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【創作小説】近。

愛しておりました。一時は焦がれるほどに。嫉妬する夜さえありました。
この傷だらけの腕で、抱きしめたいとさえ、想い耽りました。

然し、今この晩には、貴女が憎くて仕方がないのです。
立場など関係あらず、ただ聖母の様な貴女を汚している醜い生き物を、
灰にしてしまいたいほど。この心は、燃やし尽くしたいと泣き叫んでおりますよ。

貴女のカーテンの向こうに純白が無いことを知り、愛しい貴女さえ憎くて仕方がない。

自分さえ憎い。
この終止には、心中を願うのならば貴女でしょうや。

瞳の色、血液に混ざるは別の男。それでも、それでも貴女が優しいから。
生まれた根源が違えど、差別なく私を愛す貴女を、貴女だけは汚れていないと、
勝手に信仰し、期待さえ芽生えさせ、その芽を嫉妬と云う感情で摘む私を、
貴女の瞳にはどう見えるのでしょうか。

可愛いと言ってくれた過去は、今も変わりませぬか。

抱きしめてください。私を、その優しい目で見てください。
会話もあの場所で咲かせましょうぞ。
桜を口に含むように、
愛おしく、舐めてください。

今までの人生で、貴女が頼んだ命を宿してからと云うもの、
あの女は私を見捨てました。
一人の男に殺されてまで、色欲を歩いたのです。
ですので触れることなど避けてきました。きっと私はあの女が嫌いなのです。
触れるとするなら葬式の日、ただ一夜でしょう。

それでも貴女は違いました。
私を育て、無かった愛でさえ、貴女から学んだのです。
子供は可愛いと、遊具は楽しいと、食事は美味だと、貴女が笑うから、覚えたのです。

ですが、私に触れないのは、私がもう、子供ではないからなのでしょうか。
それでもいい。ただもう一度、決して裕福ではないあの汚い部屋で、
貴女と笑いたい。

今晩は、

貴女、家族を、

愛しております。

一時も離さないと。

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