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ゼロからAI組織を作る

はじめに

AI組織をゼロから作り、拡大していく時のことを書く。

私自身がAI組織を立ち上げるにあたって、各社のAI組織の部長クラスやCTO、VPoEに20名以上にヒアリングした結果、そして私がここ1年強でした実体験を元にしている。

全ての場合で必ずしも正しいものではないかも知れないが、今後のために言語化しておく。

重要な3つのこと

あなたが「AI組織作ってよ」と言われた時、そして組織開拓を進めている時に絶対に必要な事が3つある。これから起こる事全ての事象で、この前提を頭に置いておかないといけない。

  • AI分野外の人は分野内の事は分からない

  • 組織やグループのミッションに沿う事が必須

  • コミュニケーションを避けてはいけない

これは私の経験的にもそうだし、あらゆるAI組織のリーダーが組織作りで最も多く挙げている重要要素でもある。

AI組織という船の漕ぎ手はあなた

大前提、AI分野(機械学習エンジニア、データサイエンティスト、データアナリスト、データエンジニア、MLOpsエンジニア...etc)の中の事ははっきり言って分野外の人の知識は殆ど無いと思った方が良い

どれだけ優秀でキャリアもあるCTOやEMがそこに居ようが、採用チームにエンジニア出身の最強の人事が居ようが、AIベンチャー出身の人が何人居ようが、あなたが「自分が最も詳しい」と思うべきだ。

似た現象が起こりやすい近い分野として、セキュリティ分野やQA、研究組織なども近い傾向がある。フロントエンド、バックエンドと違い学ぶ機会が圧倒的に少なく、ぼんやり外枠は見えていても、内側を細分化しろと言われたら出来ない人が大半だ。

その解像度の違いは、チームの方向性から技術選定はもちろん、Job Descriptionや採用方針、チーム文化、開発サイクル、権限、開発環境、部署編成とあらゆる場所で出てくる。どれだけ素晴らしいCTOが「こうしたら?」と言っていても、もしあなたが違和感を感じたなら「いや、AI分野ではこれが一般的だ」と言うべきだ。

私が仕事をする根幹の1つにしている、エラスティックリーダーシップにも「専門家はいない」という言葉がある。

専門家は居ない。私たちしかいないんだ。

ELASTIC LEADERSHIPより

これはチームを作る時以外に限らない。そこには、答えを持っている訳ではないマネージャーと0の状態のチームとあなたしか居ない。
あなたが考え作る以外にはないのだ。


会社の方向性とズレたら沈む

次に会社のミッションや「AI組織作ってよ」と言ってきたマネージャーの頭の中をとにかく知る必要がある。

先に示した通り、AI分野は今やかなり細分化されている。
画像認識を進めて欲しいCEOに、あなたが作りたかったモダンなデータ基盤を提供しても当然評価されないし、事業価値は生み出せない
実際に私がアドバイザとして入った会社でも、このすれ違いによって評価されていないAI組織は存在するし、後から修正していくのは作るより困難だ。

とにかく何が欲しいのか、もしマネージャーが知識量の問題で言語化が難しいなら、それを手伝うのもあなたの役目だ。端的なやり方として、出来れば3年後の組織のイメージを聞き出そう。会社全体やマネージャーなど先人らが作った資料を漁るでも良い。
そこにありったけのAI分野の常識をぶつける事が仕事になる。

もし会社の中に優秀なプロダクトマネージャーが居るなら、すぐに定期の1on1を入れよう。「AIアイデア100本ノックしましょうよ!」この一言でプロダクトマネージャーは意気揚々と乗ってきてくれるだろう。


そして、会社のプラン実現に必要な人と技術の枠を作ろう。
どれだけメンバーが優秀でも、分析組織を作りたい所で研究組織を作るために必要な人を採用しても互いに不幸になるだけだ。どれだけモダンでクオリティの高い技術を導入してもミッションが達成できないなら、事業という枠組みの中では価値がない。

人について、一番簡単で良かった手法は、「一番チームに居て欲しいな」と思う友人知人を最大限ネトストしたまとめスライドを作る事。テキストでペルソナを作るより、実態がある方があらゆる人に一瞬で伝わるので良い。

技術では「開発」「研究」「分析」「モデリング」の違いは意識した方が良い。もし、既にSREチームがあってインフラを用意する必要がないなら、最初から無理にMLOps技術を採用しなくても良いし、逆に開発チームとして設計するなら枠は開発とモデリングに寄っていくだろう。分析部隊になるならデータサイエンスやデータ基盤が主軸になるだろうか。

「中長期的に必要だな」を抜きにして先1, 2年を考えて決断しないと、成果が出ずAI組織自体が解散になりかねない事を忘れてはいけない。あなたがどれだけ素晴らしい技術やマネジメント能力を持っていても、AIが浸透していない組織でAIで成果を出すのは難しい。


コミュニケーションでしか組織は作れない

最後に、チームを作り拡大していく時にはコミュニケーションが発生する事象は必ず避けてはいけない。

チームの中のエンジニアとのコミュニケーションは当然、CEO、CTOに会社の方向性を聞くこと、PdMと壁打ちすることをしないと船が変な方向に進む。

他のアプリーション開発者を説得しなければ、AIが持つ学習や出力の傾向の特性を活かせないアーキテクチャが出来上がる。AIの知識、経験がないマネージャーに任せて進めてしまうと、データ基盤やデータに触れる権限が歪になる。採用を任せればチームに必要な人を選ぶ選考フローにはならないし、最悪数年後に仲間になる可能性のあった分野内の友人知人に悪い印象を与える事になる。

考えることが多いかもしれない。
それでも、あなたが言及し進めなければなければいけない。
専門家はあなたしかいない。


そして、何よりチーム作りで課題になるのは採用だ。
チーム作りは圧倒的に仕事が多い。仕事が多くなる中で上手く回らなくなる、雑務に追われコード書く時間がなくなる、あなたの仕事が回らない理由のほとんど採用が上手くいっていないからだ

技術者としてリードできる存在はもちろん、あなたの次のマネージャーやリーダーを最初の段階から探し始めないといけない。どれだけ頑張っても、採用しはじめて明日明後日にすぐに人が来る事はない。効果が出始めるのは半年後くらいからだからだ

採用チームとコミュニケーションを取り、候補者とコミュニケーションを取り、出来ることならエージェントとコミュニケーションを取ろう。
技術者出身の場合、小綺麗なWebサイトや技術広報をする事が採用にとって大事だと思いがちだが、実際はチーム初期に広報で出せる魅力的な武器があることは殆どないだろう。
やるべきは、人を介さない宣伝ではなく、とにかくAIでやりたい事を明示して、目の前の候補者に分かってもらうようにPDCAを回す事だ。YOUTRUSTでもIndeedでもTwitterでも、自分でコミュニケーションを取りにいけるツールは意外とそのへんに沢山ある。とにかく人とコミュニケーションを取らずに採用が進む事はない。

そしてコミュニケーションの最後、成果を出すために周りを巻き込もう。
AIでの成果をAI組織内で出せる事はほぼ無いと言って良いだろう。
あなたはチームを作った人として、チームの価値を理解してもらい、より良い状態まで拡大しなければいけない。そうしなければ与えられたミッションは達成できない。

もちろん、組織の中でそれらが得意な人がいれば巻き込むのも良い。
頭のネジを外し、誠実に、協力してもらう事に注力しよう。

あなたのコミュニケーションでしか組織は作れない。

終わりに

酔ってテンション上がって徹夜した勢いで書いたけど、意外と書けたのでまた書きたくなるかも。

あとはマネージメント本とかは読むと良いかもしれんな。

みんな頑張ろう。

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