと安心する。だからといって何か解決するわけではないが。

自分の人生を生きていなければ、目標設定型のノウハウを知ったとき、机上の空論とも言える目標を平気で設定してしまいます。~人生の決め方~

 解決法としては、いろいろこの本に書かれているが、つまるところ、この引用文の裏返しで、自分の人生を生きることだと思う。そして、自分の人生を生きるためには、自らのリソース(時間、人脈、感情、私はこれに金を追加したい)を管理するのが第一歩だというのが、この本で述べたいことではなかろうか。

 つまり、自分の手綱くらい自分で握れということだ。

 このフレーズ、ちょっと気に入っている。まぁ、みんな似たようなこと言っているけれどね。似たようなフレーズでいちばん好きなのは中島みゆきさんの宙船の一節。

その船を漕いでゆけ。お前の手で漕いでゆけ。お前が消えて喜ぶ者におまえのオールをまかせるな~”宙船”、中島みゆき~

 話は変わるが、客観視の方法について気になった。この本では、自らの理想、夢の掘り出しのための客観視の方法としていくつかの方法を紹介している。それらはたいてい自分で客観視する方法だ。これは別におかしなことではない。よくある客観視の方法論だし、きっと効果もあるのだろう。対比したいのは、為末さんの「諦める力」に書かれていた内容だ。彼の本の中では、客観視は自分ではできないので他者にアウトソーシングした方がいいと書かれている。これはこれで潔いなと思ったので印象に残っている。どれだけテクニックを駆使しても自分は自分なので完全な客観視はできない。さらに推し進めると、為末さんは別の講義で、客観視とは複数の視点からの景色のことだと述べている(すっかり為末さんのファンになってしまった)。つまり、他者一人に客観視してもらっても、それはその他者の主観であって客観視ではないということだ。客観視するためにはいろんな視点から自分を捉える必要がある。それはいろんな他人の意見を聞いてもいいし、いろいろと自分の立ち位置を変えて自分を省みてもいい。

 この本の客観視の方法を批判しているわけではない。ただ、たとえば自分史を書くことを例にあげると、それを自分の視点から書けば、結局は自分の主観だということだ。客観視するためには、誰か知り合いにインタビューを頼むとか、他者になりきって自分史を書いてみるとか、そういったアプローチが必要なのではないかと考えたわけである。

 いずれにしても、こういった方法論は立派だが、結局は実践できずに終わる。時間管理術として15分置きにログを残せというものがあったけれど、そもそも日記も三日坊主となる私にはむりな話だ。もう少しスモールステップを踏む必要がありそうと思う今日この頃である。

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