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価値ある挑戦?リスク取りすぎ?―La Vuelta 2022 Stage 16より―

ブエルタ・ア・エスパーニャ(以下、ブエルタ)も最後の3週目に入った。休息日明けの第16ステージ、最後が登り気味でコーナーも多く、ちょっとトリッキー、ではあるものの、平穏な「移動ステージ」になるように思われた。ステージ17, 18, 20は総合優勝争いに影響を与える可能性がある。余計に平穏に物事が進むように思われたし、実際そうなっていた。最後の3kmまでは。

最後の3km。登り坂がそれなりに急なところもあったからであろう。総合2位であり、総合4連覇を狙うのPrimož Roglič(プリモシュ・ログリッチ)がスパートをかけ、総合首位のRemco Evenepoel(レムコ・エヴェネプール)との差を縮めようとした。Evenepoelのパンクトラブル、その他のライバルもRogličにはついていけなかったこともあり、10秒前後の差をつけてゴールできそうであった。
※ステージ16はルール上残り3kmを切ってからの自転車のトラブルや落車に限り、その時点で同じ位置を走っていた選手たちと同じゴールタイムが適用されるため、Evenepoelはライバル選手たちと同じゴールタイム(ステージ勝利した選手から8秒遅れでのゴール)が適用された。

しかし、ゴール直前にRogličは別の選手と接触し落車。右ひじ付近からの流血が痛々しい状態でゴール。先の注に記載したルールに基づき、ステージ勝利した選手と同じゴールタイムが適用され、他のライバル選手たちより8秒早くゴールしたのと同じ扱いになった。しかし、その代償として負ってしまった怪我の影響は大きくステージ17は未出走、リタイアとなってしまった。
※ここまでに記載した内容は以下の動画でも確認できる(5分頃から本文に記載した残り3kmの争いが確認できる)

さて、この動きをどう評価するべきか?仮に落車することなくゴールできたとしても、ライバルより10秒くらい早くゴールするに過ぎない。ちょっと大きすぎるリスクを負ったようにも見える。

しかし、2020年にブエルタ総合2連覇を達成した時は2位のRichard Carapaz(リシャル・カラパス)とのタイム差はたった24秒。そう考えると、たった3kmでライバルに10秒の差をつけられる局面はかなりおいしい。そうでなくとも、今年は総合首位のEvenepoelに1分30秒近い差をつけられているので、少しでも差を縮めておきたい。そう考えると、多少のリスクを負ってでも攻めようとする気持ちも理解できなくもない。結果的に落車し、もったいない結果のように見えてしまっただけ、そのようにも見える。

チームにとっても、本人にとっても残念な結果になってしまったとはいえ、この動きがRogličのスタイルであり、そして、ブエルタ3連覇の原動力ともいえる。反面、落車によるリタイアや失速も多い。一か八か、ではないが、リスクがあっても、ちょっとした隙があれば攻めていく、その姿勢が生み出している結果ともいえるだろう。そして、観客の目線で見れば、これほどハラハラドキドキさせる選手もなかなかいない。

結果的にはもったいないものとなってしまったが、これからも攻めっ気全開の走りを見せてほしい。そのためにも早い回復を祈るばかりである。まさに所属チームであるJumbo Visma(ユンボ・ヴィスマ)からのツイートにあるように。


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