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時代の終わりを実感させられた”2度目の引退”

―復帰しない方が良かったのではないか―

"GOAT"ことTom Bradyの今シーズンは、これまでの輝かしいほどのキャリアとはほど遠い結果に終わった。チームを地区優勝に導いたとはいえ、全試合先発出場して8勝9敗。先発定着後、シーズン負け越しは初めてである(それどころか8敗を喫することすら初めてであった)。リーグ3位のパス獲得ヤードを記録したものの、例年とは違い致命的なミスが目立つシーズンであった。プレーオフもいいところなしの惨敗。とにかく、シーズン通じて、今までのBradyらしさがなかった。

1週間ほど前に発信された現役引退のメッセージには"for good"、「永遠に」という言葉が加わっていた。一拍置いて発せられたこの言葉は、NFLの選手としてプレーするつもりはない、その意志を感じさせる。

私自身、昨年、Brady引退についてブログを書いた時、まさか復帰するとは思っていなかった。その時点で一時代が終わった認識であった。「40日間の引退期間」を経て復帰した今シーズンは、先に述べたように、Bradyらしさが見られず、奇しくも一時代の終わりをより強く印象づけられた。

本来のBradyといえば、とにかく試合巧者であった。シーズンの個人成績で見ると、ずば抜けた成績を残すことは少なかった。大概上位に入るが、リーグ1位の成績を残すことは多くない。勝負どころで確実にプレーを決め、勝利に結びつける。これが誰よりも上手、そういう印象だ。まるで「常に試合をコントロールし、最後に自分たちが1点でも上回っていれば良いのだよ」と言わんばかりに、どれだけ相手が優位に立っていても最後には逆転に導いている。そんな選手であった。

その強みは史上最多10度のスーパーボウル出場、そして7度の優勝(こちらも最多)という結果にも表れている。また、負けた3試合も、すべて接戦であり、勝っていても不思議ではない試合であった。特に、第42回スーパーボウルは、本来「勝てる」試合であった。David Tylee(デビッド・タイリー)の"the helmet catch"(ヘルメットキャッチ)がなければ。あの試合でも、試合序盤からNYG守備陣に苦しめられていたものの、第4Q終盤にBradyはきっちりとチームを逆転に導いているのだ。

https://www.youtube.com/watch?v=_vKDygyOxH0

稀代の試合巧者Bradyが築き上げた王朝を引き継げる可能性のある存在はKCのPatrick Mahomes(パトリック・マホームズ)、もしくはCINのJoe Burrow(ジョー・バロウ)だろう。選手たちの動きを見極める冷静さ、パスの正確さは非常に高いレベルにある。そして、何よりここ一番の場面に強い。もしかすると、2000年代のBradyとManningのような、時代を象徴するライバル関係になるかもしれない。

いずれにしても一時代の終わりは、次の時代の勃興でもある。MahomesやBurrowら現代・次代を担う若手・中堅のQBはどれだけBradyに近づけるか、そして追い越せるか。注目したい。

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