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イアン・フレミングに嫌われた建築物

毎年9月にロンドンで開催される建築のイベント”オープン・ハウス”が、今年も9月4日から12日まで行われています。

普段は入場不可能な建築物などに無料でアクセス出来る、建築好きにはたまらないイベントです。毎年抽選ですが、当たれば首相官邸のナンバー10にも入る事が出来ます。

オープン・ハウスは1992年、一般市民に建築に対する理解や関心を深めてもらうために非営利団体やボランティアによって始められました。

私も過去何回か参加した事があり、市庁舎、ノーマンフォスターの設計事務所、モダンな一般家庭のお家などを見学する事が出来ました。

その中の見学可能な建築物の一つに、この間少し紹介したトレリック・タワー(TRELLICK TOWER)があります。今年も12日の日曜日に見学ツアーがあるのですが、私は残念ながら参加出来ません。

この建物は毎年大人気なので、事前予約ですぐに完売になります。随分昔は当日行って空きがあれば参加出来ましたが、私はその時も入る事が出来ませんでした。

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トレリック・タワーはハンガリー出身の建築家、エルノ・ゴールドフィンガー(Ernő Goldfinger)のデザインで1972年に建てられました。

地上31階建て98メートルのトレリック・タワーは、カウンシル・フラットと呼ばれる英国の地方自治体によって建てられた低所得者向け公営住宅です。割安な家賃で、低所得者のほか、シングル・マザー、生活保護対象者、失業者などが優先的に入居できるようになっています。

まるで共産圏の国の無機質なビルディングを彷彿させる建築物ですが、これは1950年代ー60年代に多く見られたブルータリズムという建築様式で、打放しコンクリートなどを用いた荒々しい仕上げが特徴です。

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面白いのが、ジェームズ・ボンドの生みの親として知られる作家イアン・フレミングは、このタワー・ブロックが大嫌いだったそうで、ボンドの敵役を建築家の名からとりゴールドフィンガーと名付けたそうです。

このような高層集合住宅は実はイギリスには多くあって、2017年の70人もの死者を出したグレンフェルタワーでの高層住宅火災で、同じ高層住宅のトレリック・タワーも一時期問題視されていました。

建物の老朽化や、火災が起こったときに逃げる非常階段などの避難経路の安全性など問題点は多いです。

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しかし一方では、ブルータリズムの歴史ある建築物に住居を構える事がクールな対象でもあり、不動産業界では昔のデザインを残しつつも、モダンな内装工事を加えた物件が実際高額で売りに出ています。

上階に住めばロンドン中が見渡せる絶景がもれなくつきますが、私はやはりいざという時の事を考えると低い所に住む方が落ち着きます。笑




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