【ネットアラシ】(書く予定のフィクション小説のプロットです)

本作は、「ホラー」か「ミステリー」であわよくば創作大賞に応募したいなぁと考えてる小説のプロットです。
まだまだ不十分なプロットですけど、自分の為の整理として現段階でまとめてみました。

【ネットアラシ】(仮題)

【あらすじ】


某SNSで知り合った高齢男性のSと中年女性のF。
一般教養や常識を欠く幼稚な二人は、妙に意気投合するところもあり、世代や性別を超えた友情を築く。
そして、二人で「笑い」をテーマにしたサークルを立ち上げようと計画する。
しかし、Fのフォロワーを中心にサークルへの入会希望者が増えてきたにもかかわらず、FはSNSのアカウントを取り直し、別人としてやり直したいと考えるようになり、Sも協力することに。
その為に、フォロワーやサークル入会希望者に対して嘘をつく必要があったのだが、二人の演技は痛々しいぐらいにわざとらしく、稚拙なものだった。
偶然そのやり取りを見ていたあるユーザーXは、Bという別のアカウントを使って二人を揶揄うことにした。
いわゆる、アラシ行為だ。
そう、Xは表向きは良識的に振る舞い、フォロワーも多い人気のユーザーなのだが、裏では「息抜き」としてアラシ行為を楽しむ趣味があったのだ。
そして、二人はXの捨て垢のBにより、攻撃されることになった。

【登場人物】


S:アラシ被害者
非常識、無教養、頑固で融通が効かず、自分が絶対に正しいと信じる典型的な「老害」で、無分別な発言も多い。
SNSやネットの利用に不慣れで、初歩的な理解も不十分。

F:アラシ被害者
リアルメンヘラ。妄想と現実が混在して、統合失調症の可能性が高く、やはり無教養で一般常識も著しく欠如した四十代半ばの独身女性。
短絡的な思考と脊髄反射的な言動が多い。

SとFは、二人とも自己評価がとても高く、思い込みも激しいのが共通点。
すぐに頭に血が上り、見境のない反射的な言動も目立つ。
妙に波長が合う理由を説明する為に、同じ宗教を信仰しているという設定も検討中。

X:SNSユーザー、アラシ加害者
正体は不明だが、Fのフォロワーだった。
本垢では、皆んなから信頼されており、それなりにフォローもフォロワーも多い人気ユーザー。
ネットの仕組みを熟知している。
しかし、少し心に闇を抱えた人物でもある。
その為、定期的に捨て垢を利用してネットアラシを行い、ストレス解消をしている。
SとFは、Xにとっての格好のターゲットになった。

B:アラシ実行アカウント
中の人はX。
Xがアラシ行為を実行する際、捨て垢を使うのだが、今回利用したアカウントのユーザー名がBだった。

Y、M、I:SNSユーザー
全く無関係なのに、勝手にSとFの思い込みにより犯人に仕立て上げられたユーザー。
当然ながら、三人ともアラシ行為について全く身に覚えもないし、なんの証拠もあるはずがないので、SとFの愚行なんて全く意に介してもいない。
そのことが、余計にSとFを苛立たせている。
思い込みの激しいSとFは、「ひょっとしたら違うのかも……」なんて発想はなく、執拗に粘着している。
尚、Y、M、Iの三人とも、Xとは何の繋がりもない。


【プロット】


『第一章』

かなりアレなジジイSと、完全にいっちゃってるおばさんFがSNSで出会うところから物語は始まる。
低脳コンビの誕生。
ネットの世界だからこそ、そして、幼稚で無知だからこそ通じ合うシンパシー。

しかし、あるユーザーXがSNSで繰り広げられた二人の白々しい嘘を目にしてしまう。
Fがアカウントのリセットを目論んでいたのだ。
その為に一度退会し、別人になって戻ってくるという計画らしい。

それだけなら御勝手に、という話だが、Fは沢山のフォロワーや自らが勧誘していたサークルの仲間にまで嘘をついて辞めていった。
しかも、退会して数時間後には戻ってきて、黙っておけばいいのにSのところにきて、はじめましてを装いながらも、誰がどう見てもはじめましてじゃない臭い芝居をしていた。
Sもそれに合わせて、見え透いた演技で応えていた。

そのやり取りをたまたま見ていたXは、「コイツらはアホそうだ」と判断し、アラシ行為で二人を揶揄って遊ぼうと思い立つ。

Xは元々Fのフォロワーだった。
なので、Fが「退会することにした」という投稿をリアルタイムで目にしたのだが、その時から胡散臭さを感じ取っていた。

Sのことはほぼ知らなかったものの、Fの投稿に必ず顔を出してくる変なキモいジジイという印象は持っていた。
また、Fのフォローをしていたけど、明らかに一線を変えた頭お花畑発言が笑えるからであり、Fのファンでもなんでもなかった。

Xは、年に一度ぐらいの頻度で「コイツを揶揄ったら面白そう」と思った時に息抜きのような感覚でアラシ行為を行うという、悪質な趣味があった。
しかし、近年はアラシの対応スキルに通じているユーザーが多い為、ターゲットにし易い獲物にはなかなか出会えなくなっていた。

今回見つけた二人は、明らかに常識も知性も欠けており、ネットにも不慣れっぽく、Xにとっては久しぶりに見つけた格好の獲物だった。

そこで、Xは元々持ってる沢山のサブ垢の一つを、今回のアラシ用の捨て垢に使うことにした。
捨て垢は、Bというユーザー名で登録した。
このアカは、十年以上も前に登録したフリメで取得したアカだ。
フリメの登録時から住所も電話番号も変わっているし、元々本当の情報なんて登録していないので、万が一のことがあっても個人情報特定に至る可能性は低いだろうと判断した。

少し時系列を戻すが、Xは、二人を揶揄おうと決めてからは、二人のやり取りのログを辿って適当にスクショを撮っては繋ぎ合わせ、二人を糾弾する準備を行っていた。
その頃にはFは既に退会し、すぐに別人になりすまして再登録して、Sと一緒に「Fって誰?」と臭い芝居を打っていたところだった。
そして、いよいよXは、Bのアカウントで爆弾を投下した。

二人のやり取りのスクショを晒し、二人の嘘を口汚く罵りながら暴くという投稿を行い、Sのコメント欄にURLを貼り付けたのだ。
無知で低脳なSは、スルー出来ずにブチ切れるという、Xの期待通り、かつ予想通りの展開になった。

もし、ここでSがコメントを無言で削除し、Bをブロックし、その後も話題に出すことさえもせずにスルーを貫いたなら、アラシ行為は空振りとなりBは退散するしかなかっただろう。
なのに、Sの対応は真逆だった。
アラシ行為に理由や目的を求め、コメントの削除もブロックもせず、まともに相手にしてしまうという、最悪の悪手を踏んだのだ。

しかも、Fも飛んできて加担するという、ますますアラシにとっては好都合の展開になった。
期待以上のリアクションに、Bは失笑した。
今時、アラシに食ってかかる人なんて、絶滅危惧種だろう。

思い込みも激しい二人は、「嫉妬された」と噴飯ものの何とも都合の良い解釈を行い、Bが誰なのかと必死に暴こうとする。
警察に行ったり、運営に通報したり。
その様子を、Bの中の人であるXは、ただ笑って眺めている。

また、SNSの運営部から、プロバイダ規制法に則る削除要請のテンプレをもらっただけで、「コレでBに前科がつく」と的外れも甚だしいコメントを残すなど、アホさを全開に闘おうとする二人。
その書類を出したところで、プロバイダは「削除して欲しい」と要請することしか出来ないのに、それを出せば逮捕されるんだという園児並みに短絡的で、超絶に飛躍し過ぎた無知を晒し、Xはますます大ウケしていた。

結局のところ、二人は個人情報開示請求のやり方も掛かる費用と時間も、どこを相手に何の訴訟が必要なのかも、何も知らないことを曝け出しただけだ。
Xはますます安心するのであった。

実際、X本人は、この二人がまさかここまでアホだったとは想定していなかった。
ネットアラシにとって、一番堪える反撃は徹底スルーということは誰もが知っていることだ。
Xのアラシ行為も最近は不完全燃焼に終わることが増えてきたのだが、その理由はスルー対応されることが増えたからだ。

また、完全なスルーは出来なくても、適度にあしらう人がほとんどだ。
この二人のようにアラシに対して血相を変えて食らいついてくる人は、今ではまずいないだろう。
それだけ、二人は無知だった。
そして、愚かだった。

Bは、逆に呆れ果てて失笑しつつ、アホ過ぎて憐れにさえ思い始めて、もう散々楽しめたことだし、と退散を視野に入れ始めていた。
もう、息抜きは済んだのだ。

ただ、その前にBは、Sの異常性を晒すために「公開討論」の申し出を行っていた。
もちろん、そんなことやる気はさらさら無いのだが。
予想通り、いや予想以上にSは食い付いてきた。

Sはアラシ相手に異様なほどにやる気を出し、アホみたいに固執して、バカさと病的なしつこさと好戦的な性格をセルフでアピールし続け、皆んなに引かれる羽目に。
もっとも嫌われるタイプのジジイだ。
でも、皆んながドン引きしていることにも気付かないS。
むしろ、正義のヒーロー気取りで、尊敬を集めてると勘違いしているぐらいだ。

Sは、何度もBに「公開討論を始めよう」と挑発したり呼び掛けたりを繰り返すようになる。
どこまでも残念な人だった。
B……いや、Xにとっては思う壺の展開。
これでまた一つ、目的が達成された。
Xの笑いは止まらない。

その後、Fは実は親が警察のエリート幹部(この発言は、友達とか知り合いとか元カレとか、設定は微妙にコロコロ変わる予定)だとか、身内は皆んな警察だとか、眉唾の話を吹聴し始める。
国家権力がバックに付いてると、何でも叶うと勘違いしている低脳丸出しのなんちゃって武装だ。
挙句、本アカが特定出来たと虚言を残し、SNSを再び退会した。


『第二章』

Fが消えた直後、今がチャンスとばかりに、XはBのアカウントを削除した。
もう十分に楽しんだし、今Bがいなくなると、それはそれで楽しめそうな予感もあったのだ。

まず、予想通りというのか、Sが狂ったように吠えていた。
しかも、憐れなことに、まだ「Bとの公開討論」に執着しているようだ。
これには、Xもただ苦笑するしかない。
ここまで間抜けなジジイだったとは。

しかし、その直後、Xの予想外のことが起きた。
「Fの友達」Rという設定で、Fが復帰したのだ。
しかも、RというハンネはFに名付けてもらったとの触込みで。
すぐ戻ってくるとは思ったが、まさかこんな捻った設定で来るとは、完全にXは裏を突かれた気分だ。
同時に、面白くなってきた、とXは思った。
でも、当面は様子見することにした。
その方がFの妄想が聞けて楽しそうだからだ。

Fは、どうやら今回の復帰は、Sにも黙っていたようだ。
なので、Sも、Rが本当にFの友達なのか信じ切れていないようだ。
F本人かも、いや、Bの成りすましかも、と小さな脳をフル回転して考えるS。
文章のクセ、書式のクセはもちろん、使う語彙も言動も、誰がどう見てもFなのに、馬鹿には身近な友達でさえ見抜けないようだ。

そこで、この機を利用したイタズラを思い付いたXは、別の捨て垢を利用して、本物のFに成りすましてSにコメントをいれた。
「Sさん、騙されないで!私は友達をSNSに誘ったことないし、あんな変な名前つけないよ。RこそBかもしれない」と。

Xは遊び心から、その時のハンネはSのアナグラムにした。
アラシがよく使う手段だ。
少し知恵がある人は直ぐに気付くリスキーな遊びだが、Xは知恵なんてないSはまず気付かないだろうと自信があった。
実際、全く気付かなかったようだ。
もしここで気付いていれば、また違う展開になったのに、Sは折角のヒントを不意にした。

単純バカなSは、半信半疑ながらも直ぐにRに突撃した。
「あなたは本当にFの友達ですか?」と。
もう、探りの入れ方とか言動とか、何かもが短絡的過ぎて、Xは笑い転げた。

でも、そのおかげで、Rは実は私がFだと言い出せなくなった。
期せずして、SはFを追い詰めることになったのだ。
なので、この時点で、XはRがすぐ消えるだろうと確信した。

しかし、アホ同士、波長は合うのだろうか、Rは何とかSからの信用は勝ち取った。
RはFの親友だと思い込むSと、Rは実は私なんだと言い出せなくなったF。
成り行きとは言え、面白い展開になった。

その後の展開も、Xにとってはあまりにも奇想天外で、笑いを通り越して呆気にとられた。
Xと何の関わりもないYという人を、Bの本アカと決めつけたのだ。
本当か妄想か分からないが、YはFにフラれた過去があるそうで、その腹いせに、という根拠だ。

その話が事実かどうかも分からない。
思い込みの激しい妄想魔の話なんて、全く信用出来ないのだ。
しかも、FはYに直メで突撃したそうで、「俺がBだと思ってくれていい」という言質を取ったのだ。
それをFは自白と判断したのだが、Yにとってはただウンザリしただけで、「鬱陶しいな、もう勝手にそう思い込んでおけ!」いうニュアンスだったに過ぎない。

しかし、残念なことに、知的水準の低い人には、そういう微妙なニュアンスは伝わらないのだ。
結局は、大した証拠もないのに、思い込みだけで「本垢特定」と決めつけた愚かな二人。
ジジイとおばさんの迷コンビ、再結成だ。

おばさんFが扮するRは、やがてYのアカウント名を晒すという暴挙に出た。
しかし、誰かに注意されたのか、すぐにイニシャルに変わり、後に投稿自体も削除した。

更に面白いことに、BがFに成りすましたコメントを見たFは、Yには女性の仲間がいる、と思い込んだようだ。
どういう根拠か知らないが、勝手にYの友達のMさんを共犯と断定し、またまたアカウント名を晒した。

更に、Iさんという男性も犯人グループに認定された。
その直後、RはSNSを退会した。
さすがにヤバいと気付いたのだろう。
やってることは、根本的にはBと一緒ということに気付いていない。


『第三章』

それから数日後、Fが堂々とFとして復帰した。
直ぐにSと合流し、YとMとIという全く関係のない流れ弾が当たっただけの三人に対し、暗喩的な批判を繰り返す二人。
私達はBとは違う、と綺麗事を言いつつ、Bと同じことを繰り返している。
本当のBの正体であるXは、それを離れて眺め、ニヤついている。

Xは、改めてSの投稿も遡って読んでみた。
Sは毎日数回投稿しているヘビーユーザーで、しかも数百人ものフォロワーを獲得しているのに、「いいね!」はいつも一桁、「コメント」はほぼないという不人気を誇っていた。

それもそのはず、どの投稿からも、知性を疑うレベルのアホさが文面から滲み出ていて、読んでる方が惨めになるぐらい、くだらな過ぎる投稿を繰り返していた。
もしかすると、ガチで気の毒な人なのかもしれない。
知能的に。

また、色んな文芸企画に参加しているようだが、Sは簡単なルールも理解出来ていないようだ。
キチンと文章を読めない人なのだろう。

実際、誰もが使いこなしている基本的なSNSの機能も、全く使いこなせていないようだ。
読めば誰でも分かる説明文が、Sには解読出来ないのだろう。
こうなると、知能に問題があるとしか思えない。
大体、コメントでも投稿でも、使っている日本語が低次元だし、やたらと誤字脱字が多いし、比喩や描写は……いや、文章力自体が小学生以下だ。
作文以下の文章を、自分で「小説」と呼んじゃう哀れなジジイだったのだ。

その上、好戦的で攻撃的でしつこくて、自尊心と自己評価だけは異常に高くて、僻みっぽい拗らせ系のジジイで、「サブアカって何?」と問うレベルの無知。

それなのに、Bのことを「我々の調べでサブアカだと判明」ってカッコ付けて偉そうにほざくつぶやきを見つけ、Xは苦笑した。
と言うのも、X本人がBとしてアラシを行っている時に、「これはサブアカです」と書いていたのだから。
第一、本垢でアラシをするバカはいないだろう。
(いや、バカが本垢で、悪気なしにアラシ紛いのことをやるケースはたまにあるのだが)
基本的には、アラシは高い確率で捨て垢に決まっているのだ。
それを、我々の調べで、と言っちゃう恥ずかしさを堂々と晒していたのだ。
そもそも、何かを調べる能力なんてこのジジイにはない。

一方のおばさんFは、ガチのやばい人だと再認識するX。
どうやらFは、内臓に「南◯法◯華◯」と刻印されていて、空を飛んだことがあり、有名な歌手と結婚することが決まってるらしく、アイドルを目指している四十超えのおばさんなのだ。
しかも、Fはこれを真剣に語っていたことをXは知っていた。

しかも、Fには時々嘘を交える癖があるようだ。
そもそもがFの嘘が発端で起きた事件だ。
第二章に書いたように、友達の振りして戻ってくるという大胆な嘘も平気でつく。
ipアドレスも知らないのだろう。

それに、警察がバックに付けば、どんなことも守られると思ってる節もある。
おそらくは、虚偽で警察や弁護士を騙る罪の重さを知らないのだろう。
無知は恐ろしい。
明らかに「脅し」目的の警察騙りだ。

詐欺罪は親告罪じゃないし、執行猶予なしの実刑しかないことも、おそらく知らないのだろう。
警察は民事不介入ってこともしらないし、名誉毀損や誹謗中傷なんて、意味も理解せずに使っている感じなのだ。
つまり、感情だけで動くバカ。

250人もいたフォロワーの大半に、嘘をついてやめたことは事実である。
やめてから数時間後にコッソリ戻ってきたことも事実だ。
そのことを咎められ、要は嘘が暴かれて逆ギレしただけ。
「いや、仲良しさんにはあらかじめ伝えていた」とか「特別な事情があった」とか、そんな理由や事情は関係なく、嘘をついたかどうかだけが問われているのに、感情が先走り、理解もスルーも出来ない哀れな人だ。

そう言えば、相方のジジイSが、Bからの「騙したよね?」という問い掛けに、Fを擁護するつもりなのか「口裏を合わせただけだ。それの何がいけない?」と嘘ついてたことを自白するという馬鹿過ぎる主張もあった。
口裏を合わせるのは、基本的には嘘がバレないようにする時に使う言葉ですから。

また、二人とも思い込みが激しいがゆえに、真実に対しては盲目過ぎる傾向がある。
例えば、真犯人は身近に潜んでおり、ずっと監視されているのに今なお気付いておらず、全く関係ないグループを犯人だと思い込んでいる。

敵も味方も、論理的、物理的な証拠は何も提示出来ず、直感と思い込みと都合の良い解釈だけで決めつけるから、逆に簡単に騙される人間になるのだ。
本当に敵なのか?
本当に味方なのか?
感情論に流されず、少し離れたところから大局的な視野を持つことは大切だ。

アラシは一人で何役もこなすことは当たり前だし、アカウントも幾つも持っているもの。
なのに、ちょっと女性っぽい演技をするだけで、共犯に女がいるって思い込むぐらい思考回路は単純過ぎる。
その結果、視野が狭くなり、ますます盲目になっていく。

結局、SとFは、Bが誰なのか特定出来たと一方的に宣言し、騒動を終わらせることにした。
もちろん、完全に間違っていることに気付かないままに。
犯人扱いされた三人にとっては、どうでもいい話ではあるだろうが、迷惑この上ない話だ。

真実を知っているのは、X本人だけ。
本当に終わらせるかどうか、決められるのはXだけだ。
そして、今はまだ、様子を見ているだけなのだ。

Xは、純粋に楽しんでいる。
ネット社会に挟む悪魔と言えよう。
そして、Xは常に考えている。
どうすればもっと荒らせるか。
ターゲットの心を削れるか。
監視を続けながら、動くタイミングをはかっている。
何か面白そうなことは起きないかなぁと。
次のターゲットは誰にしようかなぁと。
捨て垢は、常に複数個持っている。
Bは、ネットの中に潜んでいる。

(終)


【最後に】

本作は完全なフィクションのプロットにつき、登場人物に現実のモデルは存在しない。
でも、長年ネット社会と関わってきたからか、似たような人物や体験は沢山あるだろう。
敢えて奇を衒わず、ありきたりの話にすることにして、現実感を伝えようと試みたつもりだ。
でも、まだまだ細部が詰め切れていないので、修正を加えていく予定にしている。

ホラーかミステリーか迷っているが、ミステリーにするなら実はSかFのどちらかもXのサブ垢、つまり自作自演だったという大どんでん返しの叙述トリックも検討しているが、そうするとこのプロットのままだとフェアじゃないミステリーになるので、色々書き直す必要もあるだろう。
Fが二重人格者という裏設定も考えたが、ありきたりなのでそれはなしかなと思う。
あくまで、今はまだ検討中だが。

こういうネットのアラシ事案は、被害者として、加害者として、若しくは傍観者として、またはY、M、Iのように流れ弾が当たっただけの立場として、誰しもが多少なりとも経験がある話だろう。
事実として、芸能人やスポーツ選手などの被害もよくニュースになるし、SNSにはアラシは付きものだ。
一方で、アラシの対応もかなり周知されている。
基本的には、一切相手にしないことだ。

本作でも、BがSのコメント欄にURLを貼ったところからアラシ行為が始まるのだが、Sの取るべき行動は、コメントの削除とBのブロックと運営への通報だったのだ。
淡々とそれだけを行っておけば、Xは直ぐに手詰まりになるだろう。
逆に言えば、それ以外のことは何もしてはいけないのだ。
「こんなコメントが来た」とか「Bに告ぐ!」とか、「Bという人に変なこと書かれた。名誉毀損だ!誹謗中傷だ!」と騒ぎ立てることはもちろん、反応することだけでももってのほかの行為だし、ましてやBに直接返信するなんて、絶対にやってはいけないことだ。

しかし、本作でのSとFは、アラシにとって思う壺の言動を取り続けたのだ。
コメントを削除せず、ブロックもせず、Bに直接返信したり呼び掛けたりと、アラシにとってはご褒美にしかならない行動を取り続けたのだ。
二人は自分で自分に燃料を注ぎ続けたのだ。
言葉は悪いが、そういう被害者の「愚かな」行動も「注意喚起」として、本作のメインテーマでもある。
アラシ行為は絶対にいけないことは大前提として、アラシ行為を受けた時の対応も大切なのだ。
そこを間違えると、大変な目にあうということも伝えられれば、と思っている。

つまり、残酷な言い方になるが、本作のSとFはアラシのターゲットになったのは気の毒だが、その後の対応は不勉強過ぎた面もあるのだ。
Xは言うまでもなく非常識な人間だが、被害者の二人も違う意味で非常識だった。
アラシに対して、反論したり否定したり挑発したり批判したり説明したり……という反応は、一見もっともらしいことのようだが、絶対にやってはいけないことでもある。
今は、ほとんどの人がそのことを知っている。
しかし、二人はその全てをやったのだ。
そういった意味で、二人は無知過ぎたとも言えるだろう。
もっとも、Xとしても、だからこそターゲットにしたのだが。

本作を読んでくださった皆様には、どうか今一度、スルースキルの重要さをしっかりと確認して欲しいと思うのである。
また、本プロットを読んで、この被害者は自分のことじゃないか!と思う人もいるかもしれない。
しかし、それは即ち、アラシの対応をミスった被害者ということでもある。
ぜひ、反省を次に繋げて欲しいと思う。

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