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読書#15-1「BRAIN DRIVEN」著:青砥瑞人

どんな本?

本書の役割は、神経科学が新たに示してくれる叡智を、哲学や心理学でこれまで育まれてきた叡智と照らし合わせることである。

BRAIN DRIVEN

 この本では、モチベーション、ストレス、クリエイティビティの三つのトピックにおいて、それぞれ神経科学的見地から、脳の中で何が行われ、そしてどのようにすれば、それらがコントロールできるかを提示している。

 初めに言うが、ものすごくいい本、必読である。

 kindle unlimitedで読めてしまうお得な本であるが、正直、驚くほどに科学的にそれぞれの概念的なトピックについて説明している。

 私が、この本のいいと思うところは、専門性を損なわず、かつ、平易な文であるところである。文中で用いられている専門用語は多く、それらを正確に追っていけばかなり専門的な話を知ることができる。一方で、専門的なところをある程度読み飛ばしても、結論めいたものを理解できる構造になっており、たくさんの気づきを与えてくれる。

 重ねて言うが、本当にいい本である。ぜひおすすめしたい。

気づき(モチベーション)

 気づきが多かったため、3回に分ける。

モチベーションとは?

モチベーション・メディエータとモチベーションの違いは、平たく言うと、やる気になっている状態と、やる気になっている自分を認知した状態の違いである。

BRAIN DRIVEN

 モチベーションに関する書籍はいくつかあるが、この本ではまずモチベーションを定義するところから始まる。もうこの時点でいい本な予感がする。

 正確なところは読んでみていただきたいが、私の理解では、モチベータ:モチベーションを動機づけるもの、モチベーション・メディエータ:やる気になった状態(無自覚)、モチベーション:やる気になった状態(自覚)となる。

 モチベータとは、たとえば報酬だ。お金とか、やりがいとか。モチベーション・メディエータは理解が難しいけれど、これはモチベータをやる気に変換するシステムと捉えるといいかもしれない。お金ー>やる気の変換装置だ。そして、やる気が出てきたぞ、と気づいたとき、モチベーションが生まれたとなる。

 だから、何? となるかもしれないが、こうやって分解してみると、何をどうすればモチベーションが高まるかわかる。まずは自分にとってのモチベーション・メディエータが何かを理解すること、そして、変換効率を高めること。次にモチベータを与えることだ。

 モチベーションとはアウトプットなので、モチベータとモチベーション・メディエータを理解しなければ、モチベーションを制御することはできない。

 なんか、横文字多いな……

根性論では限界がある

モチベーションにはエネルギーが必要

BRAIN DRIVEN

 モチベーション、つまるところ、欲求というものには、エネルギーが必要で、それを使うのはそもそも難しいとのことである。

 え? そうなの?

 モチベーションが湧かないのは、自分に向いていないとか、だらしがないからだと思っているふしが、実のところあったのだけど、それ以外に理由があるらしい。

 これはマズローの唱えた欲求段階説に則っているが、まず、欲求には生理的な欲求と、高次元な欲求がある。生理的な欲求とは、呼吸をしたり、飯を食べたり。高次元な欲求は、英語を勉強したいとか筋トレしたいとか。

 生理的な欲求は自然と湧いてくる。これも一種のモチベーションであるが、これを高めるのに努力することはあまりない。一方で、高次元な欲求は、なかなか湧かない。こちらにはエネルギーが必要なのだ。

 あー、なるほど。つまり元気なときにやれってことかしら、と思ったのだけれど、ここに記載されているのは、別の解決策。

 エネルギーの転換。

 つまり、生理的な欲求によって高まったモチベーションのエネルギーを、そのまま、高次元な欲求を満たすためのエネルギーに転換できるという話である。

 食べたいものを目の前において、あー、食べたいなと思っても食べずにエネルギーを貯めて、よし、英語勉強しようと切り替えると、貯めたエネルギーが英語の勉強のモチベーションに転換されるというのだ。

 ほんとかよ、といささか懐疑的ではあるが、モチベーションが高いという脳の状態が、ただの分泌物の量の問題だとすると、生理的欲求によりつくられたモチベーションの高い脳の状態を、高次元の欲求を満たすために使うこともできるのかもしれない。

 何より、おもしろい考え方だ。一度やってみるのはいいかもしれない。

モチベーションにも 段階がある

どうなるかわからない快のポテンシャルにモチベートされるSEEKは曖昧性のリスクを背負ったうえでのモチベーションだ。

BRAIN DRIVEN

 曖昧な可能性に対してやってみようと考えるモチベーションと、既に報酬のわかっていることに対してのモチベーションがある。

 この分け方はなんとなくわかる。後者はできるけど、前者は難しい。この本では前者を達成するためには、適度な楽観主義が必要だと述べている。自分ならできると思い込むことだ。

 これこそなかなか難しいのだけれど、曖昧な可能性というのは怖い。失敗したらどうしようと思ってしまうのは仕方ないのではないだろうか。これは次章のストレスでも説明されているが、失敗は成功への途中である、と脳に記憶させるのが大事とのことだ。そうでないと失敗を乗り越えられない。

 脳に記憶させる。この本では、精神論をあまり語らない。モチベーションとはただの脳の学習装置のアウトプットだと捉え、学習装置に何を記憶させなければならないか、どうやったら記憶させられるかを記述している。

 私も、意識して脳を鍛えてみよう。

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