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【ル・クロワッサン ド バカンス】 毎日でも食べたくなるクロワッサン 【後編】

ちょっとリッチなバカンス気分

2号店[ル・クロワッサン ド バカンス]がある場所は、1号店の[ベーカリー バカンス]から少し南へ歩いたところ。会社やマンションなども多い、磯上というエリアにあります。

素朴な生地がウリの本店とは異なり、クロワッサンやデニッシュ、焼き菓子といった商品が並びますが、コンセプトは1号店と同じく『日常のちょっとした時間をバカンス気分に』。ただし生地にバターを使った芳醇な味わいが特徴の2号店では、同じバカンス気分であっても〝ちょっとリッチなバカンス気分〟をお客様に味わってほしいという思いでパンを提供しています。

クロワッサン=フランスというところから、店の雰囲気は南仏のイメージがベース。ビジネスエリアにありながら、一歩店に入ると気分がワクワク高揚するような空間を意識しました。店に入った瞬間やパンを選ぶ瞬間さえも、バカンス気分になっていただけると嬉しいです。
そして港町・神戸らしく、キーカラーはブルー。1号店とはまた趣の異なる雰囲気に仕上げました。

カウンターのブルーは昼の海を、奥の濃いブルーは夜の海をイメージ。
時間帯で種類が変わるパンと色彩もリンクさせました

とはいえ、非日常性を追求しすぎて〝たまにしか行けないパン屋〟になってしまうことは私たちの願いではありません。目指すのはあくまでも、街に愛されるパン屋。お客さまが日常的にパンを買う様子をイメージしながら、デザイナーさんや大工さんと意見を出し合い店を形にしていきました。

パンを通して「安心感」と「幸せ」を

店がオープンしたのは2021年6月。コロナ禍で不安や心配事が増えているこの時代に私たちが提供したいのは、【誰もが知っている安心感のあるもの】で【少しでも幸せを感じられるもの】でした。

「いろんなことがある毎日だけど、大好きなパンとコーヒーがあれば前向きな気持ちになれる」。そんな思いを込めて作った[ル・クロワッサン ド バカンス]のショートフィルムより。

小難しいことを頭で考えずとも、ド直球でおいしいみんなが知っているパン。そんなパンはなんだろう・・・?と考えて、2号店ではクロワッサンを主役にすることに。
コンセプトは同じながらも、「バカンス」というこれまでになかったパンを作り上げてきた本店とはまた違った展開をしていくことになったのです。

クロワッサンを食べて、ちょっとリッチなバカンス気分に。そんなコンセプトを表現するビジュアル作りも、新たなチャレンジでした。

また、こういったご時世だからこそ「安心感」も大きなテーマでした。自社農園で作る生産者の顔が見える小麦を使った、安心して食べられるおいしいパン。さらに、レジには現金の手渡しが不要なベーカリースキャンを導入して、密にならずにお会計ができるようにしました。

ベーカリースキャンを使えば、お客様にとっては安心で便利に。さらにスタッフにとってはお会計の作業が減った分だけ、笑顔やおもてなしといったホスピタリティを強化することができますので、コロナと共存するこれからの時代にもマッチするのではという考えもありました。

毎日でも手が伸びるクロワッサン

クロワッサン専門店を任されたシェフの追中に、オープン前のことを話してもらいました。

「オープンすることが決まってからは、まずプレーンのクロワッサンをどんな仕上がりにしようかということを考えました。その期間が一番長くて、もう毎日毎日、いろんなクロワッサンを試作していましたね」

「バイトの子も呼んで、いろんなクロワッサンを食べてもらいました。優馬(1号店のパン職人)とも、もう無理!ってなるぐらい食べましたね(笑)」

当初、「クロワッサンがサクサクしすぎていると崩れてしまったりして、特に女性は口の周りにつくのも嫌かもしれない」と、社長の神尾と話していた追中。そんな経緯もあって、食べやすさもおいしさも両立したクロワッサン作りを模索してたどり着いたのが現在のクロワッサンです。

焼き上げる前のクロワッサン。小さくてかわいい!

自社の国産小麦の風味を生かすために、香りが強い発酵バターはあえて使いません。3つ折り3回の27層の生地が、パリパリ感としっとり感を兼ね備えた仕上がりに。豊かな風味で、ついつい手が伸びてしまう味わいです。

表面にはシロップと、味を引き締めるための塩を少々。シロップを塗るのは生地がバラバラになるのを防ぐためという理由もありますが、「最初に口に当たる部分が甘い方が、直感的においしいと感じられるんじゃないかと思うんです」との理由も。

「噛み締めるたびに、だんだん味が馴染んでいくようなクロワッサン。『明日も一個食べたいなぁ』と思えるパンを表現できたかなと思います。たくさん模索して完成したこのクロワッサンの味わいは、間違ってなかったんじゃないかなと」

そう話す追中ですが、「生地の折り数を変えた新しいクロワッサンを、そろそろ作ってみたいなと思ってるんです」とのこと。「もちろん今のクロワッサンはそのまま残しながら、今度はあえてバリバリこぼしながら食べるような、本場のクロワッサンに近いものを提案できたら。少しずつコロナの波も落ち着いてきたところで、外でカジュアルに食べてもらえるようなスタイルもいいんじゃないかなって考えているところです」

成形作業中は、その日の自分のメンタルも顕著に現れるのだとか。

常に新作のアイデアも書き留めているという追中。今後のラインアップにも注目です。

焼きたての〝その後〟を想像すること


パンを食べる人のことを想像する。これは、追中が心がけていることの一つだといいます。

「『食べる時のことまで想像できるから、おいしいパンが作れる』『冷めたあともおいしいパンを作る』。これは、とある職人さんが話してくれた言葉なんです。おいしい焼きたてを食べられる人って少数なんですよね。だからこそ、丁寧に作るのはもちろんのこと、焼きあがって時間が経った後のお客さまのことを想像したパン作りが大切だと思います。リベイクの仕方とか、そういったこともお伝えしていかないといけないなと考えています」

パンを成形する場所からお客さまを見つめます。「レジスタッフの子が接客してくれているけど、僕からも声をかけていきたいと思っています」

「ここ(生地を成形する場所)に立っていると、お客さまがよく見える。どんなパンを手にするのかな?って、よく見ていますね。(少し奥まった場所なので)本当はもう一歩前のところで作業をしながら、お客さまとコミュニケーションをとりたいですね

自分の作りたいパンを少しずつ表現できてきていると感じながらも、一方ではお客さまの気持ちが気になると話します。
「パンを買ってくださる方が求めるものも大切。あんまりお客さんの生の声を直接聞く機会がなくて、つい食べログとか見ちゃうんですけど(笑)。いいものを作っているという自信はあるので、今は嬉しいコメントよりもご指摘だったりの意見を大事にするようにしています

オープンから約9ヶ月。[ル・クロワッサン ド バカンス]は、まだまだ発展途中です。ぜひ、嬉しいご意見も厳しいご意見も、たくさんお聞かせいただければ嬉しいです。

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次回は5/1に更新予定です! ちょっと趣向を変えて、チーム・バカンスでピクニックへ。パンのアレンジなどをご提案できたらと考えていますので、どうぞお楽しみに!


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