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初冬の忘れ物

はだざみいでございますねえ。

将軍が降臨して過半が冬景色。
わが街も白色に蹂躙され、何もかもモコモコの有毛動物のようになっちまいやがった。
輪郭を曖昧にする白砂のせいで段差がわからなくなる。
さらに何日か経つと街中が半透明の物質に覆われる。
そんなわけで地域の足は鈍足に変わるので徒歩通勤と相成った。

しんと張りつめた空気が染み渡る世界だ。
人気の少ない通りにはまだ手付かずの白がある。
それをいっちょ踏みしめてやろうと寄り道をした。

刹那、足先が意図せず前へ出る感覚。
二層式の罠だ。
手付かずの白と見せかけ、その下には押し固められた粒が反撃の機会をうかがっていた。
摩擦係数低めのそれにまんまと引っ掛かりつんのめる。
なんとか前へ出た足に呼応するように手を振り上げバランスをとった。
だがそれでもまだ足は先へ進もうとする。
膝が伸び切る=死なのでもう片方の足を前へ出す。
ブルータス、お前もか。
反対の足も無情にスライドする感覚を得ながらまたも手を振り上げる。
なんとか膝が伸び切らないように膝を曲げる。
二、三歩その間抜けな体勢で進んだろうか。
突然パプリカの「明日も晴れるかなー」の振り付けをしだす人となった。

今年なら縄跳びダンスをできた方がまだカッコがついただろうがfoorinで勘弁。
なんとか尻を濡らさずに済んだ。

そうして身を打ち付けることなく出社に成功した私であるが、会社について気付いた。
免許証が見当たらないのだ。
普段から社有車に乗るもんで、スマホのポケットにそれを入れている。
が、がらんどうのポケットが見える。
めちゃくちゃ心当たりがある。
さっきスマホを持った状態でパプリカを踊ったのである。
しかも割と激しめのパプリカを。
BABYMETALとコラボしたんかな?くらいの。
日ごろから目をつけられている私はトイレ行く風を装い、しれっと外へ出た。
急ぎつつパプリカを踊らぬよう現場へ向かう。

曲がりくねりはしゃいだ道。
青葉はないけど駆け回る。
探し回り日差しの街。
誰かが呼んでいる。
冬が来る風が立つ。
あなたに会いたい。
見つけたのは免許証。

あった。
小道の脇に免許証がぶっ刺さっていた。
拾い上げてそそくさと会社に戻る。
が、誰かが呼んでいる。
手招きする上司。

明日も晴れるかなー?


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