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脳彫別バジャアキ 匣沼 『実家』

お邪魔します、と入るのかな。 ただいま、とは言いづらい。俺の家ではないんだし。 あ、どうも。それしか言えずに、隅に座る俺。目に見えてるわ。

M子に頼まれたら、行くしかないよね。 俺が行かないと、ヨシオさんがまたM子を殴るから。 せっかく来てやったのに、なんだよM子は仕事かよ。

お邪魔します。 俺はよそよそしく隅に座って固まった。 ああいうもの、目につく場所に置くのかな、普通。 あー、ここは普通じゃなかったよな、昔から。 壁に何事もないような感じで革の鞭が掛けてあったり、パールのゴロゴロする野太いディルドがオブジェみたいに棚の一輪挿しの隣に置かれていたり。 映画でしか見ないような猿轡が普通に俺の口にハメられちゃったり。

なんなんだ、その目は。 お前は昔から俺をイラつかせるガキだ。 少しは大人になったのか、ホラ、見せてみろよ。 M子の留守にヨシオさんに襲われる俺。 またいつものパターンだね。 相変わらずだ。 何も変わってない。

M子はお前にこうしたか。 と、また俺の息子にしゃぶりつくヨシオさん。 いつ噛みちぎられるか、わからぬ恐怖。 でも、いつの間にかいっちゃってる俺。 M子の時より感じるんだよね、なんでだろ。

ハイ、風呂場。 背後から犯される俺。 既にいっちゃってる。 ヨシオさんが舌で丁寧に俺を洗う。 たまには風呂もいいもんだよね。 ハイ、出来上がり。

ただいま。 今夜はヨシオさんの好物のスキヤキにしようかと、ネギを切り始めるM子の手が止まる。 たまには三人で旅行にでも行かないか。 三段壁は恋人達のなんとかってとこらしい。 珍しくヨシオさんが優しい口調で言った。

三段壁、こないだ行ったばかりです、とは言えない。 M子と行ったばかりです、とは言えないね。 うん、言えないね。

昔から強引なんだよね、ヨシオさんは。 人の意見は聞かないタチなのよ。       あー、どうしよう。 三段壁って、噂では自殺の名所らしいよね。 自殺に見せかけて殺される俺、見えてるわ。

あー、M子、ヨシオさんの前なのに、俺の事、ヨシ君って呼んでるよ。 いーのかな、これでいーのかな。

いーよ、俺がやるよ。 ネギに白菜、シラタキに椎茸、春菊はヨシオさんの好物らしくて、木綿豆腐に上質な牛肉。 俺がスキヤキの準備をしている間に、湯気の向こうで乳房を露わに座る母、それを貪るヨシオさん。 懐かしいな、この感じ。 やめてよ、良男の前ではと、言いつつも濡らす太もも露わなの。 なんか久々に笑う俺。 やっぱこれだねー。 こうでなくっちゃね。


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