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米国5つの巨人、GAFAあらためGAMMAの技術動向 - 俯瞰図からニュース記事を読み解く

VALUENEXで技術動向調査と海外事業推進を担当している堀下です。
前回の記事で米国5つの巨人、いわゆるGAFAMの技術俯瞰をご紹介しましたが、今回はそれを最近のニュース記事と照らし合わせて読み解いてみます。

まず、こちらが前回ご紹介した米国のTech-Giants:Google, Apple, Facebook/Meta, Microsoft, Amazonの技術俯瞰図です。概要は前回記事で説明していますのであわせてご覧ください。

米国5つの巨人の技術俯瞰図

この技術俯瞰図を、下記の5つのニュース記事と合わせて読み解きます。

いずれも前回~今回の執筆の間にリリースされた記事となります。

Google、スマートウォッチに参入

2022年5月のGoogle開発者向け会議にて、Googleのスマートウォッチ「Pixel Watch」が話題となりました。
しかし技術俯瞰図でGoogleを見ると、検索やコンテンツ表示、自動運転・センサー、映像・ビデオ会議、AIアルゴリズムの方面に注力しており、スマートウォッチやウェアラブル機器を特段強化している様子は見られません。
そこで、Googleの技術をウェアラブル関連のものでフィルタリングしてみましょう。

Googleのウェアラブル関連技術の分布

こうしてみると、楕円で括ったエリア一帯にウェアラブル関連の技術群が広く連なっていることがわかります。ジェスチャセンサーやレンズ機構の技術に加えて、アクティビティ管理、検索クエリまでカバーしていますね。
ウェアラブル機器の要素技術はハードウェアや各種センサーがパッと思いつくところですが、Googleはセンサー周りの技術を有するものの、そこが一番の得意分野というわけではなさそうです。

この広く連続的な構図により、光学レンズやジェスチャ入力等の各種センサーによって取得した活動履歴を管理しつつ、それを活用したサービス展開までワンストップで運用できることは大きな強みと言えます。
また、この一連の技術群には「仮想・拡張現実」の技術箇所が介在しています。そのため、Googleのウェアラブル機器はVR/AR事業への布石としても効果的な役割を持ちそうです。

Appleの次世代「CarPlay」

Appleの開発者向けイベントでは、新型の車載ディスプレイの開発が話題となりました。自動運転車の普及が進むことで、車内空間での人の過ごし方が変化することを見据えているように思います。
ただ筆者としては「あれ?そういえばApple Carってどうなったんだろう」と気になったので、Appleの技術分布を「自動車」に関連するもので光らせてみました。

Appleの自動車関連技術の分布

自動運転・センサーの技術箇所に集中がある一方で、「機器の接続手法」や通信系の技術群も同じくらい目立っています。タブレットなどハードウェア技術に強みを持つAppleですから、モビリティ事業でディスプレイ機器+通信技術の強みを生かす戦略は理に適っていると思います。筆者の個人的な想いとしては、日本のカーナビ事業者がAppleと組んだら面白いサービスが生まれそうな気もします。

また、「自動運転・センサー」とラベル付けした箇所周辺は2019年以降に新たに公開された特許が8割近くを占めており、こちらにも直近で注力しているようです。ポジティブに捉えるなら自動運転車と車載器の両輪で開発を進めていると取れますが、今後どちらに注力していくのか技術開発の方向性を模索している状態のようにも見受けられます。

Meta(Facebook)のAIチーム再編

前回ご紹介した通り、Metaは非常に明確な形でSNS領域から仮想・拡張現実の領域へと技術開発の重心をシフトしてきました。
その傍ら、これまで研究部門に属していたAIチームを組織再編する動きが報じられていたため、MetaのAI技術の分布を俯瞰してみます。

MetaのAI関連技術の分布

Metaの技術分布をAI関連のものに絞って光らせてみると、「コンテンツ表示方法」の箇所に集中しています。加えて、機械学習モデル・ニューラルネットワークといったAIの基盤技術にも集中がみられます。

「コンテンツ表示方法」はターゲット広告やSNSと近い位置づけにあることからも分かる通り、ユーザーが潜在的に見たいコンテンツを予測して優先的に表示する技術が該当します。これはSNS事業では大いに有効な一方で、メタバース事業において応用できる部分は限定的かもしれません。俯瞰図の配置を見ても、ここはMetaが向かっている仮想・拡張現実周辺の箇所とは若干の隔たりがあります。

したがってMetaのAIチーム再編には、メタバース事業と親和性がより高いAI技術にシフトしていくという考えがありそうですね。そういえばMetaはData2Vecという技術を公開していましたので、音声処理や映像生成も含めた統合的AIの活用には特に注目していきたいと思います。

MicrosoftのAI4Science

Microsoftは新物質探索などの科学的発見を新しいアプローチで実現するべく、AI4Scienceという取組みを発表しました。そこで、次はMicrosoftのAI関連の技術を見てみましょう。

MicrosoftのAI関連技術の分布

MicrosoftのAI関連の分布を見ると、アルゴリズムそのものに対して集中して技術開発に取り組んでいるようです。ざっと集計したところ、楕円で囲った箇所は4割以上が2021年に新たに公開されたもので、直近でかなり力を入れていることがわかります。
そのため、MicrosoftはAIの基盤技術そのものをユーザーに提供するプラットフォーマーとしての事業展開に進みそうです。

AI技術には大きく分けて、基盤となるアルゴリズムの開発と、その応用先となる技術の開発という2通りの方向性があると思いますが、Microsoftは前者、Metaは主に後者が中心であり、AI技術と単に言っても各社でこうした軸足の違いがあるのは興味深いですね。

Amazonの物流向け新技術

Amazonは2022年6月の自社イベントにて自律走行型の搬送用ロボットを発表しています。そこで、Amazonのロボティクス技術について見てみましょう。

Amazonのロボティクス技術の分布

「商品管理」とラベリングした箇所で最も集中が目立ち、「自動運転・センサー」の箇所にも若干の集中が見られます。この「商品管理」には主に倉庫内搬送車と商品管理システムを統合した技術が含まれており、ここに集中して技術開発を進めているのは目的が明確で効率的ですね。

倉庫内搬送車の走行技術を屋外の自動運転車に応用するケースもあるようですが、自動運転車の技術群とは若干隔たりがあり、簡単ではなさそうです。
自動配送用の車両・ドローンの開発も当然選択肢にあると思いますが、俯瞰図の分布を見る限りでは、Amazonのロボット技術は倉庫内物流に絞った技術開発を進めているものと推察します。

おわりに

今回は米国Tech-Giantsの技術動向について、直近のニュース記事と合わせて読み解いてみました。
簡易的な分析ではありますが、最新記事の内容に俯瞰的な視点を加えることで、記事の背景や周辺技術を絡めた立体的な洞察ができたかと思います。
VALUENEXの俯瞰解析にご興味を持たれた方は、弊社窓口まで是非お問い合わせください。

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